顔文字
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顔文字(かおもじ)とは、文字や記号を組み合わせて表情を表現したものである。アスキーアートの一種であり、アスキーアートの中でも特に1行で表す事のできるものを指す。パソコンや携帯電話を介してのメール、インターネット掲示板、チャットなどにおいて、文末に添える等の形で用いられる。
表現される文字の関係で、欧米やその他の国々のアルファベット使用圏では横倒しにした顔文字を、東アジアの日本語使用圏や韓国語使用圏などでは正位置の顔文字を主流としている。
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[編集] 歴史
顔文字の起源にはいくつかの説があるが、顔文字 ":-)" と ":-(" を発明したのはIBM社のScott Fahlmanであるとされている。1982年9月19日11:44にScottが顔文字の使用を提案したメッセージが当時のバックアップテープから掘り起こされている[1]。
また、現在と異なる方法ではあるが1972年頃にPLATO IVプログラムで顔文字は日常的に使用されていた。このシステム上では、複数の文字を重ねて表示する事が出来たため、いくつかの文字を組み合わせて様々な顔文字が用いられていた。
さらには、19世紀のタイプライタ雑誌にも";)"という顔文字が発見されており、コンピュータ以前のタイプライタ時代にまで遡ることができる[2]。
余談であるが、1321年に完成したダンテの『神曲』煉獄篇には、人間を意味する omo の語を構成するMと2つのOで人間の顔をあらわすという表現が見られる。Mで眼窩のくぼみと鼻の輪郭を、Oは眼を形象している、というものである(具体的には下の通り)。
/\/\ ◯∥◯
現在日本で主流となっている正位型の顔文字が誕生した正確な日時は不明であるが、1986年頃のアスキーネットで生まれたのではないかと考えられている[3]。
[編集] 目的
Scottが顔文字を提案したのは、ある人が冗談のつもりで書いたことを、他の人が本気にして受け取ってしまうということがあったためである。その後、文章だけでは伝えられない感情を表現するために様々な顔文字が生まれた。顔文字と同様の目的を持つものに(笑)や(泣)などの表現がある。
[編集] 日本型の顔文字
日本では2バイト文字を用いた表現が可能であり、顔文字のバリエーションも豊富である。ただし、環境次第では見る事が出来ないため海外へのメールでの使用には注意が必要である。
日本国内においても、普通のネットコミュニティ,ギャル文字等で用いられる顔文字と、あやしいわーるどや2ちゃんねる系掲示板で用いられる顔文字は表現様式がまったく異なっており、顔文字のタイプ・傾向はほぼこのいずれかに属するようである。両者の相違点を挙げると、普通のネットコミュニティにおける顔文字は半角(1バイト)英数字およびASCII記号を主体とし(文字化けを避けるため等で)2バイト(日本語)文字の使用を避ける傾向が強く、また口に相当する部分が省略される場合も少なくない。一方、後者の系統の顔文字では、(より視覚的に表現しようとするため)2バイト文字(日本語文字および記号)の使用に躊躇することがなく、さらに特徴として口にキリル文字の「Д」(デー)や論理記号の「∀」(全称記号)、ギリシャ文字の「ω」(オメガ)や長音符の「ー」を用いることが多い。「Д」は開いた口、「∀」は半開きの口、「ω」はネコ科の動物のような口、「ー」はニヤッとした口を表すことが多い。
[編集] 代表的な例
ネットコミュニティ風 | 2ちゃんねる風 | 感情 |
---|---|---|
(^_^) | (´∀`) | 笑い (微笑み) |
(^^) | (*゚ー゚) | |
(^-^) | (・∀・) | |
(*_*) | Σ(゚д゚;) | 驚き |
(゜o゜) | キタ――――(゚∀゚)――――ッ!!!! | |
(;_;) | (ノд`) | 泣き |
(ToT) | (´;ω;`) | |
(T_T) | (ノдT) | |
(/_T) | 。・゚・(つД`)・゚・。 | |
(@_@) | (゚∀。) | 混乱 |
( . .) | (´・ω・`) | しょんぼり |
(・~・) | ヽ(´ー`)ノ | まったり |
(#゚皿゚) | (`Д´#) | 怒り |
(^_^; | (;´Д`) | 苦笑 |
m(_ _)m | - | 平伏(依頼) |
( ̄ー ̄) | ( ´,_ゝ`)プッ (゜c_,゜)プッ | 嘲笑、上から目線 |
[編集] 応用例
=^.^= | 猫 |
(=^ェ^=) | |
(=^. .^=) | |
ミ^・.・^彡 | |
u・ェ・u | 犬 |
くコ:彡 | イカ |
_l ̄l○,OTL,orz,or2 | がっかり,がっくし |
ぷ。 | ボウリングをしてる人 |
[編集] 欧米型の顔文字
欧米型の顔文字はエモーティコン(emoticon)またはスマイリー(smiley)と呼ばれる。エモーティコンというのはemotion(感情)とicon(アイコン)とのかばん語。90°反時計回りに倒した形、つまり左が上、右が下となっている顔文字が一般的である。鼻にあたる部分は省略される場合もある。
[編集] 代表的な例
:-) | 笑顔 (スマイリー) |
:) | |
=) | |
:-( | しかめ面 悲しみ、同情 |
)-: | |
:( | |
:/ | 不満、不快感 |
:| | 真剣 |
:-D | 笑顔 |
:D | |
:-P | 舌を出している 冗談、皮肉 |
:P | |
;-) | ウィンク |
(-; | |
;) | |
B-) | サングラス クールな感じ |
8-) | |
:-O | 驚き |
:o | |
XD | 笑い |
:\/ | 大口 * |
*英語コンピュータで、「\」はバックスラッシュ(\の半角英文字)
[編集] 欧米と日本の顔文字の違いについて
日本と欧米の顔文字の違いの一つは、
- 日本の顔文字は主に目の形をもって感情を表現するのに対して、
- 欧米の顔文字は主に口の形をもって感情表現をする
ことである。北海道大学の社会心理学者、結城雅樹らは、この違いが日本人と欧米人の実際の表情表出ルールの違い、およびそれと対応した表情知覚のルールの違いと対応している可能性を指摘している。日米で行った実験では、他者の感情を表情から判断するとき、日本人は他者の目の形を、欧米人は口の形を主な手がかりとすることを実証している[5]。
[編集] 脚注
- ^ Scottのメッセージ
- ^ An Emoticon in Typewriter Era
- ^ 顔文字の歴史
- ^ 米国特許商標庁
- ^ CULTURE AND RECOGNIZING EMOTIONS(PDF)
[編集] 関連項目
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