車田正美
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車田 正美(くるまだ まさみ、1953年12月6日 -)は、日本の漫画家。東京都中央区月島の出身。
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[編集] 略歴
本宮ひろ志の漫画に感銘をうけて漫画家を志すようになった。漫画を本格的に描き始めた当初は漫画の画材を知らず、青インクでペン入れをしたという。高校3年生の時、初作品を週刊少年ジャンプの「ヤングジャンプ賞」に投稿したが落選。編集部に落選理由を尋ねに行ったのがきっかけで、当時『侍ジャイアンツ』を連載していた井上コオのアシスタントとなる。
20歳のとき週刊少年ジャンプにて『スケ番あらし』でデビュー。『リングにかけろ』『風魔の小次郎』『男坂』『聖闘士星矢』『SILENT KNIGHT翔』を同誌で連載し、荒唐無稽な独特の作風でジャンプの看板漫画家の一人として活躍する。 このうち1986年にアニメ化された『聖闘士星矢』は絶大な人気を得た。星矢をはじめとする仲間達がアテナのもと、世界の平和を守るために自身の命をも省みずに闘う姿は当時の日本では感動をよんだ。 また当時のグッズの売上は大変なもので聖闘士のフィギアも人気であり、当時に生まれた多くの子供に星矢という名前がつけられたほどであった。 またヨーロッパで問題にされている日本のアニメの残酷描写という点でも、聖闘士星矢では他の日本のアニメ作品に比べて少ないことからヨーロッパでも受け入れられて人気作品となった。
しかしこのようなヒット作以外では、開始時から長期連載を見込んで数多くの伏線を張った挙句に短期打ち切りとなり、物語が途中のまま、最終ページに「未完」(『男坂』)や「NEVER END」(『SILENT KNIGHT翔』)という言葉を載せたのみで事実上完結してしまう作品も読者に強い印象を与えた。「SILENT KNIGHT翔」の打ち切り以後、週刊少年ジャンプ上での掲載は無くなる。 このように車田の作品は全てがヒットするわけではなく苦戦した作品もある。 このことは車田自身も、「自分にこの職業を与えてくれたことは感謝するが、自分は本当に漫画家に向いているかどうかはわからない」と自身の作品のなかでコメントしている。
『SILENT KNIGHT翔』打ち切り後、スーパージャンプで新選組を題材とした『あかね色の風』を連載する。コミックスには「1巻」の表示があるが、7話以降の連載は再開されないままである。その後集英社を離れ、創刊まもなかった少年エースに迎えられ『B'T X』を連載する。 B'T Xは人気作品となりアニメ化にもされた。
現在はスーパージャンプにて『リングにかけろ』続編の『リングにかけろ2』を連載している。また、週刊少年チャンピオンにてフルカラー袋とじでの聖闘士星矢の過去世のストーリーにあたる「冥王神話」を不定期連載中である。
しかし、『リングにかけろ2』の開始後まもなくから作画の乱れが目立つようになる。遅々として進まないストーリー展開や、過去の人気作品の続編漫画や関連漫画を次々と他の漫画家に描かせるようになったことで、かつての車田の漫画に対する姿勢を知るファンからは質の低下を嘆く声が高まっている。
また、アニメ版『聖闘士星矢』の続編として、2003年より冥界編がOVAとして作成されていたが、2005年、制作続行中でありながら古谷徹をはじめとした人気の高い主役声優陣を降板させるなど制作を混乱させていることが明らかとなり、アニメ版に親しみの深かったファンから激しい反発を受けている。 (車田は古谷を降板させる気はなく、古谷以外の声優陣の変更を希望したが、他のベテラン声優陣と長年育てたチームワークを重視した古谷は自ら降板したという。)
聖闘士星矢#声優交代の波紋を参照。
[編集] 作風
根性や友情、兄弟愛、仁義をキャラクターに熱く語らせる熱血漫画を得意とする。その一方で、作中に古人の名言を引用したり、物理学の知識を応用した展開を見せるなどの知的な側面も時折垣間見える。
キャラクターデザインのパターンが少なく、デッサン力があるとは言えない絵柄は好みが分かれる。描線は一見太く力強いが、かぶらペンで引いた細い線を重ねて太く見せている。本宮ひろ志に影響されたと語る大ゴマや大胆な見開き他派手な効果を多用した、迫力ある画面構成には定評がある。近年はこの画法にやや問題が生じ、1ページ平均3コマという悪質な例も生じている。基本的に近年の連載作品は話の進行ペースが非常に遅い。
週刊少年ジャンプ連載中は激しい生存競争の中、「その時面白ければよい」という考えから行き当たりばったりに見える怒涛のストーリー展開が多く、突然突飛な設定をもちだしたり、謎の人物として登場したシルエットが正体を現すと全く違うデザインだったり、死亡した人気キャラクターを蘇生させたりして読者を楽しませると同時に混乱させた。 コミックスでは辻褄の会わない部分は修正が加えられ、週刊の勢いを楽しんでいた読者からは惜しむ声もある。 こうした大らかさもまた車田作品の味である。
ほとんどの作品で主人公やその仲間は中学生の年代であり、また「生き別れの兄弟(姉妹)」「実は双子」というキャラクター設定も頻繁に登場する。
人気作品を生み出す一方、当時のジャンプのアンケート優先主義の影響で、読者の人気を得らないと判断され早々に打ち切られた作品も複数存在する。 打ち切りへの反意か『男坂』ではラストページに「未完」と力強い文字を入れ、『SILENT KNIGHT翔』では次週も続くかのようなストーリー展開のまま終了した(単行本収録時は「NEVER END」と見開きで書かれたページを追加)。「倒れるときは前のめり」という本人の信条どおりである(大抵、連載終了が決まれば作家はそれなりのテコ入れを考えるのが通例。未練がましい、男らしくないと評される一方、度胸・反骨心がある等、この独特の打ち切り方への評価は様々)。 特に『男坂』の打ち切りは波紋を呼び漫画史において、打ち切り作品にもかかわらず非常に有名になってしまった。
作中頻繁に使われる「なにい?!」「バカな!」「フッ」というセリフ、「ザシャアッ」「ピキィィン」「ドォォォォン」などの擬音と描き文字、墨を飛び散らせたような迫力ある黒い吹き出しなどは車田独特の様式として人気がある。
時代遅れ、ワンパターンといわれながらも斬新な設定を生み出すことがあり、『リングにかけろ』のトーナメント式団体戦は後の少年ジャンプのバトル漫画の先駆けとなった。技名を叫んでポーズをとれば、派手に相手が吹っ飛ぶという表現も生み出した。 『聖闘士星矢』ではオブジェが鎧状のプロテクターとなり、それを纏って戦うという設定や、超人的な力を生み出す「小宇宙」の設定が人気を呼び、当時のアニメや漫画に影響を与えた。クロス関連商品の売り上げにより連載時、車田は文化人所得税第一位を誇り、当時所有する車も外車数台と豪華絢爛の豪遊生活を送っていた(現在は国産車と二本の足と本人は語る)。
[編集] その他
- 車田自身の「熱血」なキャラクターも売りで、漫画や人生に懸ける熱い想いに感銘を受けたファンも多い。ファンからは親しみを込めて「アニキ」「兄ィ」、また尊敬と(細かいことを気にしない大雑把な言動から)多少の揶揄を込めて「御大」と呼ばれることもある。
- 車田自身は自らを「漫画家」ではなく「漫画屋」であると称していた。
- 熱心な車田ファンは「マサミスト」と呼ばれる。
- 正装は白のスーツを愛用しており、誌面やOVA聖闘士星矢ハーデス十二宮編試写会で着用していた。白スーツ・片手にワインという出で立ちは自身の短編漫画・「実録!神輪会」に登場する、悪の漫画家・花房右京を髣髴とさせる。
- 大雑把さや大言壮語ともとれる発言は車田自身のキャラクターとして愛されてきた。しかし、特に声優変更に関する告知文の掲載以降は批判する者も多い。
- 格闘家が大好き。幸いか不幸かこれが影響して、車田当人のゴリ押しで格闘家が自身の原作によるアニメ作品のゲスト声優として参加したり、果てには本人が登場するという事態まで発生した。単行本コメント、雑誌対談企画等、その他格闘家関連の話題には事欠かない。
- 「聖闘士星矢」に登場するオブジェ状のプロテクター、聖衣(クロス)、鱗衣(スケイル)、冥衣(サープリス)は、複数のアシスタントがデザインと作画(描写に形状の知悉が要求されるため)を兼任している。
[編集] 主要作品
- スケ番あらし
- リングにかけろ
- 風魔の小次郎
- 男坂
- 聖闘士星矢
- SILENT KNIGHT翔
- あかね色の風
- B'T X
- リングにかけろ2
- 雷鳴のZAJI
- EVIL CRUSHER 魔矢