超個体
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超個体(ちょうこたい、Superorganism)とは、多数の個体から形成される生物である。一般に社会性昆虫の社会集団を意味し、分業体制が高度に築かれており、個体はその集団から離れて長時間生き残ることができない。超個体の最も一般的に知られている例はアリであろう。ガイア理論のジェームズ・ラブロックと並行して、ウラジミール・ベルナドスキーは生物圏全体を一種の超個体と見ることができると主張した。
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[編集] 概要
超個体という概念は論争の的となっている。多くの生物学者は、社会集団を有機体と捉えるためには、各個体が永久的に他者と物理的繋がりを持たねばならず、進化は個体ではなく社会全体の総意で選択制御されなければならないと主張する。一方、社会性昆虫の社会は一種の自然選択の単位であるとする見方は一般に受け入れられているが、進化主義では自然選択の第一の単位は個体であると主張されることが多い。
「選択される個体とは何か?」という問題が残る。リチャード・ドーキンスのようなダーウィニズム信奉者は、選択された個体はすなわち「利己的遺伝子」であると示唆する。他の人々は、それが生物のゲノム全体であると考えている。E.O. Wilson はアリなどの社会性昆虫の集団について、選択されるのは個体メンバーではなく集団内の育成実体(Breeding Entity)であることを示した。これはストロマトライトを構成する微細な個体群にも当てはまる。というのも、これは遺伝子共有による一種の単一遺伝子プールを構成しているためである。ガイア理論信奉者リン・マーギュリスはこれが地球全体の土台となる細菌のシンビオジェネシス(Symbiogenesis)にも当てはまると主張している。
デイジーワールドのようなコンピュータシミュレーションでは、生物学的選択は複数のレベルで同時並行的に起きることが示されている。
[編集] 人間は超個体か?
人間も体内の細菌などの微小個体を内包する超個体であるとする見方もある。次のような推定がなされている。「人間の腸内には 1013 から 1014 の細菌があり、そのゲノムの総計(microbiome)は人間自体のゲノムの100倍以上になる。… Microbiome は多糖類やアミノ酸などの代謝を大きく強化している。また、メタン生成経路は Microbiome 無しではあり得ないし、ビタミンやテルペノイドの生物的合成もそうである。従って、人間は超個体であり、その代謝系は人間固有のものと微生物のそれの混合である。」[1].
Timothy Leary は地球上の真の生物はDNAだけであると示唆した。彼は、全ての種とその物理的に独立した生命形態はこの生物(DNA)の手足であるとし、その究極の目的は地球を超える成長を成し遂げることであるとした。彼はまた、DNAは地球で自然に発生したものではなく、地球外からやってきたものだとも主張している(パンスペルミア説参照)。
[編集] 脚注
- ^ Gill S. R., et al. Science, 312, 1355-1359 (2006). http://dx.doi.org/10.1126/science.1124234