MIDI
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MIDI(ミディ、Musical Instrument Digital Interface)は、日本のMIDI規格協議会(JMSC、現在の社団法人音楽電子事業協会(AMEI))と米国のMMA (MIDI Manufactureres Association) により制定された、電子楽器の演奏データを機器間でデジタル転送するための規格。物理的なインターフェース、通信プロトコル、データ形式、ファイル形式 (Standard MIDI File, SMF) などからなる。
また、MIDIを搭載した機器(MIDI楽器、MIDI音源)やデスクトップミュージック(DTM)のことを指してMIDIということもある。
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[編集] 概要
MIDIは、複数の電子楽器を、それらが異なるメーカーの製品であっても連動して鳴らすことができるように作られた規格である。MIDIによって送られるのは実際の音ではなく、楽譜に書かれてあるような情報(発音せよ、音の高さは…、音の大きさは…、といった楽器や音源へのメッセージ)の連なりであり、そのデータのサイズはオーディオデータ、つまりマイクなどで録音された実際の音の波形をデジタル化(サンプリング)したものに比べて非常に小さい。しかし、同じ楽譜で演奏をしても、演奏者や楽器が異なると音が違って聴こえるように、MIDIでつながれた先の機器(音源)は取り替えられれば再生音は違ってくる。そのため、例えばインターネットで配布されたSMFをデータ制作者の意図した通りに演奏するためには、制作者の使ったMIDI音源が必要になる。
現在MIDIは音楽制作の現場のみならず通信カラオケ、携帯電話の着信メロディ等で幅広く利用され、電子楽器以外にも劇場の舞台照明のコントロールなどにも応用されている。またMIDI規格の存在とパソコンの普及はホビーとしての音楽制作(DTM)を一般化した。
[編集] 規格
MIDI機器(ハードウェア)は5ピンDINコネクタで接続するのが一般的で、音響用のストレートケーブルではなくクロスケーブルが用いられる。これをMIDIケーブルと呼ぶ。コネクタはMIDI信号を受け取るMIDI-IN、MIDI信号を送信するMIDI-OUT、受信したMIDI信号をそのまま送信するMIDI-THRUの3種類が存在する。各端子の信号はフォトカプラによって一旦光信号に変換される仕様になっており、この段階で信号のロスを生じる。これが原因となり長いケーブルでは通信エラーが発生することもあるため、多数の機材を利用する場合は「MIDIパッチベイ」と呼ばれる信号分岐の機材を使い、信号を安定させる。1本のMIDIケーブルには16パート(基本的に1パートにひとつの楽器が割り当てられる)分のデータを送受信させることができる。それ以上のパート数を制御するためにはMIDIケーブルが複数本必要となり、MIDI音源の対応パート数によってはMIDI音源が複数必要になってくる。
音源を稼動させるために必要な音色の番号配列などのハードウェアに関するデータフォーマットは、General MIDI (GM)という規格で標準化されている。現在はGMレベル2という上位規格もある。GMに先行する規格としてGS(ローランド)があり、またGMをベースに拡張したXG(ヤマハ)などの独自規格もある。GS規格、XG規格ともローランド、ヤマハが独自に提唱した規格であり、基本的には互換性がない。そのため、複数の規格間で意図した演奏を行うためには、GM規格に準拠したMIDIファイル作りを行う必要がある。携帯電話向けには General MIDI Lite(GML)も発表された。また、上記の音源を時間軸に沿って稼動(演奏)させるためのファイル形式(曲のテンポ、音符の情報、ボリューム調整、音程の滑らかな変化(ピッチベンド、エクスプレション)など、楽譜だけでは表現しきれない実際の演奏方法を表記した情報)は、SMF(Standard MIDI File)という形式がデファクトスタンダードとして使用されている。その他、SMFだけでは表現しきれないコントロールを使用したい場合や、シーケンサーなどの多様化したのニーズにあわせたMIDIのファイル形式や、ソフトウエアがある。
データ形式について互換性があれば、コンピュータとの接続インターフェースにはMIDIケーブルではなくRS-232C、USBやmLAN(IEEE1394上の音楽転送規格)などが使われることも多い。また、ハードウェア的なMIDI音源の代わりに、PCM等の音源データをソフトウェア的に加工し、パソコン上のサウンドボード(オンボードでも)でMIDIファイルの再生を可能にしたソフトウェアMIDI音源も開発された。 しかしながら、同時発音数や音質がCPUの性能に依存するなど、ソフトウェアMIDI音源発売当初はリアルタイム演奏には不向きであった。
現在、ソフトウェアベースの音源を十分に処理できるほどの性能をパソコンが持ったことと、MP3等の圧縮音源の普及により、一般ユーザーではDTM愛好家以外のハードウェアベースのMIDI音源の使用は著しく減少している。
ローランドからの音素データの提供によりマイクロソフトが開発した Microsoft GS Wavetable SW Synth がMicrosoft Windows 2000以降のWindowsに搭載されており、最も普及しているソフトウェアMIDI音源となっている。
MIDIの正式な規格は以下のJISで規定されている。
- X 6054-1 電子楽器デジタルインタフェース(MIDI)-第1部:総則
- X 6054-2 電子楽器デジタルインタフェース(MIDI)-第2部:プロトコル仕様
1999年よりMIDI検定が設置され社団法人音楽電子事業協会が主催している。現在4級3級2級があり2級には実技試験が含まれる。
[編集] 年表
- 1981年
- ヤマハ、ローランド、コルグ、カワイ、シーケンシャル・サーキット、オーバーハイムの国内外楽器メーカー6社が『MIDI 1.0 Specification』をまとめる。
- 1982年10月
- ローランドを中心に規格化が進められ、米国音楽雑誌「KEYBOARD」誌上で Ver.1.0 が公開される。
- 1983年1月
- NAMMショーにてシーケンシャル・サーキット製Prophet600とローランド製JX-3Pとの接続デモが行われる。
- 1983年8月
- 日本語版 MIDI 1.0 規格を発表。
- 1989年1月
- MIDI 1.0(Ver.4.1日本語版)発表。
- 1991年
- SMFがMIDI規格の「推奨実施例」(Recommended Practice)として承認される。(RP-001)
- 1991年9月
- MMA、JMSCが General MIDI System Level 1 を制定。(RP-003)
- 1996年5月
- 社団法人・音楽電子事業協会が発足。
- 1999年1月
- 第1回MIDI検定試験を実施。
- 1999年7月
- General MIDI System Level 2 を制定。(RP-024)
- 2001年5月
- 携帯電話着信メロディ用の規格 General MIDI Lite を制定。(RP-033)
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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