燻製
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燻製(くんせい)とは、食材を燻煙(後述)することで保存性を高めると共に特有の風味を付加した保存食のこと。燻煙により煙中の殺菌成分が食品に浸透すると同時に、長時間の燻煙により食品の水分量が低下することで保存性が高まる。また、下処理として塩水に漬けられる場合が多く、これによる脱水・加塩も保存性の向上に寄与している。燻煙の前には一般的に乾燥処理を行う場合が多い。
元々は傷みの激しい食材を長期間保存可能な状態に加工するための技術であるが、保存技術の発達した現代ではその意味合いは失われ、普段と違う食感や味わいを楽しむためのものと変化しつつある。 日本に限らず、様々な国で様々な燻製が作られているが、日本においてもっとも一般的なものはかつお節であろう。
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[編集] 燻煙の種類
燻煙(くんえん)とは、香りの良いサクラなどの木材を高温に熱した時に出る煙を食材に当てて風味付けをすると同時に、煙に含まれる殺菌・防腐成分を食材に浸透させる食品加工技法のことである。木材を完全燃焼させるとあまり煙が出ないので、意図的に不完全燃焼の環境を作り多量の煙が出るように工夫される。直接木材に点火し燃やす方法と、他の熱源で木材を加熱して煙を出す方法とがある。
燻煙のことを「燻製にする」いうこともあるが、燻製とは燻煙によって加工された食品を指す言葉であり、燻製に加工する技術は燻煙と呼ぶのが正しい。燻煙法は加工温度の違いにより3分類され、加工温度の高いものから熱燻、温燻、冷燻と呼ばれる。
- 熱燻
- 摂氏80度以上の高温の煙でいぶす方法で、燻煙時に食材が加熱調理されることになる。細かな温度管理も不要で、最も手軽に出来る簡易燻煙法といえる。燻煙時間は10~60分程度である。簡易燻煙法であるため、食品の保存には向かない。
- 温燻
- 最も一般的な燻煙法で、摂氏30~60度ほどの煙でいぶす。燻煙時間は、数時間から1日程度である。一般に燻製という場合は、温燻を指すと考えてよい。最も保存性が高い燻煙法で、保存食という本来的な意味での燻製を作ることが出来る。代表的な製品にベーコンがある。
- 冷燻
- 摂氏15~30度ほどの煙でいぶす方法。木材は高温に加熱しなければ煙を出さず、出た煙も当然高温である。冷燻の場合はこの煙を冷やして食材をいぶさなければならないので、大掛かりな設備が必要となる。また、細かな温度管理が必要で、燻煙時間も1~4週間程度と桁外れに長く、素人が製造するのは不可能に近い。煙を効率的に冷やすためと、生ものを長期にわたって加工しなければならない制約から、製造は気温の低い冬場などに限られる。代表的な製品に生ハムやスモークサーモンなどがある。
- その他
燻製液(いわゆる木酢液)に食品を漬けてその後、乾燥させる液体燻製という手法が食品加工業界では多用されている。木酢液は市販もされているが、ほとんどは食用ではないため注意が必要。食品用に精製されていない木酢液には発がん性物質(タール分)も含まれているので、絶対に食品には利用しないこと。食用に精製されたものは燻製液または燻液などの名称で販売されており、木酢液の名称で市販されているものは食用には不適なものと考えたほうが良い。
[編集] 燻煙に必要な道具
- 燻製窯(スモーカー) - スモークチップから出る熱煙を閉じ込め、材料をいぶす為の道具。本格的なものは石や煉瓦で造られるが、簡易的なものはドラム缶やペール缶、一斗缶などで作られ、市販もされている。
- スモークチップ(スモークチップ) - サクラやナラ、ブナなどの木を砕片に加工したもの。砕片を再度圧縮処理して固まりに加工した製品も市販されている。チップ化せずに、小枝や薪をそのまま利用することもある。家庭では、茶葉をスモークチップとして利用することも出来る。種類によって香りが違う。チップの種類によって出来具合がほぼ決定する。
- 熱源 - 電熱器など。直接燃焼させる種類のスモークチップの場合には不要。