酒粕
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酒粕(さけかす)とは、日本酒などのもろみを、圧搾した後に残る白色の固形物のことである。
酒米を醸造すると重量比で25%ほどの酒粕が取り出され、その成分は日本食品標準成分表によると、水分51%・炭水化物23%・蛋白質13%・脂質・灰分となっており、他にもペプチド・アミノ酸・ビタミン・酵母(酒母)などが含まれているので栄養的には優れており、健康食品としての観点から価値が見直されているが、近年は日本酒の生産量が減少していることから、副産物である酒粕も流通量が減少傾向にある。
なお味醂のもろみから取れる味醂粕は、もち米を含むことから風味が異なり、焼酎のもろみから取れる焼酎粕はクエン酸を多量に含むので酸味を有する。
[編集] 酒粕の種類
- 板粕 - 圧搾された酒粕を切り揃えた物。
- ばら粕 - 形を揃えていない粒状のままの物。吟醸酒の酒粕に多い。
- 練り粕 - 酒粕を柔らかいペースト状にした物。
- 踏込み粕 - ばら粕及び板粕をタンクに足で踏込み、空気を追い出して、4~6ヶ月熟成(醗酵)させたもの。酒粕の中の糖分がアミノ酸に変化する為、風味・旨味が増す。色も茶色・及び黄金色のものが多い。地方によって、「押し粕」「諸白(もろはく)粕」「練り粕」と呼ばれる。酢原料・漬物用に使用されることが多い。
- 成形粕 - ばら粕を練りこんで棒状に押し出し、板粕状にしたもの。「ニュー板粕」と呼んでいる業者もある。上述の理由により板粕が不足している為に製造されたもので、代替品の意味合いが強い。練り込んでいるため使いやすいが、練ることにより米麹が壊れ、また酸化するため風味に欠ける。
「漬物用」など従来からの製品に加え、近年では「甘酒用」をはじめ、各種料理用に調整された数々の製品も開発されるようになった。
[編集] 酒粕を使う食品
- 甘酒 - 簡易的な粕製甘酒の材料。
- 酢 - 酢酸発酵させる。
- 焼酎 - 粕取り焼酎。酒粕のアルコール分を蒸留する。
- 漬物 - わさび漬けや粕漬(魚や肉)・奈良漬け(踏込み粕を使う)などの「床」に用いられる。。
- 粕汁 - 酒粕のみか、または味噌と混ぜて用いる。
- しもつかれ - 栃木県の郷土料理
酒粕はそのままで食べることができるが、直火で焼くと風味が引き立ち、砂糖をまぶせばよりいっそう美味である(電子レンジ等で軽く加熱するだけでも風味が引き立つ)。酒粕に残っている酒母は、パンなどの発酵に転用することもできる。
[編集] 酒粕を扱うときの注意
酒粕の状態にもよるが、日本食品標準成分表によるとアルコール分が約8%程度残存しているので、美味だからとはいえ自動車の運転や機械類を操作する前、酒に弱い人などは食べ過ぎないよう注意する。特に酒母を摂取するため生食を行うと普通の人でも酒酔いするので注意すること。
酒粕は、清酒製造時の副産物の為、原料米由来の胚芽等が含まれることがある。また、伝統的な酒造道具(木桶等)を使用して製造される為、それらが剥離し酒粕の中に混入することもまれにある。