細胞小器官
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
細胞小器官(さいぼうしょうきかん、organelle)とは、細胞の内部で特に分化した形態や機能を持つ構造の総称である。細胞内小器官や細胞内器官、あるいは細胞器官、英名であるオルガネラとも呼ばれる。細胞小器官が高度に発達していることが、真核細胞を原核細胞から区別している特徴の一つである。
顕微鏡技術の発達とともに細胞小器官の同定が徐々に進むとともに産まれた概念であり、そのためどの構造を細胞小器官と呼ぶかに関して混乱が見られる。一方、それぞれの構造についての知見が蓄積し、より正確な分類ができるようになった今日、どれを細胞小器官と呼ぶべきかという議論はあまり重要な意味をなさなくなってきつつある。
第一には、核、小胞体、ゴルジ体、エンドソーム、リソソーム、ミトコンドリア、葉緑体、ペルオキシソーム等の生体膜で囲まれた構造体だけを細胞小器官と呼ぶ立場があり、またこれらはどの場合でも細胞小器官に含められている。これらを膜系細胞小器官と呼ぶ場合もある。これら膜系細胞小器官が細胞内を区画することにより、色々な化学環境下での生化学反応を並行して行うことを可能にしている。また膜の内外で様々な物資の濃度差を作ることができ、このことを利用してエネルギー生産(電子伝達系)や、物質の貯蔵などを行っている。さらに小胞体、ゴルジ体、エンドソーム、リソソームは、小胞を介して細胞膜と連絡しあっており、このEndomembrane systemと呼ばれるネットワークを通じて物質の取込み(エンドサイトーシス)や放出(分泌)を行うことで、他の細胞や細胞外とのコミュニケーションを達成している。
なおこれらのうちミトコンドリアと葉緑体は、元来別の細胞が細胞内共生したものに由来するとの説(細胞内共生説)が有力である。
第二には、細胞骨格や、中心小体、鞭毛、繊毛といった非膜系のタンパク質の超複合体からなる構造体までを細胞小器官に含める場合もある。