RO-RO船
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RO-RO船(ローローせん、Roll-on/roll-off ship)とはフェリーのようにランプを備え、トレーラーなどの車両を収納する車両甲板を持ち、自走で搭載/揚陸できる構造の貨物船である。対義語はLO-LO船(Lift-on/lift-off ship)。
[編集] RORO船の歴史
貨物船は在来船とよばれるクレーン付、多層船倉の汎用貨物船しかなく、木箱に入れた貨物を数箱ネットに載せて、船搭載のクレーン(本船ギアという)で船倉に運びいれ、船倉内で人力で積みつけ、かつ固定も必要であったので、荷役には莫大な人手が必要で、時間もかかった。
戦後、コンテナ船の出現によって荷役は飛躍的に簡便になったばかりか、コンテナをそのままトレーラーに積んで、ドアツードアの海陸一貫輸送も可能になった。しかし、コンテナ船の荷揚げ荷卸しができるコンテナ埠頭を整備するのはガントリークレーンの設置など多額の投資が必要で、当初は日本でも横浜・神戸など需要の多い大港湾しか整備できなかった。
そうした中RORO船は、岸壁とトレーラーヘッドさえあれば、クレーンが未整備の小港湾でも荷役が可能であり、車輪や車両のコクピット、船内のスロープ等のデッドスペースが発生する欠点はあるものの、コンテナよりさらに迅速な荷役が可能であるため、コンテナ船寄港地から地方港湾までの国際貨物の末端輸送手段、または国内貨物輸送の有用な手段として脚光を浴びた。現在、日本国内で海上輸送される貨物のほとんどは、RORO船ないしはフェリーで運ばれている。
さらに、近年は大韓民国など近距離国際海運においても、トレーラー輸送のための国際間の法整備がされたこともあり、農作物輸送などでRORO船による定期航路が開設されるようになった。
軍用の部門では米ソ冷戦時代、米軍はソ連侵攻の場合に欧州に迅速に戦車等を輸送するため、Ro/Ro形式の輸送艦T-AKRを多数配備し現在も健在である。
[編集] RORO船とフェリー
RORO船は、貨物荷役から発達した形態であり、対するフェリーは、渡船から発達した形態である。発生の由来は異なるが、徐々にフェリーとは構造は似て来ており、近年はRORO船とフェリーの区別は曖昧になっている。RORO船は広義のフェリーとも言えるが、厳密には、細かな点で違いがある。
RORO船はあくまでも貨物船であり、一般旅客及び乗用車の乗船を行わず、基本的には、ドライバーのみ13人未満の定員である。また、貨物船であるため、フェリーに比べて保安設備などの規格が緩く、船員数もフェリーに比べて少ない。また、契約した業者の荷役のみを行い、船内への積載はドライバーではなく、乗組員の手で行われる。
それに対し、フェリーは一般旅客を受け入れ、契約していない業者のトラックも受け入れている。広い一般旅客区画が設けられている他、保安体制が厳しく定められている。