比熱容量
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比熱容量(ひねつようりょう)とは、圧力または体積一定の条件で、単位質量の物質の温度を単位温度上げるのに必要な熱量のこと。 国際単位系では、J/(kg·K)という単位で表す。 通常、1kgの物質を1℃上げるのに必要な熱量のことをいう。 通常、学術的には比熱という用語は用いない。「比」は、「単位質量あたりの」という意味と、ある標準との比較を意味する「比」があり、混同を避けるためである。元々、「比熱」は水の比熱容量を基準にして、その何倍かを示す量(無次元量)として導入されたもので、従って「モル比熱」という用語も不適当で、「モル熱容量」と呼ぶのが適当である。
水の比熱容量(18℃)は、1 cal/(g·K) = 4.184×103 J/(kg·K)である。 (なお、calという単位は、現在、標準単位系ではなく、栄養学などの分野で歴史的遺物として取り扱われるものであり、右項の単位系の値を記憶されること)。
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[編集] 熱力学と比熱
熱力学的理論では1モルの物質の熱容量、モル熱容量(単位はJ/(mol·K))を用いることが多い。モル熱容量は分子熱とも呼ばれる。単位質量あたりの熱容量(比熱容量)をモル質量(単位はkg/mol)で除算すれば、モル熱容量になる。
圧力一定の条件下で測定した場合は定圧比熱(記号:Cp)、体積一定の条件下で測定した場合は定積比熱(記号:Cv)と呼ばれる。
[編集] 定圧比熱
定圧比熱(ていあつひねつ)とは、圧力を一定に気体を加熱した際の単位質量単位温度上昇に必要な熱量。
一般的記号は、CPで表し、エンタルピーの変化量の傾きを表す。
[編集] 定積比熱
定積比熱(ていせきひねつ)とは、体積を一定に気体を加熱したとき単位質量あたり単位温度上昇に必要な熱量。
一般的記号は、 CVで、エントロピーの変化量の傾きを表す。
[編集] 性質
気体においては
- R:気体定数
であり常にCp>Cvという関係がある(記事比熱比に詳しい)。固体・液体の熱膨張は物質の混合等によるものも含め相により正にも負にもなるので両者の大小関係は不定である。
(気体の混合物については、一般的には、モル分圧比が成り立つ)
通常、液体、固体における比熱は、温度により極端に変化しないが、気体においては、エンタルピーの変化量や体積変化が大きく状態量として定圧比熱や、この項にしめす定積比熱を考えなければならない。
ある温度以上の固体では定積モル熱容量Cvが一定になるというデュロン=プティの法則(Dulong-Petit) がある。
[編集] 関連項目
- 数量の比較 (比熱容量)
- デバイの比熱式
- 比熱容量比 - 比熱比
- エンタルピー
- エネルギー等配分の法則
- 熱伝導