馬と少年
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『馬と少年』は、C・S・ルイスによる児童文学「ナルニア国ものがたり」7部作のうち、5番目に執筆された作品。
ナルニア年代記として古い順にみると、『ライオンと魔女』に続いて3番目にあたる。 原題はThe Horse and His Boy。 日本で最初に出版された時の翻訳は瀬田貞二。
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[編集] 概要
原題はThe Horse and His Boy、直訳すれば「(その)馬と彼の少年」である。これは、普通なら「(その)少年と彼の馬」、つまり少年が馬の主人、持ち主となるところが、馬の方が主になっている。物語はまさに馬が主となり、少年をリードする形で展開する。
物語の時代は『ライオンと魔女』の暫く後、ペベンシー家の4人きょうだいがナルニアの王座についているころである。
この世とは別世界の国ナルニアとその友好国アーケン国は魔法が働き、けものたちがしゃべり、神話的生き物や妖精の住む世界であったが、その南方にあるカロールメン国はナルニアとはまた異なる世界であった。 ナルニアが聖書と西欧諸国の神話伝承を背景にした国であったのに対して、カロールメンはアラビアンナイトの世界のイメージである。住人の肌色は浅黒く、男達はターバンをまき、女達はヴェールを身にまとう。ナルニアの「神」的存在はキリストのメタファであるライオンのアスランであるが、カロールメンの神は「タシ」、その首都は「タシバーン」である。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 登場人物
- シャスタ:漁師に育てられた色白の拾われっ子。実はアーケン国の王子コル。嬰児の頃誘拐され漁師に育てられていたが、貴族の奴隷として売られそうなところを逃げ出し、ブレーとともに北方のナルニアへ向かう。
- アラビス・タルキーナ:カロールメン、カラバール地方の領主キドラシ・タルカーンの娘(タルカーンは貴族の称号、タルキーナは女性形)。政略結婚を嫌い家出してきたところ、シャスタたちに出会う。
- “ブレー”ブレーヒー・ヒニイ・ブリニー・フーヒー・ハーハ:ナルニア出身のものを言う牡馬。ちょっと自惚れ屋。シャスタとともに旅をする。
- フイン:ナルニア出身のものを言う牝馬。心優しく引っ込み思案。アラビスとともに旅をする。
- ティスロック:カロールメンの王。
- ラバダシ:カロールメンの王子。ティスロックの息子。ナルニアのスーザン女王に求婚するも振られ、独断でナルニア侵攻とスーザン誘拐を決意する。
- アホーシタ・タルカーン:ティスロック王の重臣。アラビスの許婚。
- ペベンシーきょうだい
- ピーター:ナルニアの一の王(High King)。最年長。
- スーザン:ナルニアの女王。自ら戦の場で弓を引くことは無いとされる。
- エドマンド:ナルニアの王。正義王。
- ルーシィ:ナルニアの女王。朗らかなたのもしの君。
- アスラン:ライオン、「大帝の息子」でナルニアの創造主、「王の王」。共に歩む者、救い主としての存在はキリストのメタファ。
[編集] あらすじ
カロールメンの漁師に拾われて育てられたシャスタ少年は、育ての親が自分を貴族に売り渡そうとしているのを知るが、貴族の乗馬ブレーは少年に一緒に逃げようと誘う。ブレーは、実はナルニアのものを言う馬で子馬時代にナルニアからさらわれて来ていたのだった。馬と少年はその場から逃げ出し、ナルニアを目指す。最初は馬に乗ったことも無かったシャスタだったが、ブレーの指導によりすぐに上手に乗れるようになる。
ブレーとシャスタは途中で、ものを言う馬フインに乗った少女アラビスと道連れになる。アラビスは意に染まない貴族アホーシタ・タルカーンと結婚させられるのを嫌って死のうとしたが、同じくナルニア出身の乗馬フインに説き伏せられてナルニアを目指していたのだった。カロールメンの都タシバーンを通り抜ける際、カロールメンの王子ラバダシがスーザン女王に求婚して振られた報復にナルニアに攻め入るつもりである事を知り、2頭と二人はナルニアに危機が迫っていることを伝えようと砂漠の道を北へ急ぐ。その二人と二頭の背後にライオンの影が迫る。
[編集] 図書
- 『馬と少年』ナルニア国ものがたり (5) C.S.ルイス(著), ポーリン・べインズ (イラスト), 瀬田 貞二(翻訳) 岩波書店
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