食玩
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食玩(しょくがん)は食品玩具の略。「おまけ」として玩具を添付した食品の商品様態の総称である。業界用語では玩菓とも言われる。
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[編集] 文化の中の食玩
食品に食品以外の「おまけ」が付属するという状態は、極端に考えれば原始生活に起源を求める事が出来る。原始生活では、獣を狩れば皮が、魚を獲れば骨が、植物を採取すれば種が、食料の付属品として存在していた。
食品玩具とは、高度に加工され「おまけ」を失った現代の食料に、敢えて食料ではない異物を挿入し、自然だった状態を人工的に模した物と考える事も出来る。食物という必要不可欠なものに、不必要な筈の「おまけ」を付けるという行為はある意味、ゆとりの証明でもある。
食料の自然付随物としての「おまけ」ではなく、不純物のない純粋な食料に、敢えて人が異物を混めたという意味での食品玩具の元祖には、以下の文化が該当し、どれも特別な日に複数人で食べる呪術的要素を含んだ食品という共通点を持つ。
- パイ・ガレット フェーブ(fève・本来はソラマメの意だが、この場合は陶器製の模型を指す)を生地に入れておき、切り分けられたパイ、またはガレットにソラマメが入っていた人は1年間幸せになれる、またはその日一日間、それを食べ合った人達の中で王様になれる(フランスブルターニュ地方)
- スコーン 複数のスコーンを作る際、生地の中に硬貨を含ませておき、硬貨の入ったスコーンを当てた人は幸せになれる(ハンガリー)
- クラウディ スープの中に指輪、コイン、おはじきが混ぜてあり、どれを掬うかで一年の運勢が分かる(ハロウィン ケルト地方)
- ウェディングケーキ ケーキの中に一粒だけあるインゲン豆に当たった人は幸せになれる(イギリス)
- 未婚女性が中から指輪を当てると結婚出来る(ブラジル)
- からから煎餅 中に玩具が入った中空の三角形の煎餅(江戸時代 庄内・鶴岡地方)
- 辻占菓子 中に占紙が入った団子、餅、煎餅(江戸時代の正月 北陸・中越地方)
- フォーチュン・クッキー 運勢、格言が書かれた紙の入ったクッキー。辻占煎餅をクッキーに変えたもの(1915年 アメリカ・パナマ万国博覧会)
[編集] 日本食玩史
- 1690年(元禄3年)以降 庶民の旅行が難しかった時代、日本中を旅する富山の薬売りは、顧客に各地の情報、名産品等を薬のおまけとして提供していた。特に江戸時代後期から明治時代にかけての売薬版画は有名。子供には紙風船等の玩具も提供していた。
- 1899年(明治32年) 村井兄弟商会のタバコにタバコカード(トランプ花札、軍人の写真、西洋の女性画のカード)が付き始める。アメリカのタバコ販促を真似たもので、これが日本の商業食玩の実質的な始祖となる。子供がカード目当てにタバコを吸う事が問題視され、翌年未成年者喫煙禁止法が成立。
- 1927年(昭和2年) 江崎グリコのグリコにカードが付き始める。タバコカードを基にした販促手法で、本製品から近代商業食品玩具が始まる。
- 1952年 カバヤ食品のカバヤキャラメルに点数カードが付き始める。点数カードを集めて応募すると、童話の絵本(カバヤ文庫)が貰えるというもので、1954年まで実施。
- 1964年3月 明治製菓のマーブルチョコレートに、鉄腕アトムのシールが付き始める。キャラクターをおまけにした初めての食玩で、これ以降TVキャラクターの食玩化が激化する[1][2]。
- 1967年2月 森永製菓のチョコボールが発売される。ランダムに付属するマークを集めて応募すると「まんがのカンヅメ」なる景品が貰える。これまでの食玩は既存の菓子に販促として後からおまけを付けるという売り方であったが、本製品は初めからおまけを付属させる売り方をした初めての食玩である。
- 1971年12月 カルビー製菓の仮面ライダースナックが発売される。仮面ライダーの名場面カードが付属する。子供達の間で大流行になり、おまけ目当てに食品本体が捨てられるという問題が登場した。
- 1973年 カルビー製菓のプロ野球スナックが発売される。仮面ライダースナックの人気を受けたもので、プロ野球選手のカードが付属する。
- 1977年 ロッテのどっきりシールが発売される。いたずらシールが付属する。本製品は人気の出ないまま終了するが、10回目の改変を経てビックリマン 悪魔VS天使シールが誕生する。
- 1978年4月 カバヤ食品のビッグワンガムが発売される。プラスチックモデルが付属する。ブラインド式ではなく、中身が分かる小窓が付いている。カバヤ食品の食玩は、この小窓が付く種類が主流となる。
- 1985年 ロッテのビックリマン 悪魔VS天使シールが発売される。オリジナルキャラクターのシールが付属する。ロッチに代表される類似商品の乱発、子供達の間でのシールの売買、公正取引委員会の介入等様々な問題を生んだ。また、今まで漫画やアニメをおまけの原作として来た食玩が、逆に漫画やアニメの原作の立場になった初めての食玩でもある。本製品の成功を受けて、駄洒落交じりのシールをおまけにした食玩が続々と誕生する。
- 1985年2月2日 雪印食品の電撃戦隊チェンジマンソーセージが発売される。電撃戦隊チェンジマンの人形が付属する。本製品以降、スーパー戦隊シリーズをおまけにしたソーセージ、カレー、ふりかけが発売され続けていく。
- 1985年3月15日 丸大食品の巨獣特捜ジャスピオンソーセージが発売される。巨獣特捜ジャスピオンのカードが付属する。これ以降、スーパー戦隊シリーズ以外の特撮をおまけにした食品が発売され続けていく。
- 1992年 カルビー製菓のJリーグチップスが発売される。プロ野球スナックのサッカー版で、サッカー選手のカードが付属する。袋の外側に貼り付けられたカードが盗まれる事件が多発した為、一部店舗では予めカードを外し、会計時に店員が客に手渡すという対策が講じられた。
- 1997年 カンロからキンダーサプライズが販売される。卵形チョコレートの中に玩具が入っている。イタリアのフェレロ社から日本フェレロ社が輸入した製品で、日本での販売は2度目。2年後に始まるチョコエッグの流行の先達となる。
- 1999年8月23日 サントリーのペプシコーラにスターウォーズのボトルキャップが付き始める。ボトルキャップをおまけにした初めての食玩で、本製品以降ボトルキャップのおまけが続々と発売される。
- 1999年9月 フルタ製菓のチョコエッグ 日本の動物シリーズが発売される。キンダーサプライズ同様、卵形チョコレートの中に玩具が入っている。企画段階から実力のある模型メーカーが参加した事に由る造形の質の高さだけでなく、TVキャラクターの様な流行り廃りがない点やシークレットアイテム(後述「コレクション性」を参照)の混入が功を奏し、大人をも巻き込んだ社会現象を生んだ。業界の拡大、質の高水準化、主力購買層の高年齢化等、食玩・フィギュア業界に与えた影響は大きい。
- 2005年3月14日 バンダイの神羅万象チョコが発売される。ビックリマン 悪魔VS天使シール同様、オリジナルキャラクターのカードが付属する。玩具会社の食玩としては、主におたく層からの高い支持を得た。
- 2005年9月 公正取引委員会がサントリーのペプシコーラに付属する機動戦士ガンダムSEEDのボトルキャップに就いて、景品ではなく懸賞品に当たり、またボトルキャップは懸賞金の上限価格を超えると警告。これを受けてサントリーはボトルキャップが入っている袋を透明な物に変更し、懸賞品ではなく景品扱いとなるようにした。また公正取引委員会は全国清涼飲料工業会にも、同様の販売手法を取らないよう要請した[3][4]。
[編集] 詳細
[編集] 食玩の種類
おまけは、初期の頃は独楽やおはじき等の簡単な玩具が殆どであったが、現在ではフィギュアを筆頭に、メダル、シール、カード、バッジ、ブロマイド、絵本、漫画、縮小雑誌、パズル、ジグソーパズル、プラスチックモデル、ミニカー、鉄道模型、レゴブロック、ムービーカメラ、景品の引換券、オンラインゲームの暗証番号、ゲームCD、音楽CD、映画やアイドルのDVD、文房具、消しゴム、化粧道具、鞄、財布、鉱物、栽培床、疑似餌、知恵の輪、縫い包み、指人形、根付、キーホルダー、ストラップ、ボトルキャップ等多様を極めている。
また、おまけの付く本体も、チョコエッグの成功以降は菓子だけではなく、食品以外の入浴剤(浴玩(よくがん))、雑誌、漫画の単行本、アニメのDVD、アニメのCD等に食玩同様の販売手法が取り入れられて広まっている。
[編集] 食品の扱い
グリコキャラメル以降45年間、日本の食品玩具とはあくまでも食品が主体であり、玩具は完全なおまけであった。しかし、仮面ライダースナックの爆発的な人気は、本体とおまけの主従を逆転させ、おまけさえ手にすれば食品は食べずに捨てる、という矛盾した事態を引き起こし、社会的に問題視された。これ以降も、食品玩具の過剰な人気は食品の処分という問題を度々発生させる事になる。
殆どの食品玩具は、食品の流通経路で販売する事を目的に、数粒のラムネ、ガム、飴、グミ等を形式的に添えているだけだが、この商品構成は、食品の処分問題を避けるという副次的な効能も備えている。チョコレートが本体のチョコエッグの場合には、『チョコエッグ料理』と呼ばれるチョコレートの料理法まで考案された。
近年の食玩の殆どは「菓子がおまけ」と言って然るべき商品構成で、遂には食品を省いたただの小さな箱入り玩具(トレーディングフィギュア)までもが登場し、食玩と同じ棚で売られるようになった。その一方で、通常、食品を取り扱う事のない模型店や玩具屋等でも未開封の食玩が普通に売られるようになり、杜撰な温度・衛生管理による食品の劣化・変質(チョコレートの場合は30℃以上の高温で劣化する)が問題視されている。また、既に賞味期限の切れた未開封商品を「おまけ」目的で購入する人の為に"食べられない"と断った上で安価に提供している店も存在する。
[編集] コレクション性
ブラインド式の商品はコレクション性を高める目的で、封入率が低いアイテムがある。これをレアと言う。またアイテム一覧表に公開されていないアイテムもあり、こちらはシークレットと言う(シークレットを始めたのはチョコエッグである)。 レアやシークレットが当たる確率は、商品によっては1%以下という事もあって一般的に人気が高く、インターネットオークション等でも高値で取引されている。後述の「サーチ」によってレアやシークレットを大量に入手し、インターネットオークションで売り捌くという事例も見られている。
また、1990年代中頃まではフィギュアは塗装が施されていない、または数色が塗装されているだけの物が殆どであったが、1994年9月22日に発売されたガシャポン、ガシャポンHGシリーズ以降は、塗装が施されている物が普通になった。だが質が向上した反面、塗装という手間と費用のかかる工程を調整する目的で、モノクロ、セピア調といった単調な塗装の物・金属色等の単一の色で塗装された物・無塗装の物・クリア成型の物等がラインアップに含まれる商品もある。こういった単色品は購買者からは「ハズレ」として扱われるのみならず、結果的に特定商品の希少性をますます押し上げてしまっている(余談だが、これらの生産行程は中国で主に行われているが、人件費の上昇に伴い、近年これらのフィギュアの塗装の質は総じて最盛期よりも低質化している)。 更に、「地域限定(特定地域での先行発売もある)」、「期間限定(通常1~2週間程度)」、「コンビニエンスストア限定(特定系列のコンビニエンスストアでしか扱われない事例も珍しくない)」、「誌上通販限定」、「イベント限定」等販売形態自体が限定された商品は入手出来ない者も多く、コレクションの困難さに拍車をかけている。
コレクションが困難なシリーズほど、所謂「ダブリ」が多く出る事になる為、ダブリを有効に利用しながら効率良く蒐集する目的で、雑誌やインターネットの掲示板を利用した交換が盛んに行なわれている。更に蒐集家の大人がその経済力に物を言わせ、レアやシークレットをより確実に入手する為に、数十個が入ったダンボール毎商品を購入する大人買い・箱買いも珍しい事ではなくなってきた。
[編集] サーチ
ブラインド式の商品には同じ内容物が重複してしまうという問題が付き物だが、コレクターはこの問題を避ける為に、目的の内容物を商品を開封せずに当てるという「サーチ行為」を発明した。
- 箱の重量感、振った時の音、潰した時の感触等で内容物の種類を予測する
- 箱を少し破って中を直接覗く
- 外装の印刷に差があるもの、大箱の中の特定の位置のものだけを選択する
という方法がある。
チョコボールのエンゼル当てから誕生し、チョコエッグやデュエルモンスターズ・ガンダムコレクション等で広まったこの行為は、商品が外装中身共に破損して売り物にならなくなる、情報を知っている人間のみが半ば不当な手段によってレアやシークレットを大量に入手してしまう等の問題を生じさせた為、サーチ行為を禁止している店が少なくない。
- 大箱のみでの販売によるバラ売りの中止
- 商品を店員の監視の効くレジ前に置く
- 値札付けの名目で全ての大箱を一旦開封して商品の順番を入れ替えてから販売する
等の対応を行なう事もある。逆に心無い店舗では、この行為で予め希少品を見付け出してネットオークションにて高値で販売、残り物を店舗で販売する、という販売方法を取っている事もある。
一部の食玩会社はサーチ対策として
- 箱の糊付けを頑丈にする
- 内容物を包む袋を黒色にして箱を破っても中身が見えないようにする
- どの内容物も重さを同じにする為の調節重りを入れる
等の手段を講じている。
[編集] 関連項目
[編集] 代表的な食玩シリーズ
- グリコ・タイムスリップグリコ
- 仮面ライダースナック
- ビッグワンガム
- ビックリマン
- チョコエッグ・チョコQ
- リーメント ぷちサンプルシリーズ