重力式コンクリートダム
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重力式コンクリートダムは、ダム型式の一種。略して重力式ダム、またグラビティーダムとも呼ばれる。
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[編集] 概要
主にコンクリートを主要材料として使用し、コンクリートの質量を利用しダムの自重で水圧に耐えるのが特徴である。膨大なコンクリート量が必要であり、アーチ式ダムほどは条件は厳しくないものの花崗岩・安山岩等基礎岩盤が堅固な地点でないと建設する事が出来ない。海外では古くから建設されているが、堤高200m以上のダムでは余り多くない。ちなみに世界最大の重力式コンクリートダムはスイスのグランド・ディクセンスダムで、他にはインドや中南米に200m級のダムが集積している。現在建設が進められている中国の三峡ダムや、総貯水容量世界第二位であるロシアのブラーツクダムも重力式である。
順位 | 国名 | ダム名 | 堤高 (m) |
総貯水 容量 (千m³) |
完成年 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
1位 | スイス | グランド・ディクセンスダム | 285.0 | 401,000 | 1961年 | |
2位 | メキシコ | アルバロ・オブリゴンダム | 260.0 | 13,000 | 1946年 | |
3位 | インド | キシャウダム | 236.0 | 1,810,000 | - | 建設中 |
ダムとしては最も頑丈な型式であり地震・洪水に強い事が利点の為、地震や降水量の多い日本では最も適した型式でもある。近代以降日本で建設されたダムでは最も多く用いられた型式で、重力式ダム建設技術の発展は、そのまま日本の土木技術発展史に該当する。だが、近年は良質な基礎岩盤を有する地点が少なくなった事から、建設実績は減少傾向にある。
[編集] 歴史
1900年(明治34年)、神戸市水道局が生田川本川に布引五本松ダムを建設したのが日本最初の例である。その後1911年(明治45年・大正元年)に「電気事業法」が施行されるに及んで福澤桃介・松永安左ヱ門等と言った名だたる実業家が電力事業に乗り出し、こうした中で帝釈川ダム・大井ダム等の堤高50mを超える本格的大ダムが建設された。更に、昭和に入ると小牧ダム(庄川)や塚原ダム(耳川)といった堤高80mを超えるダムも建設され、折からの機械化工法の普及によりその勢いは加速。遂には高さ100mを超えるダムとして五十里ダム(男鹿川)や小河内ダム(多摩川)、水豊ダム(鴨緑江・現北朝鮮)といったダムが計画される様になったが、戦争の激化により水豊ダム以外のダムはその殆どが建設中止を余儀なくされた。
戦前に完成した主なダム
所在地 | 水系名 | 一次 支川名 (本川) |
二次 支川名 |
三次 支川名 |
ダム名 | 堤高 (m) |
総貯水 容量 (千m³) |
管理主体 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
兵庫県 | 生田川 | 生田川 | - | - | 布引五本松ダム | 33.3 | 601 | 神戸市 | 国重要文化財 |
岐阜県 | 木曽川 | 木曽川 | - | - | 大井ダム | 53.4 | 29,400 | 関西電力 | 土木遺産 |
広島県 | 高梁川 | 成羽川 | 帝釈川 | - | 帝釈川ダム | 62.4 | 14,278 | 中国電力 | 土木遺産 |
富山県 | 庄川 | 庄川 | - | - | 小牧ダム | 79.2 | 37,957 | 関西電力 | 国登録有形文化財 |
宮崎県 | 耳川 | 耳川 | - | - | 塚原ダム | 87.0 | 34,326 | 九州電力 | 国登録有形文化財 |
長野県 | 木曽川 | 王滝川 | - | - | 三浦ダム | 83.2 | 62,216 | 関西電力 | 土木遺産 |
戦後丸山ダム(木曽川)が1955年(昭和30年)に完成すると、本格的な大ダム時代を迎える。電源開発株式会社が天竜川に建設した佐久間ダムは、当時としては大規模機械化工法の粋を尽くした建設工法で僅か3年半で1956年(昭和31年)に完成。その後小河内ダム・奥只見ダム(只見川)等高さ150m級のダムが相次いで建設された。又、この時期は堤体内部が空洞で、コンクリートの量を節減できる中空重力式コンクリートダムが多く建設されている。だが、次第に大規模重力ダムを建設できる地点が減少。現在は滝沢ダム(中津川)・八ッ場ダム(吾妻川)・戸草ダム(三峰川)といったダム建設が進んでいるものの、ダム建設への風当たりや経済的なダム型式の開発(台形CSGダムなど)により、1950年代の様な大規模重力ダムが相次いで建設されることは、先ず有り得なくなって来ている。
[編集] 種類
[編集] 越流型重力式コンクリートダム
重力式コンクリートダムの典型例で、殆どの重力式ダムがこの型式を採っている。ダム堤体中央部に洪水吐を設置し、天端より湖水の放流を行うものである。従来は水門を備えるタイプが主流であったが、近年では水門を設けず、サーチャージ水位を超えた場合自然に放流する「自然調節方式」の洪水吐を設けるダムが主流と成っており、事業費削減の観点からも今後増加する傾向にある。尚、このタイプのダムを通称「ゲートレスダム」(坊主ダム)と呼んでいる。洪水調節のみを目的とするダムの場合、平常時は水を全く貯めず自然に河水を流下させ、洪水時にだけ貯水して下流への水害を防除するタイプの「穴あきダム」もあり、足羽川ダム(部子川)・益田川ダム(益田川)・立野ダム(白川)等がこうした型式を採用している。
所在地 | 水系名 | 一次 支川名 (本川) |
二次 支川名 |
三次 支川名 |
ダム名 | 堤高 (m) |
総貯水 容量 (千m³) |
管理主体 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
福島県 新潟県 |
阿賀野川 | 只見川 | - | - | 奥只見ダム | 157.0 | 601,000 | 電源開発 | |
神奈川県 | 相模川 | 中津川 | - | - | 宮ヶ瀬ダム | 156.0 | 193,000 | 国土交通省 | |
埼玉県 | 荒川 | 浦山川 | - | - | 浦山ダム | 156.0 | 58,000 | 水資源機構 | |
静岡県 愛知県 |
天竜川 | 天竜川 | - | - | 佐久間ダム | 155.5 | 326,848 | 電源開発 国土交通省 |
再開発中 |
福島県 | 阿賀野川 | 只見川 | - | - | 田子倉ダム | 145.0 | 494,000 | 電源開発 | |
埼玉県 | 荒川 | 中津川 | - | - | 滝沢ダム | 140.0 | 63,000 | 水資源機構 | 建設中 |
富山県 | 常願寺川 | 和田川 | - | - | 有峰ダム | 140.0 | 222,000 | 北陸電力 | |
群馬県 | 利根川 | 渡良瀬川 | - | - | 草木ダム | 140.0 | 60,500 | 水資源機構 | |
長野県 | 天竜川 | 三峰川 | - | - | 戸草ダム | 140.0 | 61,000 | 国土交通省 | 計画中 |
群馬県 | 利根川 | 吾妻川 | - | - | 八ッ場ダム | 131.0 | 107,500 | 国土交通省 | 建設中 |
[編集] 非越流型重力式コンクリートダム
越流型とは異なり、ダム堤体上に洪水吐を設置しないタイプの重力式コンクリートダム。この様な型式の場合、洪水吐はロックフィルダムと同様に堤体脇の山腹を掘削して洪水吐を設けるか、ダム直下にトンネルを通して下流に放流する。明治から大正に掛けて主に水道用ダムで多く採用されたが、多目的ダムの様に積極的に洪水調節を行うようなダムには採用される事は無く、近年建設されるケースは無い。
ちなみに、世界第四位の堤高にして世界最大の重力式コンクリートダム(堤高285.0m)であるグランド・ディクセンスダム(スイス)は、非越流型重力式コンクリートダムである。
所在地 | 水系名 | 一次 支川名 (本川) |
二次 支川名 |
三次 支川名 |
ダム名 | 堤高 (m) |
総貯水 容量 (千m³) |
管理主体 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
東京都 | 多摩川 | 多摩川 | - | - | 小河内ダム | 149.0 | 189,100 | 東京都 | |
長野県 | 木曽川 | 王滝川 | - | - | 三浦ダム | 83.2 | 62,216 | 関西電力 | 土木遺産 |
茨城県 | 那珂川 | 藤井川 | - | - | 藤井川ダム | 37.5 | 4,212 | 茨城県 | |
北海道 | 石狩川 | 千歳川 | - | - | 千歳第三ダム | 23.6 | 3,648 | 王子製紙 | 土木遺産 |
北海道 | 石狩川 | 千歳川 | - | - | 千歳第四ダム | 21.9 | 2,298 | 王子製紙 | 土木遺産 |