Pentium M
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Pentium M(ペンティアム・エム)は、インテルが2003年春より発売しているノートパソコン向け80x86アーキテクチャのCPU。
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[編集] 概要
ノートPCに搭載することを前提とし、バッテリー持続時間と高速性能の両立のため、省電力化を最大の目的として設計された。今までのモバイル向けCPUとは異なり、デスクトップ向けCPUの流用ではなく専用に設計されたものとしてはインテルにとって初である。
またPentium Mと、対応チップセットのi855/i915シリーズ、IEEE802.11a/b/g無線LANチップのIntel PRO/Wireless、およびMicrosoft Windows XPまたはLinux Kernel 2.4x 以降のソフトウェアとの組み合わせでインテル Centrino(セントリーノ)モバイルテクノロジと称する。 ただし、3種ともに上記などインテル製品での組み合わせでなければCentrinoの呼称を名乗ることができない。
小型で静粛性の高いデスクトップパソコンを組み立てるユーザーの間では好評だが、それほどまでにPentium Mが歓迎されているのは日本が中心で、インテル社のお膝元であるアメリカでの評判はいまひとつである。またヨーロッパでは処理能力に優れるAthlon 64が優勢である。
IA-32の64bit拡張命令であるIntel 64には対応していない。
[編集] 設計
インテルからはアーキテクチャの詳細が発表されていないが、P6マイクロアーキテクチャをベースとしたアーキテクチャを採用しているとする意見があるが、ほとんどその原型をとどめていないことからその意見には疑問もある。パイプラインを深くし、高クロック化で性能を稼ぐNetBurstマイクロアーキテクチャの方向性は押さえられており、絶対的な性能よりもクロックあたりの処理性能を重視している。その一方でCPUバス周りはNetBurst系の高速なバスを組み合わせており、バス周りがボトルネックとなることを抑えている。
クロックあたりの性能が良く、Pentium Mに対して1.5倍のクロックのPentium 4に匹敵する性能を発揮する。これはアプリケーションにもよるが、Pentium Mの2GHz、Pentium 4の3GHz、Athlon 64 2800+ (1.8GHz) がおおよそ同じくらいの性能である。また、低消費電力であるため、発熱が減少し、CPU冷却装置の小型化に貢献した。
小型なモバイルコンピューターでも高いパフォーマンスが得られるため、モバイルのみならず、のちにPentium M用のSocket479を使用したデスクトップ向けのマザーボードも発売され、さらには台湾の有名マザーボードメーカーよりSocket478のマザーボードで使用できるCPU変換アダプタ(自社のマザーボード限定で、BIOSのアップデートが必要で、SpeedStepは使用不可)も発売された。
[編集] 第一世代“バニアス” (Banias)
0.13μmプロセスで製造された。2次キャッシュメモリは1MB、FSBは400MHz。Pentium 4同様、SSE2に対応している。途中からプロセッサー・ナンバーが採用され、700番台が与えられている。 省電力技術として拡張版インテルSpeedStepテクノロジをサポートする。これはかつてモバイル Pentium III-Mに搭載されていたものをさらに拡張させたもので、多段階の動作電圧や周波数で動作することを可能としている。
- ラインナップ(括弧内はプロセッサー・ナンバー)
- 標準電圧版 - 1.3GHz、1.4GHz、1.5GHz(705)、1.6GHz、1.7GHz
- 低電圧版 - 1.1GHz、1.2GHz、1.3GHz(718)
- 超低電圧版 - 900MHz、1GHz、1.1GHz(713)
[編集] 第二世代“ドタン” (Dothan)
90nmプロセスで製造された。2MBの2次キャッシュメモリを搭載する。プロセッサー・ナンバーはBanias同様700番台。
改良版 (Dothan 533) が新チップセットi915シリーズとともに2005年1月19日に発表。従来と同じ90nmプロセスでの製造でDothanと同じコアだが、FSBが400MHzから533MHzに向上。ただし低電圧版のFSBは400MHzのままである。「エグゼキュート・ディスエーブル・ビット(EDB)」(NX bitとも呼ばれる)に対応。「ソノマ(Sonoma)」というコードネームで呼ばれた第2世代セントリーノ・プラットフォームとともに用いられる。
同時発表されたチップセットi915シリーズ(正式には「モバイルIntel 915 Expressチップセットファミリ」)は、FSB533/400MHzに対応し、PCI Expressが使用可能。DDR2 SDRAMも利用可能になり、消費電力を削減できる。 グラフィックス・メディア・アクセラレータ 900 (GMA 900) が統合された915Gチップセット・ファミリはグラフィックス性能を従来製品よりも大幅に向上し、T&Lにハードウェアレベルで対応していないことなどを除けば、低価格の独立VGA並みの性能を有する。なお、GMA900ではWindows VistaのWindows Aero機能は使用できない。GMA900の後継グラフィックであるGMA950ではWindows Aeroに対応している。 組み合わされるICHはICH6Mで、最大32bit/192kHz対応のHD AudioやSerial ATAが使用できる。
- ラインナップ(括弧内はプロセッサー・ナンバー)
- 標準電圧版、FSB 400MHz対応 - 1.5GHz(715)、1.6GHz(725、725A)、1.7GHz(735、735A)、1.8GHz(745、745A)、2GHz(755)、2.1GHz(765)
- 標準電圧版、FSB 533MHz対応 - 1.6GHz(730)、1.73GHz(740)、1.86GHz(750)、2GHz(760)、2.13GHz(770)、2.26GHz(780)
- 低電圧版 - 1.4GHz(738)、1.5GHz(758)、1.6GHz(778)
- 超低電圧版 - 1GHz(723)、1.1GHz(733)、1.1GHz(733J)、1.2GHz(753)、1.3GHz(773)
(※プロセッサー・ナンバーの末尾が5のものはNXビットに未対応、末尾にAがつくものはNXビットに対応)
一連のシリーズで、機能的な相違度はBanias < Dothan <<< Yonah << Meromとなるが、公表されている機能分を差し引いたトランジスタ数の差としてはBanias <<< Dothan << Yonah < Meromとなる。このことからDothanは未公開の実験的要素が多数組み込まれている可能性がある。
[編集] 後継マイクロアーキテクチャ“ヨナ”(Yonah)
2006年1月5日に発表された65nmプロセスのCPUで、モバイル向けとして初めてデュアルコアが採用された。ブランド名がこの製品からIntel Coreに変更された。詳細はIntel Coreを参照のこと。
[編集] 関連項目
- Crusoe - Pentium MはCrusoeキラーとして開発された経緯がある。
- Celeron M - Pentium MやCoreの廉価版。2ndキャッシュ半減やSpeedStep省略がされている。
- Intel Core - Yonah以降このブランド名に移行した。
- Turion 64 - 競合他社製品。
[編集] 外部リンク
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