クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲
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『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』(クレヨンしんちゃん あらしをよぶ モーレツ オトナていこくのぎゃくしゅう)は、2001年4月21日に公開された『クレヨンしんちゃん』の劇場映画シリーズの第9作目。原恵一が監督した5つ目の作品。上映時間は89分。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] あらすじ
昔懐かしいテレビ番組や映画、暮らし等が再現された「20世紀博」というテーマパークが日本各地で開催されていた。毎日つき合わされ、いい加減に飽きて辟易しているしんのすけら子供達を尻目に、ひろしやみさえら大人達は、懐かしさに触れて20世紀博を満喫する。街中でも昔の車やレコード、白黒テレビといった古いものが売れるようになり、帰宅しても大人達はビデオの懐かしい特撮番組やアニメ番組に夢中になるばかり。
ある晩、テレビで20世紀博から「明日、お迎えにあがります」という放送があり、これを見た大人達は人が変わったようになり、すぐさま眠りについてしまった。
翌朝、大人達は家事や仕事も忘れ遊びほうけ、子供達を無視していた。しんのすけは困惑しながらも幼稚園に行くが、幼稚園の教師たちにまでも無視されてしまう。すると、街中にたくさんのオート三輪が現れた。大人達(紅さそり隊ら高校生含む)は皆それに乗り込み、子供達を置き去りにしてどこかへ走り去ってしまった……。
実はこれは、“ケンちゃんチャコちゃん”をリーダーとするグループ「イエスタデイ・ワンスモア」(「昨日よもう一度」の意味で、昨日とはつまり20世紀を示している。また、カーペンターズのヒット曲のタイトルでもある)の、大人を子供に戻し、「古き良き昭和」を作って未来を放棄するという、恐るべき“オトナ帝国”化計画だった。そしてその矛先は、置き去りにされた子供たちにも向けられた。
それを阻止せんと、しんのすけ率いるかすかべ防衛隊(シロ含む)は幼稚園バスを運転し20世紀博へ向かうのだが、団員やひろしとみさえがそれを妨害し、彼らはカーチェイスを繰り広げる。
はたして、取り残された“かすかべ防衛隊”は、大人達を元に戻す事ができるのか。そして、未来はやってくるのか。
[編集] 概要
これまでのコメディタッチの『クレヨンしんちゃん』の映画シリーズとは一線を画し、子供とともに大人が楽しめるないように創られている。本作は21世紀幕開けの年に公開された作品であるが、この作品のテーマは20世紀であった。レトロブームといわれる昨今で、先の暗い現代社会と対比的に、未来への希望に溢れていた時代、特に高度経済成長期へのノスタルジー、「懐かしさ」を武器としている。次作の『戦国大合戦』と並ぶ感動映画となっている。
「大人が仕事も家事もせずにただ遊んでいる」、「大人が町からいなくなり、子供だけ取り残される」など、恐怖心をあおる様な描写や、クレヨンしんちゃんならではのギャグも含まれている。
第三十三回星雲賞メディア部門ノミネート。第一回日本オタク大賞受賞。日本のメディア芸術100選アニメ部門選出。また、雑誌映画秘宝が毎年選定している映画ベスト10では2001年度に、アニメーション枠ではなくすべての洋・邦画を含めた中で1位に輝いており、同誌ベスト10で1位になった邦画は、2006年現在、本作のみである。
作品中には、トヨタ・2000GT、トヨタ・1600GT、コスモスポーツ、スバル360、スカイライン(4代目)などの名車が実車名で多く登場する。 また、随所に洋画『ガントレット』『ルパン三世 カリオストロの城』『ブルース・ブラザース』のカーチェイスシーンがオマージュされている。
冒頭に登場する特撮ドラマ『ヒロシSUN』は「ウルトラマン」が元ネタである。同様に、次に登場するみさえが扮しているキャラクターは「魔法使いサリー」に酷似している。
ラストにしんのすけが必死に階段を駆け上がるシーンがあるが、これはテレビ朝日の太田賢司プロデューサーの「敵とは戦わずに、しんちゃんが階段を駆け上がるみたいなのが良いのでは」とのアイディアを取り入れたものである。原は「テレビ局の方がそういった冒険的な判断をしてくれてうれしかった。そしてあのシーンは音楽の面の功績も非常に大きい」と感謝の旨を発言している。このシーンは後にアニメの名シーンを取り上げる番組でも何度も登場するクレヨンしんちゃん史上屈指の名場面となった。
しんのすけ役の矢島晶子はインタビューで本作を劇場版の中でNo1であると明言しており、本作および次回作である『戦国大合戦』の2作は別格で、「この2作を超える作品は今後しばらく出ないと思う」と発言している。[1]
小堺一機と関根勤の2人は、原作者の臼井儀人がTBSラジオ『コサキンDEワァオ!』のファンであることが縁で出演。本人役で1シーン出演し、ショートコントを披露した。
本作はクレヨンしんちゃん15周年記念事業の一環として2006年にもテレビ放送されている。
また、NHKのBSアニメ夜話第3弾(2005年3月29日放送分)にて、本作が取り上げられた。
AmazonなどのDVDレビューでは「ALWAYS 三丁目の夕日」の対になる作品として語られることもある。
[編集] キャスト
- 風間くん:真柴摩利
- ネネちゃん:林玉緒
- マサオくん:一龍斎貞友
- ボーちゃん:佐藤智恵
- よしなが先生:高田由美
- まつざか先生:富沢美智恵
- 上尾先生:三石琴乃
- 園長先生:納谷六朗
- 副園長先生:滝沢ロコ
- かすかべ書店店長:京田尚子
- 中村:稀代桜子
- 隣のおばさん:鈴木れい子
- 風間ママ:玉川紗己子
- ネネママ:萩森侚子
- マサオママ:大塚智子
- 子供時代のひろし:三田ゆう子
- 野原銀之助:松尾銀三
- 野原つる:北川智絵
- 団羅座也:茶風林
[編集] スタッフ
- 監督・脚本:原恵一
- 絵コンテ:原恵一、水島努
- 演出:水島努
- 演出補佐:パクキョンスン
- キャラクターデザイン:末吉裕一郎、原勝徳
- 作画監督:原勝徳、堤のりゆき、間々田益男
- 美術監督:清水としゆき、古賀徹
- 色彩設計:野中幸子
- 撮影監督:梅田俊之
- 編集:岡安肇
- ねんどアニメ:石田卓也
- 録音監督:大熊昭
- 音楽:荒川敏行、浜口史郎
- チーフプロデューサー:茂木仁史、太田賢司、生田英隆
- プロデューサー:山川順市・和田やすし(シンエイ動画)、福吉健(テレビ朝日)
- 制作デスク:高橋渉、魁生聡
- 制作:シンエイ動画、テレビ朝日、ASATSU-DK
- 原画:末吉裕一郎、大塚正実、高倉佳彦、佐藤雅弘、星野守、和泉絹子、尾鷲英俊、林静香、松山正彦、鈴木大司、吉田忠勝、篠原真紀子、松下佳弘、松本朋之、大久保修、清水健一、重頭巌、角張仁美、原勝徳、間々田益男
[編集] 主題歌
- オープニング:「ダメダメのうた」
- 挿入歌:「ケンとメリー ~愛と風のように~」
- 作詞・作曲・編曲:高橋信之/歌:バズ
- 挿入歌:「白い色は恋人の色」
- 挿入歌:「聖なる泉」
- 挿入歌:「今日までそして明日から」
- 作詞・作曲・歌:吉田拓郎
- エンディング:「元気でいてね」
オープニングテーマには『オラはにんきもの』のカバー曲である『オラたちはにんきもの』(歌:さっちゃん&しんちゃん(矢島晶子))が使用される予定だったが中止された。この曲は同作主題歌『元気でいてね』のCDのカップリングに収録されている(DVDの映像特典には『オラたちはにんきもの』と『元気でいてね』の2パターンのTVスポットが収録されている)。
[編集] VHS・DVD
[編集] 脚注
- ^ 浜野保樹編『アニメーション監督 原恵一』(晶文社、2005年) より。