ARPANET
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ARPANET(アーパネット、英語ではARPANETと表記されることが多い)は、1969年に始まる、アメリカ国防総省の高等研究計画局(Advanced Research Project Agency:略称ARPA)の指揮・統制の行動科学研究部門IPTO(Information Processing Techniques Office)による指揮の下構築された研究、調査用コンピュータネットワークである。今日のインターネットの原型として知られている。
1960年代前半にアメリカ空軍のシンクタンクであるランド研究所のポール・バランによって描かれた、分散型・パケット交換方式によるネットワークが提唱された。(Paul Baran On Distributed Communication 1964)バランはこの中で、このように特定の中心を持たないネットワークは敵国(当時の想定ではソビエト連邦)による核攻撃などがあった際にも、攻撃によって破損した箇所を迂回して通信を継続できるとしている。ARPANETはこの通信方式を流用している。このため、ARPANETの目的が核攻撃下に耐えうるネットワークの構築であると誤解される場合がある。1994年7月にはアメリカの雑誌タイムで、この説が取り上げられたため、[1]一般にも流布することになった。これに対して、ARPANET構築時のIPTO部長であるロバート・テイラーは事実とは異なる旨、正式な抗議をタイム誌に対して行っている。実際には各種通信障害への耐久性が他の通信方式に比べてより高い程度に過ぎない。
発足当時のノードはUCLA、UCサンタバーバラ、スタンフォード研究所 (SRI)、ユタ大学、の4箇所であった。発足当初のメンバーには以後のネットワークの歴史や文化に大きな影響を与えることになるジョン・ポステルやヴィント・サーフが含まれていた。
また、このネットワークは1980年代初頭に、資金提供を行っていた国防省側の方針でTCP/IPのみによる通信に切り替えることになり、今日のインターネットにおけるTCP/IPの使用にとって決定的な条件のひとつを作ったと考えられている。
基本的に国防省の研究プロジェクトの受託先だけを接続するネットワークであったアーパネットは1980年代に再編され、セキュリティー上の理由から一部は国防関連の専用ネットワークとなり、残りはNSFネットなどに受け継がれ、後のインターネットになった。
[編集] 参考文献
- ^ "BATTLE FOR THE SOUL OF THE INTERNET". TIME, 1994年7月25日。