MEKO型フリゲート
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MEKO型フリゲートは、ドイツのブローム・ウント・フォス社(Blohm + Voss GmbH)によって設計された軍艦ファミリー。
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[編集] 概要
MEKOとはMEhrzweek-fregatten KOnzept(多用途フリゲート・コンセプト)の略語で、兵器や電子機器、その他の装備品をモジュールとしてまとめることによって保守整備の手間やコストなどを低減するコンセプトのことである。基本となる船体がまず設計され、そこに兵装や電子機器のモジュールをはめこんでいくことによって、顧客の希望に応じた艦を比較的安価に入手できる上、モジュールを取り替えることで簡単に改装できる。元々は輸出用として設計されたが、後にその派生型となる艦が本国ドイツでも採用された。MEKOはその名称で「フリゲート」と銘打っているにもかかわらず、そのラインナップには海洋哨戒艦、多用途支援艦なども含まれており、また運用国によっては駆逐艦あるいはコルベットとも種別される。なお、MEKOはB+V社の登録商標である。
[編集] ヴァリエーション
MEKOファミリーに属する艦にはおおよそ4つの系統がある。
[編集] MEKO 360型,MEKO 200型
第一の系統は、最初に設計された360型、およびその縮小・改良型である200型である。最初に建造された2つのタイプは360型に属するが、船型過大であったために以後の発注は200型に限定され、これが現時点でのMEKO型の最大勢力となる。当初は、360型がおよそ3600トン、200型がおよそ2000トンの排水量を持つということで区別されていたが、200型が大型化し、のちの建造艦では360型とほとんど変わらない大きさになった。中央船楼型の船型とV字型の煙突が外見上の特徴である。
なお、360型の傍系として140型がある。これはその名のとおり基準排水量1400トンの小型フリゲートで、360型をスケールダウンしたような艦である。デッド・スペースの発生が避けられないモジュール設計を適用するには船型過小だったようで、アルゼンチンによって1タイプ(エスポラ級)6隻が建造されたに留まった。
[編集] 123型,124型
第二の系統は、ドイツ海軍の123型,124型フリゲートで、これらは公式にはMEKO型には分類されないものの、しばしばMEKO型の発達型として扱われる。長船首楼型の船型を採用し、外見上はMEKO型との共通点は少ないが、設計面ではMEKO型の影響が色濃く見られる。また、次のA-200型との類似点も認められる。
- 詳細はブランデンブルク級フリゲート、ザクセン級フリゲートを参照
なお、124型フリゲートをベースとしてイージスシステムを搭載したタイプが、次期防空駆逐艦としてオーストラリアに対して提案されたが、採用には至らなかった。
[編集] MEKO A型
第三の系統は、現在の建造の主流であるA型で、A-200型とA-100型に分けられる。
A-200型は従来の200型の後継艦と位置付けられており、ほぼ同大であるが、全くの新設計である。全体に低被探知性を重視して設計されており、長船首楼型の船型を採用し、排気は冷却された上で艦尾より行なわれる。2007年3月現在では、南アフリカによって1タイプ(ヴァラー級)4隻が発注されたに留まっている。
A-100型は140型とほぼ同大の小型フリゲートであるが、より効率的な設計となっている。A-200型よりは従来型の200型に近い外見であることから、単に100型と称されることもある。ドイツ海軍が整備中のK-130型コルベットはこの派生型である。
[編集] MEKO D型,MEKO X型
第四の系統は、A-200型を改良した最新のD型、およびそれをさらに発展させたX型である。
D型は冷戦後の作戦形態に適合した艦とされており、各種電子兵装の搭載による電力消費の増大に対応して、推進方式にはディーゼル電気・ガスタービン複合推進(CODLAG)が採用される。また艦尾には小型高速艇を揚収するハッチを備えるなど、特殊作戦にも対応している。外見上の特徴としては、「D型」という名称の由来となった、デルタ型の船体平面形状がある。これは、従来の設計よりも抗堪性・耐航性に優れ、艦尾側の艦内容積とヘリコプター着艦甲板を拡張できるとされている。また被弾時の冗長性を確保するため、上部構造物は前後2つに分けられる。それらには三面のアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダー(CEA-FAR)およびイルミネーター(CEA-MOUNT)が設置され、戦闘指揮装置とともに、統合された高度な防空システムを構成する。排水量は3500tで、兵装として8セルおよび16セルのMk41 VLS各1基と8発のSSM、ポリフェム・ミサイルの四連装発射器を2基、8セルの個艦防空SAMを2基、近接防御用の機銃を備える。最大速力は28ノットで、航続距離は16ノットで4000海里。主機が使用不能になった場合でも、艦首の旋回式プロペラによって11ノットの速力を得られる。[1]
X型はこのD型をさらに発展させたもので、ネットワーク中心戦に完全に対応し、弾道ミサイル防衛を含むあらゆる戦闘に対処できるとされている。D型ではデータ・リンク装置などのドームは残されていたが、X型では全てのアンテナが平面化される。また対空ミサイルも全て垂直発射化され、96セルの垂直発射装置を備える。
[編集] 運用状況
最初のMEKO型フリゲートは1982年2月に就役したナイジェリアのアラドゥで、以後現在に至るまでに10カ国で48隻が就役中・あるいは就役予定となっている。また、本家であるドイツでは、上記のようにMEKO型フリゲートそのものは使用しないが、準同型のフリゲート2タイプ計7隻が就役中で、さらにコルベット5隻を発注している。
型名 | 級名 | 運用国 | 隻数 | 就役 | 全長 (m) | 全幅 (m) | 吃水 (m) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
MEKO 360 H1 | アラドゥ | ナイジェリア | 1 | 1981 | 125.80 | 15.00 | 4.30 |
MEKO 360 H2 | アルミレンテ・ブラウン | アルゼンチン | 4 | 1983-1984 | 125.80 | 15.00 | 4.30 |
MEKO 140 A16 | エスポラ | アルゼンチン | 6 | 1985-2002 | 91.20 | 11.00 | 3.33 |
MEKO 200 TN | ヤウズ | トルコ | 4 | 1987- | 110.50 | 14.20 | 4.14 |
MEKO 200 PN | ヴァスコ・ダ・ガマ | ポルトガル | 3 | 1991- | 115.90 | 14.80 | 4.10 |
MEKO 200 HN | イドラ | ギリシャ | 4 | -1992 | 117.00 | 14.80 | 4.10 |
F 123 | ブランデンブルク | ドイツ | 4 | 1994-1996 | 138.85 | 16.70 | 4.35 |
MEKO 200 TN II-A | バルバロス | トルコ | 2 | 1995- | 116.70 | 14.80 | 4.10 |
MEKO 200 ANZAC | アンザック | オーストラリア & ニュージーランド |
10 | 1996- | 118.00 | 14.80 | 4.10 |
MEKO 200 TN II-B | サーリヒレイス [2] | トルコ | 2 | 1998- | 118.00 | 14.80 | 4.30 |
F 124 | ザクセン | ドイツ | 3 | 2002- | 143.00 | 17.44 | 4.86 |
MEKO A-200 SAN | ヴァラー | 南アフリカ共和国 | 4 | 2003- | 121.00 | 16.34 | 4.40 |
MEKO 100 RMN | ケダー | マレーシア | 6 | 2004- | 91.10 | 12.85 | 3.40 |
K 130 | ブラウンシュヴァイク | ドイツ | 5 | 2007- | 88.75 | 12.80 | 3.40 |
MEKO A-100 | ギャブロン | ポーランド | 2 (+3) | 95.20 | 13.30 | 3.60 |
[編集] 脚注
- ^ 『Jane's Defence Weekly』2002/10/16号、井上孝司の抄訳による。
- ^ バルバロス級の一部として記述されることもある。バルバロス級に対する主な差異は、短SAMが垂直発射化された点。
[編集] 参考文献
- 「世界のMEKO型フリゲイト 現有全タイプ」『世界の艦船』2002年7月号(通巻第598集)
- 「独B+V社 MEKO型FFの最新バリエーション3案を発表」『世界の艦船』2004年4月号(通巻第624集)
- 青木栄一「MEKO型フリゲイトの生みの親 ブローム・ウント・フォス造船所」『世界の艦船』2002年7月号(通巻第598集)
- 藤木平八郎「第1艦誕生から20年 MEKO型フリゲイトの系譜」『世界の艦船』2002年7月号(通巻第598集)
- 吉原栄一「MEKO型フリゲイトの技術的特徴」『世界の艦船』2002年7月号(通巻第598集)