舗装
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舗装(ほそう、元の用字は鋪装)とは、道路の耐久力を増すために、その表面を石、煉瓦、コンクリート、アスファルトなどで固めることである。狭義にはコンクリート、アスファルトによる舗装のことを指す。
道路は、下から路床、下層路盤、上層路盤、基層、表層の4層の地層で構成される。このうち、上層路盤と表層(二層打ちのときは基層含む)が舗装に当たる。路床と下層路盤は路盤と呼ばれる。
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[編集] 平坦な表面の維持
表層は普段我々が目にする道路の表面のことで、大抵3~5cm程度の一層、もしくは5cm程度の二層打ち(この場合、下の層を基層という)のアスファルト舗装となっている。この表層は経年劣化で剥離したり、流動によってたわんだり、交通量と路盤の支持力が見合わないため、路盤ごとたわんでしまうこともある。
アスファルトは硬度・耐性は土・砂の地面に比べると大幅に高いものの、継続して力をかけ続けられると小さい力にも脆く、容易に変形する特徴を持っている。このため植物や街路樹の根によってあっさり盛り上がりや割れを起こしたり、いわゆる「わだち掘れ」という、重量の大きい車両の通行が多い道路などで車輪通行位置の延長線上のアスファルトにへこみが生じる現象が起こったりする。このため、舗装は交通量に応じた寿命があり耐用年数を過ぎたり著しく路面が乱れた場合、補修をする必要が出てくる。
補修には表層を軽く削り取り施工し直す切削オーバーレイ舗装、表層(二層打ちなら基層含む)をまるまるはがし、上層路盤もしくは、下層路盤までを整えてから施工する打換え、ただ単に窪みを修正するため、そのままアスファルトを被せるオーバーレイ舗装などがあり、交通量や予算、耐用年数等を考慮して計画を立てることになる。
[編集] 舗装の種類
- アスファルト舗装
- 車道、歩道の両方に用いる。一部の道路では透水性(または排水性)舗装として、特殊なアスファルト合材を使用する。
- コンクリート舗装
- 主にセメントコンクリートを用い、歩車道を問わずに施工される。
- レンガ舗装
- 歩道や民家、公共施設の敷地などに用いる。
- タイル舗装
- 歩道、マンションの通路、階段などに用いる。タイルそのものに厚みがないため、そのほとんどが車道には適しない。
- インターロッキング舗装
- コンクリート二次製品。歩道用、車道用がある。
- 張石舗装
- 天然石を加工し、平板状にしたもの。歩車道を問わない。サイズによっては相当な重量になるので、人力での据え付けはいささか困難である。
[編集] 標準的な色の違い
主な使用材料により舗装は大きく二種類に分けられる。目で見て判別できる色、つまり黒なのか白なのか。黒い方はアスファルト混合物(アスファルト合材)によるアスファルト舗装。白い方はコンクリートを用いたコンクリート舗装である(ただし、昨今の技術革新によってぱっと見では判別できない場合も少なくない)。コンクリート舗装はたわみに強く、重車両の走行には適すが、施工期間が長く、養生などに手間がかかる。一方アスファルト舗装は短期間に施工でき手軽だが、重車両の走行によるたわみに弱い。
[編集] 発注元と規格と品質
国や県、市町村などの公共機関が発注する公共工事の場合、工事を進める上で基準となる規格値が決められており、その要綱に従い工事を進めるので常に一定の品質以上が保証され、発注元の検査によって品質に相違ないことを確認される。
[編集] 最前線の人々
アスファルト舗装を施工する場合、少数精鋭としても、フィニッシャーマン(フィニッシャー運転)、アジャスターマン(フィニッシャーのアジャスター調整)、レイキマン * 2(フィニッシャーの施工した端の処理や最終的な合材の調整)、スコップマン * 2(レイキマンの処理した合材の処理や大まかな合材調整)、ローラーマン * 2(プレートや振動ローラやコンバインドローラやタイヤローラでの転圧)が必要であり、8人から10人のチーム編成となる。チームの息が合っていればいるほど施工は速やかに進む。実に舗装の出来は、チーム連携の良し悪しに左右されると言っても過言ではない。
アスファルト合材の温度は150度近辺であるので、真夏の舗装作業の過酷さは筆舌に尽くしがたく、熱中症対策は十分に取る必要がある。また、アスファルトフィニッシャーにてアスファルト合材を舗設する場合、時折マンホールやハンドホール(止水栓など)に合材が被さってしまい、それに気づかずに転圧し、開放時にはマンホール類がすっぽりと隠れてしまったという例がある。ゆえに、アスファルト合材の舗設前におけるマンホール類の位置確認は不可欠である。
[編集] 日本及び世界の舗装事情
現代の舗装道路は、モータリゼーションに対応したものである。かつて道路は歩行者あるいは軽車両が通行するだけの機能があれば十分とされており、故に路面の耐久性はさほど重視されてはいなかった。しかし、世界的なモータリゼーションの拡大に伴い、凹凸の激しい未舗装道路は、自動車通行に向かないこともあって、道路の機能として車両の走行性をより重要視する傾向に向かっていることから、道路における未舗装道路の割合は世界的に減少傾向に向かっている。
一方で、開発途上国でも、幹線道路は舗装されている場合が多い。ただし、修繕が充分でなく、凹凸が激しいことから通行中のパンクなどは後を絶たない。また、自動車の利用がまだまだ一般的でないこともあって、未舗装道路でも走行可能なように車体強度や走行性能を強化した自動車(四輪駆動車など)を使用することで、当面は舗装を行わない事例も見受けられる。特に最貧国では、今なお国内に舗装道路がない場合もある。ラオスを例に取れば、国内の主要国道は一切舗装されておらず、ただタイからベトナムに抜ける幹線道路が、ラオス国内を掠めるときに、舗装が見られる程度のようである。
1960年代までは、日本でも未舗装道路を普通道路と称しており、国道であっても未舗装が普通の状態であったが、1970年代前半から、急速に舗装が普及した。当時の輸入車が日本で故障が多かったのは、当時は日本の舗装率が低く車体に悪影響を及ぼしている事が一因であるとの説もあった。現在でも、農耕用車両以外の利用がほとんど見られない道路(田畑のあぜ道や林道など)では未舗装である道路も少なくないが、トラクターの通行に支障がないよう、田んぼのあぜ道で舗装されていることもある。