退職勧奨
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退職勧奨(たいしょくかんしょう)とは、事業または事業所における使用者が労働者に退職の誘引をすることをいう。解雇が使用者からの一方的な契約解除であるのにたいして、退職勧奨は使用者の契約解除の申し込みに関して労働者が応じる合意退職である。
勧奨する側が労働者の肩を軽く叩いて退職を促すというイメージから、俗に「肩叩き」といえば多くの場合、退職勧奨を指すが、「肩叩き」の語は退職強要を指すこともあるほか、使用者でない他の労働者が本人に退職を促すことを指すこともある。
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[編集] 退職勧奨の性質
勧奨された労働者は退職に応じる義務はないが、退職に応じると退職金の割り増し(一般的に「会社都合による退職金」という)や雇用保険における失業給付が通常の「自己都合退職」にくらべて手厚い「会社都合退職」扱いとなることがあり、失業給付の待機期間が、通常の3ヶ月ではなく1週間となる。
しかし、逆に使用者からの退職勧奨に応じなければ仕事を取り上げられたり、遠隔地への配転を命じられたり、嫌がらせなどをされることがあり、リストラを多く実施する状況の最近ではトラブルとなっていることが多い。必要以上に退職勧奨をする事を「退職強要(たいしょくきょうよう)」といい、民法上でも不法行為に該当し損害賠償を請求される対象となることがある。
[編集] 退職勧奨における背景
退職勧奨は企業におけるリストラの一環として行なわれることが多い。 解雇には解雇ルールがあり、就業規則で明示された普通解雇もしくは懲戒解雇に記載された事項に該当するか、不況時に限り行なわれる裁判の有名な判例である「整理解雇の四要件」に該当することがない限り解雇をすることが許されない。そこで人員削減には退職勧奨という方法を用いて使用者にとって「不都合な」労働者にたいし、退職の誘いをかける。「不都合」とは働きに対して「賃金が高いと考えられるもの」や「能力の低いもの」と考えるのが主な考え方ではあるが、「使用者から見て単に気に入らないもの」であっても勧奨をすることは可能である。けれども労働者がそれらの勧奨に対して「退職をする意図がない」ということであれば、使用者によるそれ以上の勧奨行為は「退職強要」となり不法行為を構成することになる。
[編集] 退職勧奨における問題点
「不当解雇」や「退職強要」に関しては裁判という方法が最も白黒はっきりする解決法となるのであるが、現在の日本では労働者が使用者を相手に裁判を起こすことはかなりの費用と時間を消費するために「泣き寝入り」をすることも少なくない。
そのようなことがもとで厚生労働省は個別紛争に関する法律などで紛争の解決を迅速に図る機関を設け紛争の解決に成果を挙げている。ただし、強制力が無いため、その改善も要求されている。そのため、ドイツで迅速な解決に成果を挙げている「労働裁判所」の検討も日本では持ち上がっており、平成18年より「労働審判法」が施行される。