ナルニア国ものがたり
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『ナルニア国ものがたり』(ナルニアこくものがたり)は、イギリスのクリスチャン作家C・S・ルイスによるファンタジー児童文学。英語ではThe Chronicles of Narnia(日本語に直訳すれば、「ナルニア国年代記」)、映画版・岩波書店カラー新版ほかでは『ナルニア国物語』。
目次 |
[編集] 概要
ナルニア国の誕生から滅亡までを描く全7作のシリーズとして、1950年から1956年にかけて出版され、これまでに全世界で8500万部発行されている。『指輪物語』『ゲド戦記』シリーズ等と合わせ、世界三大ファンタジーの一つと言う人もいる(三大**の例にもれず、基準が明確でないので、人により選択は異なる)。
作品は、人間やフォーン、ドリアード、ナイアード、セントール、巨人、そしてものいうけものたちといった、お話の中でしか存在しない生き物たちが住む平行世界ナルニア国(とその隣国であるアーケン国やカロールメン)に、イギリスの少年少女が否応なく魔法の力で引き込まれ、冒険し、最後に現実世界にもどってくる、というものである(例外もある)。 なお、主人公は各巻で共通ではない(共通する話もある)。
最初に執筆された巻『ライオンと魔女』は、友人の娘であるルーシィ・バーフィールドに捧げられている。 ルイスは、当初『ライオンと魔女』の続編を書くつもりはなかったが、出版社や読者の要望を受けてシリーズ化したと言われている。
1957年に、『さいごの戦い』でイギリスで最も権威のある児童文学賞のカーネギー賞を受賞している。
なお、挿絵は全巻ポーリン・ベインズが描いている。
出版順 | 時系列順 |
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現在は作者の希望に添って、時系列順に扱われることが多い。
[編集] シリーズと宗教的背景
冒頭に、C・S・ルイスをクリスチャン作家と書いたのは、宗教者としての書籍を多くものしているからだけではなく、本作品そのものが聖書の物語を下敷きにして書かれているからである。大帝の息子アスランは人間の子供が犯した裏切りという罪をあがなうため、身代わりとして処刑されるが復活する(『ライオンと魔女』)。また、アスランとはライオンという意味のトルコ語であり、ユダヤの獅子、すなわちイエス・キリストを示唆している、とする説が有力。悪徳がはびこる世界には最後の日が訪れ、消滅する(『さいごの戦い』)。
しかし、このような宗教的な背景は、教訓臭さなどによって、仮にも作品の価値を損ねることにはまったくなってはいない。また逆に宗教的背景を全く知らなくても、作品理解に支障は起こらない。 読者は、魅力的で個性的な登場人物たち(アナグマ夫妻(ライオンと魔女)、沼人泥足にがえもん(銀のいす)、ねずみの族長リーピ・チープ(朝びらき丸東の海へ)、ユニコーンたから石と最後の王チリアン(さいごの戦い))の活躍と勇気、友情に、またその舞台設定(死に水島(朝びらき丸東の海へ)、タシバーン(馬と少年)、世界の果ての山脈や地底の海(銀のいす))などにたちまち心を奪われ、宗教的要素に気にすることなく、童心にかえってこの世界を楽しめるだろう。
参考 : ナルニア物語と聖書、伝説、歴史との対比(一例)
- カロールメン ・・・オスマン帝国(現トルコ他)、アラブ
- 航海王カスピアン ・・・エンリケ航海王子
- 石舞台 ・・・ゴルゴダの丘
- 石包丁 ・・・ロンギヌスの槍
- タシ ・・・邪神、偶像
- 時の翁 ・・・北欧神話の時の翁
- 石畳の橋、道路、建築 ・・・古代ローマの建築
- 石造りの遺跡 ・・・ストーンヘンジ
- 北方の荒地国 ・・・スコットランド
- 門により選別 ・・・最後の審判
- カスピアン王子の角笛 ・・・スーザンの角笛
- 森に隠れての闘争 ・・・ロビン・フッド、ウィリアム・ウォレス(ブレイブハート)
- テルマール人 ・・・ノルマン人
- 銀のいす ・・・人間の原罪
[編集] 翻訳
瀬田貞二氏によるユニークで親しみやすい訳は、本書の日本での人気に大いに貢献している。原書と読み比べてみると、彼の見事な翻訳に魅了されることだろう。
- Dawn Treader = 朝びらき丸
- Before you say Jack Robinson = 竹屋の竹右衛門という前に
- Puddleglum = 泥足にがえもん
[編集] 映画化
一作目ライオンと魔女を、ウォルデン・メディア制作、ディズニー製作・配給、日本配給:ブエナビスタ・インターナショナルジャパン、ニュージーランドロケで実写映画として製作し、日本公開2006年3月4日公開。アカデミー賞メイクアップ賞受賞作品。監督は「シュレック」のアンドリュー・アダムソン(w:Andrew Adamson)。
二作目カスピアン王子のつのぶえを、前作同様の制作会社・メンバーで、アメリカ2007年12月、日本2008年春に公開予定だったが、諸事情で、半年ほど延期のよう。また、この作品と、その後の朝びらき丸 東の海へと、銀のいすとあわせて、三部作として制作する予定もある。
- 各々の詳細は各個別記事を参照のこと。