麻生俊平
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麻生 俊平(あそう しゅんぺい)は日本の小説家。早稲田大学第一文学部文芸専修卒業。ライトノベル系のファンタジー・SF作品を主に執筆している。 ハードボイルド調の文体で、時代を敏感に感じ取り社会批判などを織り交ぜつつも、若年層を対象にしたライトノベルとして重くなりすぎないバランス感覚のある小説が特徴。
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[編集] 経歴
第2回ファンタジア長編小説大賞に応募した、SF風の世界観をもった『ポートタウン・ブルース』で小林めぐみの『ねこたま』とともに準入選を果たし、同作品により富士見ファンタジア文庫より小説家デビューする。 このコンテストでは第4回まで大賞受賞者はなく準入選が最高であり、第1回には『スレイヤーズ』シリーズの神坂一、第3回には『魔術士オーフェン』の秋田禎信などのそうそうたるメンバーが準入選を果たしている。 二作目となる『ザンヤルマの剣士』は、まず短編として『月刊ドラゴンマガジン』の1992年8月号で短編が発表され、後に長編が発売された。 さらに富士見ファンタジア文庫で『ミュートスノート戦記』『VS-ヴァーサス-』などのシリーズ長編を発表する傍ら、角川スニーカー文庫でも作品を数冊発表している。
[編集] 主な作品
[編集] 『ザンヤルマの剣士』シリーズ
舞台は20世紀末の日本、裏次郎と名乗る謎の中年男性から波型の鞘に収められた短剣を受け取った主人公。 その日から主人公の周りで不可思議な事件が頻発する。 『新世紀エヴァンゲリオン』に先駆け、内向的な主人公をはじめ、登場人物の心の闇を描くなどの先見性が見える作品。 特に、第3巻である『オーキスの救世主』においては、自己実現セミナー、オーキスムーブメントで主人公が洗脳されるという衝撃の展開を見せている。 この作品は1994年6月の松本サリン事件直後の8月発売であり、地下鉄サリン事件でオウム真理教や自己啓発セミナーなどの宗教カルトや教育カルトが世間の注目を浴びる前というタイムリーな時期に発売されている。
挿絵は弘司。挿絵が売り上げにおいて重要な比率を占めるといわれるライトノベルにおいて、読者の心を掴む萌え要素がありながらファンタジーとしての独特の色彩を失わない弘司の絵柄はこの作品の世界観にうまくあっていたといえる。 その為か、シリーズは長編9冊、『ドラゴンマガジン』に連載された短編を集めた外伝が1冊の計10冊が発売される人気シリーズとなった。 このシリーズをはじめとした麻生俊平の作品は他のファタジア文庫にくらべてページ数が多いことでも知られており、最終巻となる『イェマドの後継者』においては500ページをオーバーし通常の作品の二倍近い分量を誇っている。
小説家乙一が本作の大ファンであることを公言している。
[編集] 主要な登場人物
- 矢神遼 - ザンヤルマの剣を手に入れたことから古代文明の遺産をめぐる暗闘・事件に巻き込まれる。内向的だが意志は強い。
- 朝霞万理絵 - 主人公の幼馴染である従妹。サバイバル技術を身につけている。世話焼きで大人びた冷静な性格。
- 裏次郎 - 経歴不明の謎の人物。人々に「遺産」を提供し、破滅していく様を観察する。黒服と無骨な彫像めいた容貌が印象的。
- 江間水緒美 - 近隣で骨董品屋を経営する美女。裏次郎の知人らしい。
- 氷澄丈太郎 - 主人公が在籍する高校で歴史を担当する非常勤講師。端正にして冷ややかな表情と言動。剣を手に入れた遼に敵対するが……。
[編集] 『ミュートスノート戦記』シリーズ
挿絵は七瀬葵。 現代を舞台にしたファンタジー小説でありながら、特撮物、特に『仮面ライダー』の要素を取り入れている異色作。 巨大組織と個人の闘争を描く。
[編集] 主要な登場人物
- 穂村響 - 主人公。突発的な事故により生物兵器となり、巨大組織ZAMZAと戦うことになる。
- 滝沢聖也 - 怜悧な頭脳を持つ高校生。主人公とともに事件に巻き込まれ命を狙われることになる。主人公をたすけるアドバイザーとしての役割を担う。
- スカーレット - 赤毛であることから学校でも浮いた存在の少女。主人公とともに事件に巻き込まれ命を狙われることになる。
- 楠見麻由子 - 車椅子に乗った長髪の美少女。
- エム・ダッシュ - ディーシーとも呼ばれる、楠見麻由子と瓜二つの短髪の美少女。謎の男たちに狙われている。
[編集] 『VS-ヴァーサス-』シリーズ
『ミュートスノート戦記』のカウンターとも言うべき作品。 個人対組織の抗争を描いた『ミュートスノート戦記』に対して組織に属してテロリズムと戦う主人公を描く。 「ネオ・ヒロイック・ポリスアクション」なるキャッチフレーズがつけられている。 挿絵は硝音あや。
[編集] 主要な登場人物
[編集] 『無理は承知で私立探偵(ハードボイルド)』シリーズ
角川スニーカー文庫のシリーズ作品。 コメディ調ではあるが、ハードボイルド小説へのオマージュがちりばめられている。 2巻のあとがきに対して読者から批判の手紙がとどき、3巻で謝罪を行っている。 同時期、富士見ファンタジア文庫において『ミュートスノート戦記』シリーズが最終巻発売を控えた。 挿絵は中北晃二。
[編集] 主要な登場人物
- 山田太一郎 - 主人公。アクアスキュータムのコートと帽子を身につけたオーソドックスなハードボイルドの探偵スタイルで七篠高校内の空き教室に事務所を構える高校生。
- 小林由理奈 - 主人公の探偵事務所の押し掛け助手、秘書。バリツを通信講座で習っている。アガサ・クリスティやコナン・ドイルなどの探偵小説マニア。
- 成田美沙 - 主人公の幼馴染。風紀委員長で授業にも出ない主人公を心配する。
- 鳳美蘭 - 七篠高校映画研究会所属の長身の美女。
[編集] そのほかの作品
- 『ポートタウン・ブルース』
SF風の世界観で地球外の惑星を舞台に展開されるハードボイルド探偵小説。 挿絵は中村亮。
- 『日本全国美少女紀行 めもりあるロマンス』
『ドラゴンマガジン』誌上で連載。 萌え作品を目指して書かれたものだと思われる、単行本化はされていない。 挿絵は若月神無。
- 『薔薇の復讐』
挿絵はうめつゆきのり。
- 『若葉色の訪問者』
挿絵は橋本正枝。
- 『突撃 お宝発掘部』
挿絵は別天荒人。
- 『つばさ』
挿絵は藤田香。