リボソーム
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リボソームまたはリボゾーム (Ribosome) はあらゆる生物の細胞内に存在する構造であり、mRNAの遺伝情報を読み取ってタンパク質へと変換する機構である翻訳が行われる場である。リボソームは大小2つのサブユニットから成り、これらは蛋白質とRNAの複合体である。細胞小器官に分類される場合もある。X線構造解析により立体構造が決定された。
原核細胞と真核細胞のいずれにも存在するが、両者では大きさが異なる。原核細胞には30Sサブユニットと50Sサブユニットからなる70Sリボソームが、真核細胞には40Sサブユニットと60Sサブユニットからなる80Sリボソームが存在する。分子量としては大腸菌やでは2.7 MDa、哺乳類では4.6 MDa。またミトコンドリアや葉緑体も独自に原核生物のものと類似したリボソームをもつ。原核生物には細胞核がないため、リボソームは転写されている mRNA に速やかに集まり翻訳を開始する。真核生物では核と細胞質が核膜によって隔てられているため、mRNA は様々な修飾を受けた後、リボソームのある細胞質へと移行する必要がある。
リボソームはコドンに応じてtRNAが運んでくるアミノ酸を連結させペプチド鎖を作る反応を触媒する。小サブユニットは mRNA と tRNA の結合に、大サブユニットはペプチド結合の形成に働く。リボソームを形成する RNA はリボソーム RNA (rRNA) と呼ばれ、触媒活性に中心的な働きを持っている。
一本の mRNA に複数のリボソームが連結した状態をポリリボソームまたはポリソームと呼ぶ。小胞体のうち、粗面小胞体上にはリボソームが大量に結合している。
リボソームや翻訳を阻害する薬剤は生物のタンパク質の合成を停止させるために毒性を示す。例えば、毒物のリシンはリボソームを不活性化することで毒性を発揮する。ただしその一方で、リボソーム阻害剤は病原細菌の増殖停止を目的にした感染症の化学療法薬にも利用されている。細菌などの原核生物とヒトなどの真核生物ではリボソームの構造が異なるため、原核生物のリボソームにのみ特異的な阻害剤は、病原細菌に対する毒性は高いがヒトに対する毒性が低い、選択的治療薬として働くためである。このような薬として、抗生物質であるアミノグリコシド系化合物(ストレプトマイシン、ネオマイシン、カナマイシン)やテトラサイクリン、クロラムフェニコール、マクロライド系化合物などが挙げられる。