象徴天皇制
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象徴天皇制 (しょうちょうてんのうせい) は、日本国憲法の下で規定された天皇制を指していう。
[編集] 象徴としての天皇
日本国憲法は、第1条において、天皇は日本国と日本国民統合の「象徴」と規定している。天皇は、憲法上において特別に規定される地位についているものの、政治体制としては、国民が主権者(主権在民)である民主制を採用しており(前文、第1条)、天皇の地位は日本国民の総意に基づくものとされている。日本国憲法においては、天皇の行為は国事行為を行うことに限定されている(第7条)が、それら国事行為を行うためには内閣の助言と承認を必要としており(第3条)、実質的な決定権は天皇には存在せず、国政に関する権能を全く有していない(第4条)。
このように憲法で君主に政治機能をまったく与えていない国は、日本以外にはスウェーデン(1979年の憲法改正以後)しかない。
[編集] 憲法上の天皇の地位
前節で述べたとおり、他の民主制国家と同様「主権在民」を謳っている日本で、憲法本文1条によって「象徴」となる以外、国政における一切の権能を有さないと定められた天皇がなおも「元首」「君主」であるのか否か、言い換えれば、そもそも日本国憲法の下における元首は誰かについて議論がある。元首ではないという考え方は、天皇は政治上の権能を有さず、また外交上条約の締結などの権限を行使していないことを理由とするものであり、宮沢俊義、鵜飼信成、芦部信喜などがこの立場である。
うち芦部信喜説によると、「君主」は①その地位が世襲で伝統的な権威を伴う、②統治権、少なくとも行政権の一部を有する、などが要件とされる。 元首の要件で特に重要なものは、外に向かって国家を代表する権能(条約締結権など)であるが、天皇は「象徴」という主権者の枠外におかれ(憲法1条)、「国政に関する権能を有しない」者であると規定され(4条)、国事行為においても「認証」「接受」という形式的・儀礼的行為しか認められていない。憲法1条の規定の主眼は、国の象徴たる役割を強調するというよりも、むしろ天皇が象徴以外の「元首」「君主」としての役割を持つことを積極的に禁止した、と解釈する。「国民主権」を原則とする以上、天皇に対し「象徴」以外の権能を、憲法改正等による主権者からの付託を伴わずに与えることには現行憲法上問題がある、とする。
ただし、これらの説については、スウェーデンの国王やドイツの大統領のように、元首が一切の権力を有さず、象徴の役割しか持たない国も存在することから、日本の天皇も、「政治上の権能を有さないから元首ではない」とは言い切れない。
これに対し、外国の大使・公使の接受を行うという意味で国を代表している側面があり、元首の性質を有しているとする立場があり、清宮四郎らがこの立場にある。
このほか、象徴天皇制は、憲法に規定された君主を戴く政治体制であり、その意味では立憲君主制であると理解することが可能であるが、そもそも君主の政治的権能の存在が憲法によって否定されている以上、憲法学者のなかには日本は共和制を採用しているとする説も存在する。[要出典]
[編集] 関連項目
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