神戸在住
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『神戸在住』(こうべざいじゅう)とは、漫画家、木村紺が月刊アフタヌーン(講談社)に1998年から2006年5月号(3月25日発売)まで連載していた漫画。欧文タイトル「from KOBE」。
目次 |
[編集] 概要
本作品により木村紺は第31回日本漫画家協会賞新人賞を受賞。
東京出身で神戸の北野にある神戸中央大学校(ママ)(モデルは神戸山手大学・短期大学)に通う主人公辰木桂の大学生活を中心に、主人公とその周りを取り巻く人間模様がほぼ一話完結のエッセイ風に描かれている。特にそのタイトル通り、神戸近辺を舞台にしているため、阪神・淡路大震災の話が度々描かれている。また国際都市神戸という都市の雑多性を背景に多様な背景を持った人々が登場する。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 形式
主人公からの1人称で描かれる形式の漫画で、主人公の内面描写に富む。コマ外の自筆による地の文によってコマの説明やその時の主人公の心理描写が入るためやや文字中心の漫画になっている。 また、定規を使わないコマ割の独特さ、トーンやベタをあまり使わず、線の数や太さで陰影をつけているところが特徴である。一話単位での時間の流れ方は緩やかであるが、全体を通した時間の流れ方は、第1巻(1999年8月発売)時点で2回生で、第5巻(2003年4月発売)の途中(第42話)から第7巻(2005年2月発売)までが3回生、第8巻(2006年2月発売)から4回生であることを考えれば、速くはないものの決して遅くはない。ただ、徐々に時間の経過は速くなっている。
どちらかというと少女漫画の形式に近いが、少女漫画特有の青臭さはない。大人の叙情性をそなえた世界観が魅力である。季節の移りかわりや風物を題材とすることも少なくない。
[編集] 神戸紹介
本作品は主人公と周りの人間関係がメインであるが、神戸紹介という一面も持っている。登場人物が関わる施設に関しては架空であるが、神戸ハーバーランドや神戸MOSAIC、神戸市立王子動物園など大部分の施設は実在の施設である。従って、主人公が歩く街並みや立ち寄る店などの殆どが実在しているため、神戸の雰囲気を本作品から得ることができる。また、単行本中には『コラム 小神戸』と題して出てきた建物等を軽く紹介しているコーナーもあり、本作品の神戸紹介の側面を補足している。
上記のように実在の施設と架空の施設が入り乱れているため、ファンの中には架空の施設を探す人もいる。
[編集] 震災
作者木村紺も神戸で被災したため、又、舞台を現代の神戸に設定している以上、阪神・淡路大震災を語られることが度々ある。しかしながら、本作品の主人公、辰木桂はまだ高校生で神戸に引っ越す前であるため、1995年の阪神・淡路大震災を経験していない。従って作品中で震災の話になると震災の爪痕をみることか、その場で直接体験した桂の友人、金城和歌子と、その彼氏林浩の二人(登場人物紹介参照)が中心となって震災の体験談を語る形式をとっている。
震災の話は第1話から少し触れられている。友人鈴木タカ美が地震で揺れた部屋でフラッシュバック体験をするエピソードで桂は震災を体験していない自分が取り残されたような気分になっている。第7話、8話で金城和歌子の震災体験、第23話、第24話、第25話で林浩の震災体験(及びボランティア体験)が描かれている。第40話でも和歌子と林の住んでいた仮設住宅からの引越及び成人式での黙祷が描かれている。この仮設住宅は第2話から登場していたがここからの退去で震災の話は一区切りついている。
[編集] 登場人物
登場人物を全て表記するとかなりの数になるので、主要な人物のみ記載する。
[編集] 主要登場人物
- 辰木桂(たつき かつら)
- 本作の主人公。神戸の大学の文学部美術科課程に通う大学生。もともと東京出身だが、大学入学前に家族で神戸に引っ越してきた。美術科進学を決めたのは、高校時代に出会った日和洋次の作品「月を見ている猫」に影響を受けてのことで、神戸に来てからは日和のアトリエ兼ショップを訪ね、以来、親交を結ぶ。優しい性格で、涙もろい。ボーイッシュな体型を気にしてか、あまりスカートをはかない。本とビートルズなど古めの洋楽が好き。(大学入学は第8話の和歌子と林浩のエピソードからは1996年4月、第5話の明石海峡大橋開通した1997年4月には2回生になっている)。大学卒業後、伊川谷カンパニーというミニコミ誌の出版などを手がける会社に就職の予定。またその傍らで幼時以来となる生け花を始める。
- 金城和歌子(かなぎ わかこ)
- 桂の友人。英文科に通う。普段から泉海洋子と桂の三人で遊ぶことが多い。西灘高校時代に震災を直接体験し、その時林浩と出会う。その後大学で再会して付き合うようになり、第1話の時点では既に同棲している。大学卒業後、輸入雑貨のショップに就職の予定。
- 泉海洋子(いずみ ひろこ)
- 和歌子と共に普段から遊んでいる友人。英文科に通う。姫路出身で、実家は和菓子製造業。高校時代から、学生のかたわらモデルの仕事をしている。海外での活躍を目指しており、そのためにパリに短期留学する。帰国後、大学卒業を先延ばしにしてミラノ留学を計画。さらなるモデル修行に励む。
- 林浩(リン・ハオ)
- 金城和歌子の恋人。桂たちと同じ大学の大学院に通う(第1話では4回生だが、第11話で博士課程1年生に変更。第25話の震災時には既に大学院生)。社会人類学を専攻。震災ボランティアを経験し、その時和歌子と出会う。
- 中国系在日2世の香港生まれで、高知育ち。両親は帰化をしている。実家はパチンコ屋。語学に堪能で日・中・英・仏語を話す。
- 日和洋次(ひなた ようじ)
- イラストレーター。元町高架下でアトリエ兼ショップを経営している。若い頃に交通事故にあった後遺症のため足が不自由(車椅子に乗っている)で左目が義眼であるほか、24歳より腎臓疾患を抱え人工透析を受けていた。本人も命が長くないことを自覚していたとはいえ、わずか32歳の若さで心不全により急逝する。
- 桂が美術科への進学を決意したきっかけとなったのが日和の作品であったこと、死の直前に日和の身体が変調をきたす場面に居合わせながら対応しきれなかったことから、その死は桂にとって大きな衝撃となり、一時は心に大きな傷を負うものの、周囲との関わり合いの中で回復していく。
[編集] 辰木家の人々
- 辰木晴君(たつき はるきみ)
- 桂の弟。幼少は病弱で、現在も喘息の持病がある。そのため、幼い頃は両親の視線が桂にいくことが少なく、桂は必然的にお祖母ちゃん子になった。東京の中学および高校(中退)時代はサッカーをしていた。神戸で約1年のフリーターの後、二つの調理師専門学校を卒業し、フランス料理店で働く。
- 辰木すゑ(たつき すえ)
- 桂の祖母。自宅で生け花の教室を開いていた。桂とさなえの生け花の師匠でもある。病弱な弟に両親がかかり切りだったこともあって、幼い頃の桂はもっぱら祖母に甘えていた。また、自身も桂を可愛がっていたが甘やかすことはなく、桂の嘘には厳格な態度を示した。桂が生まれるとき、晴一に相談されて、「桂」(男なら「けい」、女なら「かつら」)という名前を勧めた。桂が小学校2年のときに心不全で死去。
- 生け花の師匠、と聞くと和服のみのイメージがあるが(実際桂もそのイメージしか記憶になかった)、さなえによると2、3日ごとに洋服を着ていた。
- 夫は早くに他界。
- 辰木晴一(たつき せいいち)
- 桂の父。建築内装関係の仕事をしている。桂の音楽趣味は、父の影響によるところが大きいという。ビートルズやカントリーが好み。妻のさなえとはお見合い結婚だが、まるで恋愛結婚のように仲が良い、と周りには評されている。
- 辰木さなえ(たつき さなえ)
- 桂の母。桂によれば「飽きやすいのに執念深い困った性格」の持ち主。細かなことまでいちいち言わずにはおれないため、家族を困らせることも。カントリー趣味の、いささか変わった買い物感覚があるが、和風主体の辰木家のなかではいささか奇抜すぎると評される。温泉旅行が趣味。
[編集] 英語文化研究室
桂が放課後などよく遊びに行く。研究室と名前があるが、実際は英語文化研究部という文化系サークルの部室。ただしサークルとしての活動は、大学祭に模擬店を出店したことを除いて描写されたことがない。
- 鈴木タカ美(すずき たかみ)
- 同じ美術科に所属する友人。大阪出身。普段から明るくて周りのムードメーカー的存在。父が借金を作り蒸発したため、引越を繰り返していた。絵画の才能に恵まれ、卒業制作は大賞を受賞する。その一方で漫画も執筆し、漫画コンクールでも入賞する実力の持ち主。
- 小池順(こいけ)
- 英文科。第1話から登場するにもかかわらず下の名前が不明であったが最終話で判明。奈良出身。いつも野間とつるんでいる。ノリと人当たりが良く、桂を英語文化研究室に誘った張本人。おちゃらけているようで後輩の面倒見もいい大人な面を持っている。桂の弟、晴君とも親しい。
- 野間誠一郎(のま)
- 英文科。同じく第1話から登場するにもかかわらず下の名前が不明であったが最終話で判明。和歌山出身。大柄だが、威張った感がなく優しい。実家は白浜にある大きな旅館(白浜玉宮閣)で、一人っ子であることもあって、跡を継ぐことが決まっている。高校時代野球部に所属し、現在でもスポーツを趣味としている。桂の弟、晴君とも親しい。
- 友田文理(ともだ あやり)
- 物理課程の大学院に在籍。桂と同じく東京出身。英語文化研究室のお姉さん的存在。
- 大棚教授(おおだなきょうじゅ)
- 英語文化研究室の顧問。神戸在住ではあるが、江戸の下町出身。その風体、雰囲気、語り口とも、江戸っ子のものである。
[編集] 高校時代の友人
- 高橋愛(たかはし あい)
- 同じ高校に通っていた友人。埼玉県の農業大学に在籍。実家の家族とは不仲。自称「隻腕の美女」のとおり隻腕だが、ほとんどのことは一人でする。毅然とした性格で、桂はその性格に憧れを寄せるが、同時に心配を感じることもある。大酒飲みでスモーカー。
- 立花椿(たちばな つばき)
- 高橋愛とは幼児部(幼稚園)からの友人。そのため、桂と愛が仲良くし始めた頃は嫉妬していたこともある。短大卒業後、ながらく憧れていた花屋での仕事に就く。花屋の店主との間に愛を育み、一児をもうける。桂が大学卒業する頃に第二子を妊娠との報せが届く。
- 羽生かよ子(はにゅう かよこ)
- 他人の髪をいじるのが好き。霊感がある。高校時代の友人達のまとめ役的存在。短大卒業後、会社勤めをするが退職。現在、美容師の専門学校に通い、卒業後は、大阪にある友人の実家の美容室に勤める予定。
[編集] 単行本情報
- 神戸在住 1 ISBN 4063211045
- 神戸在住 2 ISBN 4063211169
- 神戸在住 3 ISBN 406321124X
- 神戸在住 4 ISBN 4063211371
- 神戸在住 5 ISBN 4063211487
- 神戸在住 6 ISBN 4063211606
- 神戸在住 7 ISBN 4063211673
- 神戸在住 8 ISBN 4063211754
- 神戸在住 9 ISBN 4063211819
- 神戸在住10 ISBN 4063211827 2007年夏頃発売予定
[編集] 外部リンク
- 掲載誌公式ウェブサイト。
- ファンサイト。作品の背景となった場所の写真を公開。
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