雪かき車
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雪かき車(ゆきかきしゃ)とは、貨車の一種で、冬、線路の除雪を行うのに使われる事業用車両である。 貨物は積載しないが、鉄道車両の分類上、便宜的に貨車の一種として分類されている。記号は「キ」。
除雪車ともいうが、道路用の除雪車と区別するため、ここでは「雪かき車」の呼称を用いる。日本で実際に用いられた雪かき車の種類としては、ラッセル車、マックレー車、ロータリー車、ジョルダン車の4種類がある。
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[編集] ラッセル車
鉄道用の雪かき車としては最も有名なもので、前方に排雪板(ブレード)を装着し、進行方向の片側もしくは両側に雪を掻き分ける雪かき車である。豪雪地域の初期除雪に活躍するほか、積雪がさほどひどくない降雪地でも用いられる。豪雪時など、雪を押しつけたり排雪するスペースが無くなる場合には運用できなくなるため、その場合にはマックレー車とロータリー車を連結した「キマロキ編成」が使われることになる。
[編集] 主な形式
- キ1
- キ100 - 単線用。線路の両側に雪を寄せる。
- キ550 - 複線用。線路の左側に雪を寄せる。
[編集] マックレー車
豪雪時にラッセル車での除雪を繰り返すと、掻き分けられた雪が左右に溜まり、次第に高い雪の壁ができてくる。雪の壁が高くなりすぎると除雪できなくなるため、まず雪の壁を崩す。この時に使われる雪かき車をかき寄せ雪かき車、またはマックレー車という。
マックレー車は除雪装置として「八」の字に開く翼を備え付けており、機関車の後方に連結し、除雪装置部分を後方に向け、翼を使って雪の壁を崩しながら走る。
[編集] 主な形式
- キ900
[編集] ロータリー車
ロータリー車は、マックレー車によって崩された雪を遠くへはね飛ばすための雪かき車である。機関車の前方に連結し、機関車に後押ししてもらって使う。先頭部には回転する羽根車が付いており、これに雪を巻き込み、遠くへと飛ばす。巨大な回転翼を回す動力源として蒸気動力を用いているため、蒸気機関車と同じようなボイラーや炭水車を備えており、非常に大型である。
[編集] 主な形式
- キ600
- キ620
[編集] ジョルダン車
前面に除雪用の翼を持ち、これを左右に広げて線路の周囲の広い範囲を除雪する雪かき車。広幅雪かき車とも呼ばれる。多少の雪の壁なら崩すこともできるが、幅広く開いた翼で雪を押しのけるので雪の抵抗力が非常に大きく、あまり深い雪の壁では使えない。
[編集] 主な形式
- キ700
- キ750
[編集] キマロキ編成
極度の豪雪時にのみ使われるマックレー車、ロータリー車は出動するとき、機関車・マックレー車・ロータリー車・機関車の順に連結して使用する(機関車・マックレー車の編成とロータリー車・機関車の編成が別々になることもある)。これをそれぞれの頭文字をとってキマロキ編成という。
[編集] 雪かき車の活躍と現状
雪かき車は鉄道創業期から長く使われてきたが、降雪時期以外は全く用途がなく、遊休車両となってしまう問題があり、1960年代からDD15形など除雪用ディーゼル機関車が登場し、次第にこれに置き換えられていった。しかしディーゼル機関車よりも排雪能力が高いため、蒸気機関車が姿を消した後もしばらく残った。
しかしながら、現在ではディーゼル機関車のほかモーターカーなどの普及により、雪かき車はJRではすべて現役を退いており、東北の弘南鉄道や北陸等の一部私鉄に少数残るのみである。北海道では雪かき車が何両か保存されており、名寄市の名寄公園や小樽市の小樽交通記念館などでその姿を見ることができる。
[編集] ササラ電車
北海道の札幌と函館の市電では、竹でできた「ササラ」と呼ばれるブラシを装着したドラムをモーターで回転させて除雪を行う車両(通称「ササラ電車」)がある。