通学定期乗車券の発売条件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
通学定期乗車券の発売条件(つうがくていきじょうしゃけんのはつばいじょうけん)について記述する。
通学定期乗車券は、割引率が高く、発売対象者も限定されている。「通学定期券」と略して呼ばれることが多い。
発売にあたっては、以下のとおり条件がある。本稿では一般的なJR、民鉄について記述するが、鉄道事業者によって取り扱いは異なるので、購入の際は利用する事業者に必ず確認していただきたい。
目次 |
[編集] 発売対象者
指定された学校の生徒・児童・学生が対象。通学定期乗車券発売対象の学校を指定学校と呼ぶ。
指定学校とはおおむね国公立、私立の小学校、中学校、高等学校、大学等である。一部の予備校も対象であるが、年間授業時間数などに基準が設けられている。そのため、予備校生の場合、授業時間数によって通学定期乗車券を購入できる学生とできない学生が存在する。一定の授業時間に満たなければ購入はできないので、授業時間が少ないと通学定期券は購入できない。
また、公立小学校の場合、基本的に地元の学区内からの通学が原則であり、交通機関を利用する必要性がなければ通学証明書を発行しない(要件を満たさないので発行が認められない)。ただし、転居等で越境通学する児童、生徒がいる場合は学校長の判断で通学証明書が発行されるため、通学定期乗車券の購入が可能である。また稀に、自治体の都合で学校の統廃合により、児童が交通機関を利用して通学することもある。この場合、自治体が通学定期券を学校単位で一括購入するので、個別に通学証明を発行しないで事業者から定期券を購入後、児童に配布する。
[編集] 指定学校の認定
通常はJRグループによる認定で、いわゆる「1条校」は無条件で指定学校となる。1条校以外で「指定学校」の認定を受けたい場合、最寄のJRグループ各社に問い合わせる。
JR以外の鉄道事業者では、JRの認定を受ければそのまま「指定学校」として取り扱ってもらえることが多く、各社局へ個別には申請しなくてよいことが多い。
一部の鉄道事業者(公営に多い)はJRとは別に独自の認定をしている。したがって、JRの認定さえ受ければ全国どこでも通学定期券が買えるというわけではない。独自の認定をしている社局に対しては、個別に申請が必要である。
また、認定条件は鉄道事業者によって異なるので、ある鉄道事業者では「指定学校」の認定を受けられたが、別の鉄道事業者では認定が受けられなかったというケースもよくある。大学、高校などではまず無いが、一部の専門学校でそういった事例がある。
「指定学校」の認定を受けたい場合、年間授業時間数、授業内容などの資料を揃えて申請が必要である。詳しくは、認定を受けたい鉄道事業者(JRなど)に問い合わせていただきたい。
[編集] 発売(購入)に必要な証明書
通学定期券の購入には、下記の証明書が必要である。
- 証明書(学生証)
- 通学定期乗車券購入兼用の証明書(学生証)
学校によって、学生証の様式は異なり、1.の様式または2.の様式のどちらかになっている。
1.には通学区間や自宅・学校最寄り駅の記載がないためこの証明書(学生証)だけでは購入はできない。他に通学区間等を記載した通学証明書が必要である。
2.には通学区間が記載されており、定期券を発行したときに鉄道会社の係員が証明のゴム印を押す欄も設けられており、そのまま通学証明書としても使えるような様式になっている。
よく生徒手帳で購入できると勘違いしている者がいるが、誤りである。生徒手帳だけでは購入できない。ただし、生徒手帳が前述2.の通学定期乗車券購入兼用の証明書と一体化している場合、そのような学校の生徒が「生徒手帳で購入できる」と思い込んでいることもある。もちろん、生徒手帳で購入可能なわけではなく、通学定期乗車券購入兼用の証明書の効力で購入が可能であることはいうまでもない。
指定学校になっていない学習塾、一部の専門学校、海外の学校法人などは通学定期乗車券は購入できない。それらの学校が発行した「通学証明書」や「学生証」と称する証明書を定期券発売窓口に持参しても定期乗車券の購入に関しては無効である。そういった学校の中には、鉄道事業者の規則で定められた様式と全く同じスタイルで「通学証明書」を発行しているところがあるが、もちろん「指定学校」になっていないのであるから通学定期券は購入できない。証明書の様式が規則と同じスタイルだからといって通学定期乗車券の購入(発売)ができるわけではないことはいうまでもない。
[編集] 発売区間
定期乗車券の通学定期乗車券の項にもある通り、自宅(下宿などの現住所)の最寄駅から学校が指定する最寄駅までを結ぶ最短経路での発売となる。
ただし、最寄駅・最短経路についての厳密な定義はされておらず、常識を逸脱しない範囲内であれば認められやすい。例えば複数の駅が利用可能な地域で最寄ではない駅を利用した方が利便性が高い場合(安い、本数が多い、1社局もしくは1本で目的地にアクセス出来るなど)であれば認められる傾向にある。
同様に、厳密に最短・最寄であるためにわざわざ複数の社局線のほぼ無駄な使用を強いるということはまず考えられない。
経路については、東京急行電鉄の時刻表に次のような記述がある。
通学定期券は、次のいずれかに当てはまる経路で発売いたします。
- ご乗車距離が最も短い経路
- ご乗車時間(お乗換え時間を含む)が最も短い経路
- 定期運賃が最も低額な経路
[編集] 実習用通学定期乗車券
学生が、実習のために学校以外の場所に通う場合に発売される。
本来、「自宅最寄り駅から学校最寄り駅まで」にしか発売されない通学定期券を「自宅最寄り駅から実習先最寄り駅」まで発売するものである。
医療系学校(病院等の医療施設で実習を行う)、福祉系専門学校(老人ホーム等の介護施設等で実習を行う)などが多い。
但し、クラブ活動のために通うケースの場合は、卒業に必要な単位ではないので、通学定期券の発売対象外である。したがって、ここでいう「実習」には該当しない。
- 発売条件
- 学校自体が「指定学校」となっていること。
- その実習が「卒業のために必須の単位」となっていること。
- 実習先から報酬(賃金)を受け取らないこと。(もし受け取っていれば通勤である)
以上の条件を全て満たしていないとならない。そのほかにもいろいろ条件があり、条件の内容も鉄道事業者ごとに異なるので、各自で問い合わせされたい。
- 手続き
「実習用通学定期乗車券」はいきなり駅に行っても購入できない。事前に鉄道事業者に申請をする。早めの申請が推奨されるが、購入希望時期の2ヶ月前ぐらいまでに申請しておけばよい。直前の申請だと、間に合わない場合がある。その場合、購入できるまでは普通に乗車券類を購入して通うことになる。
なお、申請は学生自身が行うことができず、学校の事務所が行う。したがって、そういった事務手続きにかかる日数を見込んで、早めの申請が推奨されるのである。
複数の鉄道事業者にまたがって通学する場合、全事業者に申請をする。
申請する場合(学校の事務担当者が)まず、鉄道事業者から申請用紙をもらう。様式はだいたい決まっているので見本を元にパソコンで自作する。それに学校の公印(朱肉使用)を押し、必要な枚数(だいたい同じものを2~3枚作成。必要な枚数はその都度確認)を鉄道事業者に郵送する。(駅では申し込みできない。通常は本社や支社の担当部署へ郵送)このとき返信用の封筒が必要であるから注意する。返信用封筒には切手を予め貼付し、宛名(返送先=申請元)を記入しておく。切手を貼り忘れると原則として後から送料を請求される。
鉄道事業者から承認書が送られてきたら、その書類を持参して駅で定期券を購入することになる。購入できる駅が指定される場合もあるから注意する。
定期券そのものは通常の通学定期券と同様の運賃である。券面に「実習」または「実」と表示する鉄道事業者もある。
全ての鉄道事業者にこうした制度があるわけではないので、不明点がある場合は個別に問い合わせていただきたい。