砂防ダム
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
砂防ダム(さぼうダム)とは、小さな渓流などに設置される土砂災害防止のための設備(砂防設備)のひとつ。いわゆる一般のダムとは異なり、土石流の防止に特化したものを指す。
なお、厳密には、高さが7メートル以上のものを砂防ダムといい、それ以下のものは砂防堰堤(さぼうえんてい)と呼ぶ。ここでは、砂防ダムと砂防堰堤を一元的に記述する。
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[編集] 構造
一般的なダムに酷似しているものの、目的が土石流の防止であるため、原則として貯水機能はない(まれに灌漑用堰堤と共用したものなども見られるが、一般的ではない)。通常のダムがアーチダム、アースダムなど様々な形式があるのに対して、砂防ダムの本体は重力式コンクリートダムに類似した構造が一般的である。通常のダムは本体の自重や止水壁で水圧を支える構造となっているが、土石流の土圧を受け止める必要があるため、本体の両側(袖部という)を両岸に大きく突っ込んだ構造となっている。また、ダム下流部における浸食を防ぐ目的として、ダム下流端に段差を付けた張りコンクリート(『水叩き』と呼ばれる)を設ける。
上部には『水通し』と呼ばれる越流部を設けるのが一般的であり、同時に本体に大きな水抜き穴を設けることで、土石流だけを防ぎ流水はそのまま流す構造となっていることが多い。近年では、流水の流下を助け、流木や巨石だけを受け止めることに特化させる目的で、ダム中央部の本体をなくし、代わりに中央部に鋼製の枠などを設けた透過型砂防堰堤(スリットダム、セルダム)と呼ばれる構造も増えてきている。
砂防ダムの主目的は、提体の上流側に砂礫を堆積させ、それにより河川勾配を緩やかにさせ、その河川の侵食力を小さくすることにある。
[編集] 砂防ダムの歴史
- 広島県福山市の堂々川には、1773年から築堤された砂防ダム(砂留)が残る。
- 明治時代には、お雇い外国人であるヨハニス・デ・レーケが来日。現在の砂防ダムの基礎となる思想や工事の体系を構築し、砂防の父と呼ばれる存在となった。
- 1897年に砂防法が成立し、現代に至る砂防事業が始まる。