瀬尾一三
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瀬尾一三(せお いちぞう, 1947年9月30日 - )は、兵庫県生まれのプロデューサー、アレンジャー、シンガーソングライター。主に中島みゆき、長渕剛、吉田拓郎、風、伊勢正三などの作品を多数手がけていることで知られる。特に1990年代は、中島みゆき、長渕剛の両名のプロデュースに力を注いでおり、現在でも中島のプロデューサーを務めている。
[編集] 経歴
関西大学卒業後、1970年にアルファレコードに入社。2年間の社内での活動を経て1972年にフリーになる。1974年発表の斉藤哲夫のアルバム、『Goodtime Music』で初めてプロデュースを手がける(クレジットはされていない)。その後杏里の「オリビアを聴きながら」やバンバンの「いちご白書をもう一度」など、手がけた作品が次々と大ヒット。一躍ニューミュージック界を代表するアレンジャー/プロデューサーとなる。1977年には風のアルバム『海風』で、当時まだ珍しかったアメリカ西海岸での海外録音を行う。以降彼は現在まで長くロサンゼルスでのレコーディングを続け、主要なプロデュース作品の多くはLAで録音(若しくはミックスダウン)されている。また、「3年B組金八先生」の初期作品の劇中音楽も担当している。
1980年代以降は徳永英明や甲斐よしひろなどのアルバムや楽曲を手がけたほかに、長渕剛が俳優として出演したドラマ『家族ゲームⅡ』の音楽も担当した(彼の歌唱及び作曲による主題歌「Goodbye 青春」他3曲も瀬尾による編曲)。1987年の長渕のアルバム『LICENSE』の全曲をプロデュースし、それ以降に発表されたアルバムのうち数枚で瀬尾は彼との共同プロデューサーとしてクレジットされている。
1986年にSFアニメ映画『ガルフォース ETERNAL STORY』、引き続き1987年、1988年にはそれぞれ続編に当たるOVA『ガルフォース2 DESTRUCTION』、『ガルフォース3 STARDUST WAR』の劇中音楽を担当した。
1988年、中島みゆきのアルバム『グッバイガール』をプロデュース。なお瀬尾はこの作品以降、現在に至るまでに発表された全ての彼女のオリジナル・アルバム及びシングルで、プロデュース・アレンジ・演奏などに携わっている。1990年代以降中島がロサンゼルスで頻繁にアルバムのレコーディングを行うようになったのは瀬尾の進言であり、1989年から渋谷のBunkamura・シアターコクーンで1998年まで行われた(それ以降は不定期で開催)彼女の実験的な音楽劇『夜会』の音楽監督も10年連続で務めるなど、彼はまさに近年の中島の片腕的な存在となっている。
瀬尾一三が手がけた作品の中では先述の中島と長渕の作品の比率がダントツに多く、彼の編曲家としてのキャリアのなかでも二人の作品での仕事が最も重要な位置を占めているといえる。
リタ・クーリッジが日本のヒット曲を英詩でカバーした1991年のアルバム『ダンシング・ウィズ・アン・エンジェル』は、クーリッジの自作曲を含む全曲が瀬尾のプロデュースによるものである。彼女はこのアルバムが縁で、同年に発表された中島みゆきのアルバム『歌でしか言えない』に参加した。1970年代から海外で仕事を進めてきた彼の人脈は広く、手がけた作品にはビル・ペインやヴィニー・カリウタ、ニール・スチューベンハウスをはじめとする多くの大御所も参加している。
最近では吉田拓郎と連名でコンサート・ツアーを行い、2005年の中島みゆきのツアーにも参加している。また、彼等との仕事以外ではNSPの19年ぶりの新作にして、リーダー・天野滋にとっての遺作となったアルバム『Radio Days』や、柴田淳のシングル「ちいさなぼくへ」、中島が華原朋美に提供したシングル「あのさよならにさよならを」などの編曲・プロデュースなどを手がけている。