MTSAT
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
MTSAT(エムティーサット)は運輸多目的衛星(Multi-functional Transport Satellite)の英語略称で、宇宙開発事業団及び宇宙航空研究開発機構が打ち上げた大型の静止衛星である。
目次 |
[編集] 運輸多目的衛星1号
運輸多目的衛星1号(MTSAT-1)は、老朽化したひまわり5号・GMS-5の後継衛星としての気象観測機能以外に、衛星通信を利用した航空保安システムなどを搭載している。これは、気象庁が気象衛星のための予算を単独で捻出するのが困難であったため、同じ運輸省(現国土交通省)の航空局が空港整備特別会計を使って計画していた航空管制衛星に相乗りしたものである。このため、かなり巨大な衛星となった。米スペースシステム・ロラール社に発注して製造、完成品が輸入された。
1999年(平成11年)11月にH-IIロケット8号機で打上げたが、ロケットの第1段の故障で失敗して墜落、海中に失われた。
[編集] 運輸多目的衛星新1号
運輸多目的衛星新1号(MTSAT-1R)は、打上げに失敗した1号の代替として米スペースシステム・ロラール社に再発注して製造された。衛星バス(姿勢制御系など)はロラール社のLS-1300であり、これまでのGMSシリーズのスピン衛星タイプから三軸姿勢制御型へと変更され、それに従ってイメージャ(観測機器)なども変更されている。また、GMS-5の可視光+赤外1~3に加えてさらに赤外4(IR4)チャンネルが追加されており、配信データ形式も拡張された。打上げ時の重量は約3.3t。設計寿命は、気象観測が5年、航空管制が10年となっている。
MTSAT-1Rは2003年(平成15年)の夏にH-IIAロケット6号機を使用した打上げが予定されていたが、製造上の不具合や製造メーカーのスペースシステムズ・ロラール社が親会社とともに破綻(連邦倒産法第11章の適用申請)したことなどからたびたび延期され、その影響でH-IIAロケット6号機での打上げを断念し、H-IIAロケット7号機での打上げに変更された。なお、6号機は情報収集衛星2号を搭載したが、打上げに失敗した。
打上げの延期に伴って、米国のGOES-9が、MTSAT-1Rの打上げ・稼動が成功するまで代替機として2003年5月22日から2005年(平成17年)7月まで観測を担当していた(ひまわり (気象衛星)の項参照)。
上記の過程を経たのち、2004年(平成16年)3月19日にアントノフ124等で輸送され種子島宇宙センターへ到着したが、到着前に発生したH-IIAロケット6号機の打上げ失敗によるH-IIAロケットの設計改良のために、またもや打上げが延期される事態に陥った。
その後、H-IIAロケット7号機によって日本時間2005年(平成17年)2月26日午後6時25分に打上げられ、衛星の分離に成功した。2005年3月8日、静止軌道に入ったことが確認され、ひまわり6号と愛称が命名された(正式名称はMTSATのまま)。当初は5月下旬には気象観測の開始を予定していたが、気象設備の設置に時間がかかり6月28日に正式運用を開始した。
[編集] 運輸多目的衛星新2号
気象衛星としてはMTSAT-1Rだけで十分だが、航空管制業務にはMTSATが2基必要であるため、運輸多目的衛星新2号(MTSAT-2)が三菱電機で製造された。日本は1990年(平成2年)に米国との協定によって、日本国内で使用する商用衛星も国際競争入札にしなければならなくなり、大量生産していないために高コストの国産衛星は、大量生産によって低価格を実現した欧米の商用衛星に太刀打ちできず、技術試験衛星などの製作でかろうじて技術を保持し続けてきた。MTSAT-2は、衛星の機構をほかの用途の衛星でも共用できるようにして低価格を実現し、欧米の衛星に対抗することとなった。基本機能はMTSAT-1Rと同じであるが、随所に国産技術による手が加えられており、通信機器の一部を除いて実質は別の衛星といっても過言ではない。
MTSAT-2はH-IIAロケット9号機によって日本時間2006年(平成18年)2月18日午後3時27分打上げられ、衛星の分離に成功し、2月24日に愛称は「ひまわり7号」となった。航空管制衛星として正式運用となれば2機体制となる。9月4日からは東経145度の静止軌道上で気象ミッションの待機運用を開始し、切望されていた気象衛星の軌道上予備機が実現することとなった。打上げ時の重量は約4.7tで、打上げ時点では、日本の宇宙開発史上最も重い衛星であった。
[編集] 計画される3号機
かなり流動的になっている。現状のMTSATでは、気象観測と航空用通信機能を持っていて、非常に大型であるため、拡張がどこまで出来るかとの問題を抱えている。 少なくとも気象観測部門では、WMOによって今後、サウンディング観測(GOESに現在搭載されているサウンダー)を搭載するよう勧告が出ていて、将来的にこの装置を搭載する計画がある。ただし、航空通信機能を持っている現状の方式では、搭載するスペースが確保出来るか。電力上の障害など多岐にわたるため、分離される場合も想定されている。