近代化遺産
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近代化遺産(きんだいかいさん)とは、国家や社会の近代化を支えた産業、土木、交通に関する建築物・構造物などの遺産のこと。近代産業遺産とも呼ばれる。 製鉄所・造船所・製糸場などの工場、鉱山、橋、ダム、トンネル、発電所、鉄道等、対象は広く、建造物や設備・機械以外にも、河川や港湾施設など、ある産業を支えた総体を遺産と捉えるものである。 従来の文化財保護の対象にはなりにくかった、これらの遺産を評価する視点から使われるようになった言葉である。
日本では、文化庁が1990年以降、全国の産業関連の遺跡等の調査をはじめ、「近代化遺産」というカテゴリーを使うようになった。その後、1996年の文化財保護法改正において登録文化財制度が導入され、近代化遺産保護が本格化した。
[編集] 事例
- 旧札幌ビール第2工場(北海道札幌市) - 1890年竣工
- 小樽運河倉庫群(北海道小樽市)
- 旧北炭夕張炭鉱の関連施設 (北海道夕張市)
- 富岡製糸場(群馬県富岡市) - 1872年操業開始、日本初の器械製糸工場
- 新町紡績所(旧内務省勧業寮屑糸紡績所)(群馬県多野郡新町) - 1877年竣工
- 新橋停車場(東京都港区)
- 横浜造船所ドック(神奈川県横浜市) - 1896年竣工
- 横須賀造船所(現在は米軍基地内)(神奈川県横須賀市) - 1871年竣工
- 碓氷峠橋梁(めがね橋)(群馬県安中市) - アプト式鉄道施設
- 黒部ダム、発電所(富山県中新川郡立山町)
- 琵琶湖疎水南禅寺水路閣(京都府京都市) - 1890年竣工、日本初の竪坑工法、水力発電、インクライン
- 適塾(緒方洪庵旧居)(大阪府大阪市) - 江戸時代
- 綿業会館(大阪府大阪市) - 1931年竣工
- 旧居留地下水渠(兵庫県神戸市) - 1872年、日本最古の近代下水道遺構
- 湊川隧道(兵庫県神戸市) - 1901年竣工、日本初の河川トンネル
- 布引五本松ダム(兵庫県神戸市) - 1900年竣工、日本初の重力式コンクリートダム
- 奥平野浄水場旧急速濾過場上屋(兵庫県神戸市) - 1917年竣工、京都・蹴上浄水場とともに日本最初期の急速ろ過施設
- 神戸税関(兵庫県神戸市) - 1927年竣工、日本初の近代式税関庁舎
- 旧国立生糸検査所(兵庫県神戸市) - 1932年竣工のゴシック建築
- 八幡製鉄所(福岡県北九州市) - 1901年操業開始、日本初の近代製鉄所
- 三井三池炭鉱(福岡県大牟田市・熊本県荒尾市) - 江戸時代
- 白水ダム(大分県竹田市) - 1938年竣工
[編集] その他
西洋館や近代建築も広い意味では近代化遺産に含まれる。軍関係の施設については、特に戦争遺跡と呼ぶことがある。