神戸港
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神戸港(こうべこう)は、兵庫県神戸市にある指定特定重要港湾。1868年1月1日(旧暦慶応3年12月7日)に開港。現在の日本三大旅客港の一つ。
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[編集] 歴史
[編集] 中世
遣隋使、遣唐使の時代を経て平安時代末(10世紀)、平清盛によって「大輪田泊(おおわだのとまり)」(神戸市兵庫区)の修築が行われ、人工島「経が島」が建設されて日宋貿易の拠点となる。その後、俊乗坊重源による改修を経て鎌倉時代に国内で第一の港として「兵庫津(ひょうごのつ)」と呼ばれた。室町時代に、兵庫津は日明貿易の拠点として再び国際貿易港としての地位を得る。
[編集] 近世
江戸時代には、鎖国政策のもとで兵庫津は西廻り航路の北前船や内海船の要港として栄え、朝鮮通信使の寄港地として1万人前後の人口を誇る。また、灘五郷として酒造りが活発になった所でもある。しかし、当時の江戸幕府の経済政策において西日本の経済・海運の中心地は大坂と定められてその周辺に経済力のある都市が形成される事に対して否定的であった。このため、神戸一帯を領有していた尼崎藩には幕府に忠実な譜代大名を配置して、兵庫の商人や海運業者が大坂商人の利益を損わないように厳しい法律で取り締まることとなる。その後の田沼意次の重商主義政策によって天領に組み入れられて規制は緩和されたものの、田沼が失脚した後にはその政策を否定する寛政の改革を進めた松平定信と兵庫の自立を許さない大坂商人の思惑の一致により規制が強化されて次第に衰退の色を濃くしていく。
1858年(安政5年)、日米修好通商条約により1863年1月1日に開港が定められたが、朝廷の反対により、ロンドン覚書によって5年後の1868年、「兵庫津」より東にある、「海軍操練所」があった辺りを「兵庫港」として開港が実現した。その当時の「神戸」はその一帯の村の名前でしかなかったが、やがて外国人居留地ができ始め、西洋文化の入り口として発展し、「神戸」の名が著名になっていった。1892年に勅命により正式に「神戸港」となる。
1863年(文久3年)、江戸幕府の軍艦奉行であった勝海舟は、海防のための幕臣の教育施設として「海軍操練所」の設立を、呉服商網屋吉兵衛が私財を投じて竣工させた「船たで場(ふなたでば)」を利用することを考え、当時の将軍であった徳川家茂に建白した。翌1864年(元治元年)に、明治維新に多大な功績を残した坂本龍馬が塾長を勤めた、諸藩の志士のための「海軍塾」と共に開設されたが、勝の更迭と同時に「神戸海軍操練所」と「神戸海軍塾」は閉鎖になった。同じ年に建てられた海防の要、和田岬砲台が、今も神戸市兵庫区に現存している。開港100周年の1968年には「海軍操練所」があった場所に「史蹟 旧海軍操練所跡」碑が建立された。
[編集] 近代
明治の世が明けると、和田岬に和田岬灯台が設置される。政府の富国強兵策による近代化で工業が貿易と共に興り、しだいに大阪と共に阪神工業地帯を形成していった。日清戦争後には香港・上海を凌ぐ東洋最大の港となって商社「旧鈴木商店」などに代表される海運業が隆盛してロンドン・ニューヨーク・ハンブルクと並ぶ世界4大海運市場の一つとして世界に名を知られるようになる。
[編集] 戦後
第2次世界大戦後もアジア最大のマザーポート(ハブ港)としての地位は揺るがず、日本の高度成長期の発展を支えた。1973年から1978年までコンテナ取扱個数は世界一を誇り、一時期は世界最大の国際貿易港として、常に最先端の港湾設備を持つ港として栄えた。
[編集] 現在
1995年には阪神・淡路大震災によって甚大な被害を受けたが、約2ヶ月後の3月20日には摩耶ふ頭でコンテナの積み下ろしが再開される。2年後の1997年3月31日には全面復旧し、5月19日に神戸港復興宣言が出される。2004年のコンテナ貨物の取扱量は2年連続の増加(前年比6.4%増)で、阪神・淡路大震災前の1994年実績の80%の水準でしかないもののその後も順調に回復してきている。迅速な復興を遂げた神戸港であるが、震災の経験を記憶するために、港の一角には震災当時の状態を保存した神戸港震災メモリアルパークが設置されている。
なお、1907年~2003年には船舶との貨物提携輸送を行うために貨物駅の小野浜荷扱所~神戸港駅が港に設けられて運行されていた。
また、来航する外国籍の軍艦艇すべてに「非核証明書」の提出を義務付けている。外航客船にはもっぱら神戸ポートターミナルに着岸させていたのを中突堤旅客ターミナルに税関・入管・検疫の出入国機能を設けて2006年1月11日から着岸できるようにした。沖合いには、同年2月16日に神戸空港が開港した。
神戸港・尼崎西宮芦屋港・大阪港を一つの港「阪神港」とみなして連携してマザーポートにしていくスーパー中枢港湾の指定も受けている。
[編集] 姉妹港・友好港
- 姉妹港
- 友好港
[編集] おもな施設、外航・内航定期客船
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中突堤旅客ターミナル(接岸する飛鳥II)
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新港フェリーターミナル(入港するりつりん2)
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[編集] 高浜旅客ターミナル(神戸ハーバーランド)
[編集] 中突堤旅客ターミナル(中突堤)
- ルミナス観光 - ルミナス神戸2(4,778トン、神戸港~明石海峡周遊)
[編集] 中突堤中央ターミナル(中突堤西・かもめりあ)
- セラヴィ観光汽船 - ラ・ベルメール(193トン)
- セラヴィ観光汽船 - ヴィラジオイタリア
- 神戸中突堤 - ポートアイランド - 神戸空港
- 神戸ベイクルーズ - ロイヤルプリンセス(414トン、神戸港周遊)、ロイヤルプリンス(170トン、神戸港周遊)
- 早駒運輸 - シーグレース(190トン、神戸港~明石海峡周遊)、ロマン3(60トン、神戸港周遊)、ファンタジー(神戸空港島周遊・ポートアイランド)
[編集] 新港フェリーターミナル(新港第一・二・三突堤)
[編集] 神戸ポートターミナル(新港第四突堤)
[編集] 六甲アイランドフェリーターミナル(バース)
- RF1 ダイヤモンドフェリー - フェリーダイヤモンド(9,023トン)、 スターダイヤモンド(9,463トン)、ブルーダイヤモンド(9,447トン)
- 関西汽船※共同運行便 - さんふらわあこがね(9,684トン)、さんふらわあにしき(9,684トン)、さんふらわああいぼり(9,245トン)、さんふらわあこばると(9,245トン)、
- 別府港 → 大分港 → 松山港 → 神戸港 → 大阪港(上りのみ寄港。下りは神戸ポートターミナルに寄港。)
- RF2 阪九フェリー - フェリーせっつ(15,188トン)、 フェリーすおう(15,188トン)
- 神戸港 - 新門司港
- RF3 四国開発フェリー(オレンジフェリー) - オレンジホープ(15,732トン)、オレンジ8(9,975トン)、オレンジ7(9,917トン)
[編集] 六甲船客ターミナル
- マルエーフェリー(週1~2便・寄港地は便により異なる) - 琉球エキスプレス(6,266トン)
[編集] 神戸空港ポートターミナル桟橋
- 神戸-関空ベイ・シャトル(84トン、高速船)
- セラヴィ観光汽船 - ラ・ベルメール(193トン)
- 神戸中突堤 - 神戸空港 - 小豆島・坂手港
- セラヴィ観光汽船 - ヴィラジオイタリア
- 神戸空港 - ポートアイランド - 神戸中突堤
[編集] 六甲アイランド コンテナバース
- RC3 川崎汽船、マースク・シーランド
- RC4 川崎汽船、マースク・シーランド
- RC5 川崎汽船、マースク・シーランド
- RC6 日本郵船
- RC7 日本郵船
[編集] ポートアイランド ライナーバース
- PL2 日本通運、日東物流(川崎汽船系)
- PL3 澁澤倉庫
- PL4 三井倉庫
- PL5 辰巳商會
- PL6 住友倉庫
- PL7 大森廻槽店
- PL8 辰巳商會
- PL9 大洋運輸
- PL10 神和
- PL11 ニッケル・エンド・ライオンス
- PL12 ニッケル・エンド・ライオンス
- PL13 日新
- PL14 山九
- PL15 山九
[編集] ポートアイランド コンテナバース
- PC13 アメリカンプレジデントラインズリミテッド、住友倉庫
- PC14 商船三井
- PC15 商船三井、住友倉庫、山九、ニッケル・エンド・ライオンス
- PC16 三井倉庫
- PC17 三井倉庫
- PC18 上組
[編集] かつて存在した施設
[編集] 東神戸フェリーターミナル
東灘区の青木にあり、四国・九州方面を中心としたフェリーの発着場として賑わった。阪神大震災で被害を受けた後復旧したが、近隣の六甲アイランドや神戸中央部の埠頭に航路が移転することになったうえ、明石海峡大橋の開通で航路自体が減少したため、閉鎖。跡地はショッピングセンター「サンシャイン・ワーフ」となっている。阪神電気鉄道青木駅が最寄りだった。
[編集] ギャラリー
新港第四突堤に架かる神戸大橋 |
[編集] 環境保全
港内の底質において高濃度のポリ塩化ビフェニールが検出されていることを環境省が発表している。
[編集] 関連項目
- 新港地区 - 神戸税関、旧国立生糸検査所、旧神戸市立生糸検査所、新港貿易会館
- ウォーターフロント - 神戸ハーバーランド、メリケンパーク、ポートアイランド、六甲アイランド
- 旅客船 - クルーズ客船、フェリー、高速船、レストラン船、遊覧船
- 交通 - 神戸フェリーバス、神戸空港
- 歴史 - 日宋貿易、ボート・トレイン
- 地理 - 瀬戸内海、明石海峡、大阪湾
- 人物 - 尾崎睦、宮崎毅
- 港湾職業能力開発短期大学校神戸校
- 開港五港