魔改造
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魔改造(まかいぞう)は、市販の美少女フィギュア、主にガレージキット (GK) やガシャポン・食玩の服を削り取り、裸もしくはそれに近い状態にエロチックに改造すること。基本的には裸に加工されるが、逆に衣服を着せる改造[1]が施されることもある。
魔改造は GKフィギュアの歴史の暗部ではあるが、GK業界、フィギュア業界が現在のような発展を遂げた原動力に魔改造があったことは否定できない。
シンナー等で衣服にあたる部分の塗装を剥がす程度の簡単な改造から、フルスクラッチに近い改造までその手法は多岐にわたる。レジンキャスト製フィギュアにヤスリやパテを使用して改造を施す場合と、PVC製フィギュアから溶剤を使って塗装をはがす場合に大別される。
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[編集] 歴史
歴史は古く、1980年代に『うる星やつら』や『ミンキーモモ』といった美少女をモチーフとしたフィギュアの市販がされるようになったのと同時期に発生したと考えられる。実際、当時出ていた小中学生向けのプラモ改造入門書の中には、うる星やつらのプラモデルの改造例として「ビキニにやすりをかけて裸にしちゃおう!」といった記事を載せているものすら存在した。
魔改造は綿々とモデラーのリビドーの赴く限り造られてきたが、完全に個人の趣味の範疇にあり、それを公の場で公開・販売すると言った動きは見られなかった。 [2]
2001年前後に魔改造をほどこしたフィギュアがヤフーオークションに出品され、高値で落札されたためにモデラーに注目され、一般化した。 [3]
同じころ、2ちゃんねる模型板のヤフーオークションスレッドから魔改造専門のスレッド(「みんなで御魔改造」)が派生し、活動が活発化する。 このスレッドの常連だったハンドルネーム 『裸族』がスレッドの常連らの後押しで魔改造HPを作成。その中でコンスタンスに作品を発表する一方、魔改造勝負や魔改造コンペを開催するなど魔改造シーンの盛況に一役買っている。特にメディアワークス刊「フィギュアマニアックス」誌に掲載されている「魔改造への招待」では、著作権者の許可を取った上でフィギュアに魔改造を施すという快挙を成し遂げている。その後、2007年3月25日放送の「中井正広のブラックバラエティ」では著作権者の許可を取った上、公共の電波で魔改造の模様が放送されるという事態が発生した。なお、それにより『裸族』のWebサイト『裸族電網空間』にアクセスが集中し、一時ダウンする事態となっている。
尚、ガレージキットメーカーが次々とPVC製完成品へと主流商品を変更していく[4]のに伴い、レジンキャストキットの改造例が徐々に減少し、PVC製完成品を改造する例が急激に増加する傾向にある。
[編集] 影響
魔改造の食玩・ガレージキットメーカーへの影響は計り知れない。 魔改造の認知度が高まるにつれ、「魔改造しやすいように作りました」と(裏で)公言するメーカーや、魔改造は認めていないもののあえて服を別パーツで制作し、本体に接着してから販売するメーカーが現れた。 [5]
また、魔改造が普及するにつれ、違法コピーされたガレージキットを改造してヤフーオークション等で販売する業者が激増してしまうという悪影響も及ぼしている。
[編集] 道具
基本工作が、服を削るという行為だった事もあり、スピンヤスリや芸人サンダーといった「削る」ための自作工具に魔改造コミュニティが飛びつき、業界に広まった。
- スピンヤスリ:
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- ガレージキットディーラー「うさPハウス」主宰の相田和与が考案。電動歯ブラシの先に紙やすりを接着した新しい概念のサンディングツール。2003年5月にエビス堂のホームページ上で紹介された。(ただし正確には、相田氏は初考案者ではなく初発表をした人物。安価な電動歯ブラシが登場してすぐ、個人レベルで広く使用されている。)
- 芸人サンダー:
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- 複製をはじめとするガレージキットの様々な技術を紹介するサイト「エビス堂」芸人の考案。パイプを固定する金具に紙やすりを装着した物。曲面へのヤスリがけに威力を発揮する。(こちらも模型界全般で見れば古くからある手法であるため、正確には考案ではなく発表である。)
また、PVC製完成品フィギュアが一般化するにつれ、改造後に塗装するのではなく、調色したパテを使用するという作例が雑誌媒体やヤフーオークションに登場するようになった。(PVCで成形された肌の透明感が塗装で損なわれてしまうのを極力避けるためだと思われる)
[編集] 語源
「魔改造」の語源はマンガ『プラモ狂四郎』の劇中、薩摩模型同人会・南郷快山が使った飛行機のプラモが変形・合体してロボットになる改造術(実はタイマーを仕込んだインチキ)であり、フィギュアを裸に剥くこととは一切関わりがない。
2001年時点では「魔改造」「淫改造」という呼び名が二分していたが2ちゃんねるの「魔改造スレッド」によって「淫改造」という言葉は廃れ、「魔改造」が定着した。ただし、2ちゃんねるに最初に立ったスレッドでは「御魔改造」という表現が用いられ、プラモ狂四郎における「魔改造」とは区別されていた。ちなみに「2ちゃんねるの魔改造スレッド」は代々、某有名原型師がスレッドを立てている。
[編集] 転用
「魔改造」が転じて、本質が変わってしまうほどの改造を「魔改造」と呼ぶ事がある。
例として、日本のF-2 (支援戦闘機)は米国のF-16 (戦闘機)をベースとして、大幅な改造を施した機体とも言える。これを「F-2は、F-16を魔改造した」と一部の人は言う事がある。 また、湖沼マニア、釣りマニアの間では、湖沼の干拓や外来種の放流に対してこの言葉を濫用する傾向も見られる。
[編集] 関連書籍
- 魔改造への招待 ISBN 4840232989
[編集] 外部リンク
- 裸族電網空間
- スピンやすり 統合ページ
- ヱビス堂(スピンやすりおよび芸人サンダーの解説あり)
[編集] 注釈
- ^ 仮面ライダーカブトの劇中用語を流用し、「プットオン」と呼ぶことがある。尚、反意語の「キャストオフ」も脱衣の別名として流用されることがあるが、こちらは改造に頼らず、元々の製品状態で衣服を脱がすことが可能な場合に使用されるのが主である。
- ^ フィギュアを販売したメーカーや、原型師が改造に不快感を示すことがあるため、一種のマナーとして公の場での公開を控える傾向があった。
- ^ フィギュアの改造は、個人で楽しむ場合には問題がないが、業として改造品の販売を行った場合は商標権の侵害にあたり、処罰の対象となる危険性がある。ヤフーオークション等を利用した改造フィギュアの販売は、個人間の取引としてお目こぼしされているのが現状である。
- ^ PVC完成品フィギュアは当初、既存のレジンキャストキットをベースにする、またはレジンキャストキットを先行で発売したのち完成品を発売するという形態が主流であったが、徐々に完成品にみの販売でキットは販売しないという形態に推移していった。また、キットが存在しても個人ディーラーによるイベント限定品である場合がほとんどとなっている。
- ^ スカートをはいたフィギュアの場合、下半身の構造が複雑になってしまい型を作りにくいことから、(衣服を着用した)上半身・下半身・スカートの3パーツに分割して成形し、張り合わせることは以前から行われていた。魔改造が認知されるにつれ、一体成形したボディに、別に作成した衣装を張り合わせる、一種の着せ替え人形のような構造のフィギュアが散見されるようになった。