Pentium 4
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Pentium 4(ペンティアム・フォー)は、NetBurstマイクロアーキテクチャに基づく2000年にインテルによって発表、2001年より製造・販売された80x86アーキテクチャのCPU。
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[編集] 各世代の概要
[編集] Willamette(ウィラメット)
第一世代のPentium 4。0.18μmプロセスで製造される。
動作クロック1.40 GHz版と1.50 GHz版がまず発売された。しかし旧世代アーキテクチャであるPentium IIIと性能に大きな差がなく、システムの価格と消費電力が増加してしまったことから、あまり普及しなかった。CPU開発で度々行われることだが、設備を一新した工場で新開発のCPUの製造を行うと、問題が見付かってもその問題がCPUと製造設備のどちらに由来するものなのか特定が難しく対処に時間が掛かってしまう。そのため性能などは多少劣ってしまうものの無難に旧来の工場で当面は製造することが一般的である。改良をするにも一度に複数を変更すべきではないのは多くの場合に言えることだが、短時間で対応が出来ないCPUではその弊害はより顕著に現れる。そのため新開発のCPUの購入はモデルチェンジを待つべきだとの意見が多い。
さらに、それまでのPC-100などの安価なSDRAMをPentium 4では使えないことも普及の妨げになっていた。唯一の専用となるチップセットi850は、高価なうえに2枚一組でしか使えないメモリ(RIMM)にしか対応しなかったことが災いした。普及を試みてPentium 4に価格据置きでRIMMを無償添付したPentium 4を発売したり、パソコンメーカーに対してPentium 4のRIMMの代金分の値引きを行ったりしたこともあったが、普及には大きな効果は現れなかった。
IntelはPC-133 SDRAMをサポートするi845チップセットを急遽発売した。このチップセットはシングルチャネルSDR SDRAMチップセットとしては極めて高速であったが、i850と比べると性能が劣ることは否めず、高性能に人気の集まる日本市場では人気はでなかった。後にi845を改良してDDR SDRAMをサポートしたi845 B-Step、通称i845Dが投入された。 また、i865系以降のチップセットはこのコアに対応していないので注意が必要である。
発売当初はSocket423に対応していたが、後にSocket478に対応し、これが主流となる。
- ラインナップ
- FSB 400MHz対応 - 1.30 GHz、1.40 GHz、1.50 GHz、1.60 GHz、1.70 GHz、1.80 GHz、1.90 GHz、2 GHz
[編集] Northwood(ノースウッド)
第2世代のPentium 4。Willametteをそのまま0.13μmプロセスで製造した製品。製造プロセスの微細化による消費電力低減とL2キャッシュの倍増(256KBから512KB)による多少の性能向上を実現している。クロック周波数は2004年2月に3.4GHzを達成した。 発熱量と処理能力のバランスが良くPrescott登場後も根強い人気があったが、2005年3月をもって製造終了。 2002年11月にはXeonプロセッサに引き続きHyper-Threadingテクノロジ(HT)が利用可能なPentium 4をリリース。このHTに対応したチップセットとしてi865系が開発された。NetBurst用チップセットと好評を博した。
- ラインナップ
- FSB 400MHz対応 - 1.60A GHz、1.80A GHz、2A GHz、2.20 GHz、2.40 GHz、2.50 GHz、2.60 GHz、(2.8GHz?SL6Y0-確認中)
- FSB 533MHz対応 - 2.26 GHz、2.40B GHz、2.53 GHz、2.66 GHz、2.80 GHz、3.06 GHz(3.06GHz版のみHT対応)
- FSB 800MHz、HT対応 - 2.40C GHz、2.60C GHz、2.80C GHz、3 GHz、3.20 GHz、3.40 GHz
- 同時マルチスレッディング (同:ハイパースレッディング・テクノロジー)
[編集] Prescott(プレスコット)
90nmプロセスで製造される第3世代のPentium 4。L2キャッシュメモリを1MBに増量した一方で、さらなる高クロック化を想定してキャッシュアクセスのレイテンシとパイプライン段数を増加させている。これにより1サイクルあたりの平均処理命令数は低下するため、同じ動作クロックで動作するNorthwoodと比べると僅かながら性能は劣る。
また、製造プロセスの微細化によるリーク電流の増加は消費電力の問題をより深刻化させ、より強力な冷却機構を装備する必要が生じている。プロセッサに供給された電力のうち、処理に使われる電力は4割弱に過ぎず、残る電力は何ら性能に寄与する事なく熱となった。このため高クロック化は限界に達し、当初予定されていた4GHz超の製品の発表が予告されるものの発売されずに中止されることになった。この事態を踏まえてIntelはロードマップを大幅に変更し、動作クロックそのものの向上を重視する戦略から、1サイクルあたりの性能の向上を重視する方向へと転換した。その時期を同じくしてプロセッサー・ナンバーを導入している。
実際には4GHzを超える製品の製造は可能だったが、クロックを抑える代わりにデュアルコア化したPentium Dへ移行させるため、4GHzの大台に乗ってしまうとPentium Dが見劣りしてしまう懸念から、4GHzを超える製品は発売を取りやめになったと見る向きもある。
PrescottからはSSE2の拡張版にあたる「ストリーミングSIMD拡張命令3(SSE3)」の他、一部製品ではバッファオーバーランを利用した攻撃プログラムの実行を防止する「エグゼキュート・ディスエーブル・ビット (XD bit) 」や、AMD64互換の64ビット拡張である「インテル 64 テクノロジ (Intel 64) 」といった機能が追加されている。
当初の開発よりも電源周りへの要求がシビアだったことから従来のSocket 478に対応する製品も初期の製品では投入されたが、発売早々に775接点のLGAパッケージを採用するSocket 775に移行している。ちなみにSocket 775はSocket Tとも呼ばれている。これは電源周りで要求が高くなると見られていた次世代Tejasで採用される予定だったことによるが、Prescott世代で採用する必要性に迫られたことからこの世代の消費電力の大きさがIntelの予測を超えたものだったことが窺い知れる。LGAパッケージは従来のCPU側にピンがあるPin grid array(PGA-ZIF)形式とは違い、マザーボード側にピンがあるLand grid array(LGA)形式に変更されている。これによってCPUクーラーを取り外す際にCPUがヒートシンクに吸着されCPU側のピンを破損するという事故はなくなった(この事故は、先にソケットのレバーを解放しておき、シンクごとプロセッサを外してしまうという方法で回避できる。Pentium 4はヒートスプレッダを装着しているので、その後で、マイナスドライバーで剥がせば危険は少ない)が、反面マザーボード側に用意されたピンはより繊細な扱いを必要とするようになった。(詳細は集積回路の項目も参照)
- ラインナップ(括弧内はプロセッサー・ナンバー)
- FSB 533MHz、Socket478対応 - 2.40A GHz、2.80A GHz
- FSB 533MHz、LGA775対応 - 2.66 GHz(505)、2.93 GHz(515)
- FSB 800MHz、Socket478、HT対応 - 2.80E GHz、3E GHz、3.20E GHz、3.40E GHz
- FSB 800MHz、LGA775、HT対応 - 2.80 GHz(520)、3 GHz(530)、3.20 GHz(540)、3.40 GHz(550)、3.6GHz(560)、3.8GHz(570)
- FSB 800MHz、LGA775、HT、XD bit対応 - 2.8GHz(520J)、3GHz(530J)、3.2GHz(540J)、3.4GHz(550J)、3.6GHz(560J)、3.8GHz(570J)
- FSB 800MHz、LGA775、HT、XD bit、Intel 64対応 - 3.20F GHz、3.40F GHz、3.60F GHz、3.8F GHz、2.8GHz(521)、3GHz(531)、3.2GHz(541)、3.4GHz(551)、3.6GHz(561)、3.8GHz(571)
[編集] Prescott-2M
2005年2月21日にリリースされた第四世代Pentium 4。Prescottの2次キャッシュを2MBに倍増し、Intel 64やSpeedStep(EIST:Enhanced Intel SpeedStep Technology)に対応させたもの。XD bitも標準で搭載される。プロセッサー・ナンバーは600番台となる。
また、2005年にコンピュータの仮想化技術であるVirtualizationテクノロジを実装された製品(プロセッサー・ナンバーは6x2)も発表された。
- ラインナップ(括弧内はプロセッサー・ナンバー)
- 3 GHz(630)、3.20 GHz(640)、3.40 GHz(650)、3.60 GHz(660)(662)、3.80 GHz(670)(672)
[編集] Tejas(テハス、テジャス)
当初第5世代Pentium 4として開発されていたが、消費電力の増大の問題が解決できず、開発中止になった。これに代わるものとしてPentium Dが開発された。
[編集] CedarMill(シーダーミル)
2006年1月5日にリリースされた第五世代Pentium 4。CedarMillの名称はTejasの製造プロセスを微細化したものとして計画されていたが、Tejasが開発中止となったためPrescott-2Mをそのまま65nmプロセスに微細化したものに変更された。性能を含め内容的にはPrescott-2Mと同一で、プロセッサナンバも同内容のPrescott-2Mよりも1大きいものが付けられている。Pentium Dの下位製品として位置付けされた。Prescottと同じく消費電力は大きかったが、後に改良によって他社製品と特に変わらない程度まで低下している。その上価格もPrescottより大きく引き下げられており、価格に対する性能は高いものとなった。しかし新製品への移行を速やかに行うために大きく宣伝されることは無く、終息を待つこととなる。
消費電力が大きく引き下げられた物は、Prescottに比べて優れたオーバークロック耐性を持つ事が知られており、マニアの間では人気がある。
- ラインナップ(括弧内はプロセッサー・ナンバー)
- 3 GHz(631)、3.20 GHz(641)、3.40 GHz(651)、3.60 GHz(661)
[編集] 関連項目
- Intel 64 (EM64T)
- ハイパースレッディング・テクノロジー(同時マルチスレッディング)
- エグゼキュート・ディスエーブル・ビット(NXビット)
- Intel SpeedStep テクノロジ
- プロセッサー・ナンバー
- Athlon / Athlon 64
- P4バス
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