クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ!
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『クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ 踊れ! アミーゴ!』(クレヨンしんちゃん でんせつをよぶ おどれ アミーゴ)は、2006年4月15日に公開された『クレヨンしんちゃん』の劇場映画シリーズ第14作目。ムトウユージが監督した2つ目の作品。上映時間は92分。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] あらすじ
よしなが先生、まつざか先生、上尾先生の三人は居酒屋で話をしていた。まつざか先生は幼稚園のお遊戯会の出し物としてサンバを踊ろうと提案するが、他の二人は難色を示す。やがて三人は解散。よしなが先生が人気のない夜道を一人歩いていると、何者かにつけられていると感じ走り出す。そして踏切を渡ったところで、自分そっくりの人間に襲われてしまう。
ある朝、しんのすけはいつものように幼稚園のお迎えバスを待たせていた。すると、バスからやけにノリの良いよしなが先生が。しんのすけは不思議に思いながらもバスに乗り、幼稚園に向かう。幼稚園の休み時間、マサオ君は「あいちゃんの様子がおかしい」と語る。確かにあいちゃんは、いつもは無関心なはずのマサオ君に対しやけに優しかった。マサオ君が「本物そっくりだけど、本物じゃない」と力説すると、ボーちゃんは「そっくりなニセモノが出没し、本物の人間はいつのまにか姿を消してしまう」という“カスカベ都市伝説”を雄弁に語り、一同を怖がらせた。
数日後、野原一家は大型スーパーマーケットに出かける。迷子になったしんのすけは、みさえとひまわりが2組いるという奇妙な光景に遭遇する。しんのすけはもう一人のみさえにお菓子をたくさん買ってあげると言われ捕まりそうになるが、「ツンデレ」と書かれた服を着た女性に助けられる。しんのすけが本物のひろしとみさえの元に戻ると、二人も「もう一人の自分に見られているような気がする」と思い始めていた。
そしてその気のせいはついに現実のものとなる。幼稚園で前々から様子のおかしかったよしなが先生と園長先生が、お遊戯会の出し物でサンバを踊ろうと言いだし、曲が流れた途端に踊り出した。どうやらこれはニセモノの習性らしく、あいちゃんや他の園児達も踊っている。危険を察知したまつざか先生、上尾先生、かすかべ防衛隊は幼稚園から逃げ出そうとするも、上尾先生はニセモノの黒磯の誘惑に負け、捕まってしまい、まつざか先生は自分を犠牲にしてしんのすけたちを逃がす。ひろしも会社で川口がニセモノであることを知り、帰宅時、ニセモノの川口に捕らえられそうになる。必死の思いで逃げ出したが、家に着くともう一人のひろしがしんのすけと入浴していた。どちらが本物かを巡って二人のひろしは戦い、股間の痛さの感じ方で決着がつきニセモノは逃げ出す。しかし、シロが今度はしんのすけを睨みつける。そして目の前で「チンチンカイカイ」をしてみせる。それに無反応のしんのすけはニセモノであることを見破られると、家を飛び出した。
本物のしんのすけたちは公園に集まっているが、現状を断固として信じない風間君は帰宅。他の隊員も、親たちの様子がおかしければ公園に戻ってくると約束して解散する。そして、風間君は自宅でニセモノに捕まってしまう。
野原家はニセモノの川口に再び見つかり、家に篭城しようと決意するも、ニセモノのひろしが阻止する。敵に囲まれて絶体絶命の所で、1台の車が野原宅に突っ込んでくる。車には本物のしんのすけと、「ツンデレ」のおねいさんが乗っていた。女性は SRI(「サンバのリズムいいね」の略)という組織の特捜員で、名前を「ジャクリーン・フィーニー」通称「ジャッキー」という。ひろしたちは車に乗り込み、公園でニセモノの風間君に捕まりそうになっていたネネちゃん、マサオ君、ボーちゃんも間一髪で助け出した。
しかし春日部は既にニセモノで溢れかえっており、ニセモノたちが虎視眈々と SRI の車を狙っている。そこで春日部を脱出して隣町に逃げ込もうと考えかすかべ山の山道を走るが、途中、ヨシリンやミッチーたちのニセモノに襲われ、ついに捕まってしまう。近くの小屋に連行されると、その中はコンニャク工場であった。実はこのコンニャクこそがニセモノの正体で、バイオテクノロジーの権威アミーゴスズキが作り出した「コンニャクローン」という技術で、大量のニセモノが生産されていたのだった。
果たして、アミーゴスズキがニセモノを作り出す目的とは、ニセモノがサンバを踊る理由とは何なのか。そしてアミーゴスズキとは一体何者なのか。
[編集] 概要
「周りの人間が信じられなくなる」という重たく暗いテーマをホラー映画風に盛り込んでおり、また馴染みキャラ(風間ママ、ミッチーなど)の顔が大きく変形したり、園長先生の首が直角に曲がったりする過激描写のため、劇場で泣き出す子供が続出したり、親子そろって逃げ出したりするなど、タイトルからは想像もつかない作品ではあるが、終盤の展開は非常に子供映画らしいギャグで締められる。本作の舞台は、しんのすけたちが住んでいる都市春日部のみという、非常に広範囲にわたって展開されている例年の劇場版作品と比べ、とてもスケールが小さい。
僧侶になり、アニメ脚本家として復帰することはないと思われていたもとひら了が脚本を手がけた。なお、もとひらがクレヨンしんちゃんの映画の脚本を手がけるのは、第1作目のハイグレ魔王以来13年ぶりのことである。また、平井峰太郎の絵コンテがファンから好評を博した。
脚本家の前評判の高さや試写会でのおおむねの好評などから期待する声が挙がり、映画評論家の前田有一がこの映画に75点という高得点をつけたが、ギャグとホラーの比率が合ってなく、従来の映画作品と比べても決して評価が高いとは言えない。また『ヤキニクロード』『3分ポッキリ大進撃』での反省点であった、黒幕の目的がイマイチ理解できないという難点も解消できていない。
作中に「ツンデレ」という言葉がでてくるなど、クレしん映画ならではの監督の趣味要素が見られる。また、監督自身が溺愛している風間君が多く登場。そのほか、劇場版にはほとんど登場しない脇役キャラも多く出演している。
ゲスト出演の長州小力は一人二役を演じている。テレビアニメの映画宣伝でしんのすけは「ちょっと怖いけど見に来てね」と言っていた。
作中の“そっくり人間”が喋る「バモス・ダンサール」という単語は、踊りを誘う意味を持つポルトガル語 "Vamos dancar" からとられていると思われる。
この作品の主題歌である倖田來未の「GO WAY!!」は公開後、携帯音楽配信サイト「ミュゥモ」のみでの販売となっておりしばらくCD収録がなされなかったが、2006年12月20日発売のオリジナルアルバム「Black Cherry」の初回盤限定収録のボーナストラックという形で初CD音源化された。
[編集] キャスト
- ネネちゃん:林玉緒
- マサオくん:一龍斎貞友
- ボーちゃん:佐藤智恵
- 酢乙女あい:川澄綾子
- 黒磯:立木文彦
- 川口:中村大樹
- 園長先生:納谷六朗
- よしなが先生:高田由美
- まつざか先生:富沢美智恵
- 上尾先生:三石琴乃
- 風間ママ:玉川紗己子
- マサオママ:大塚智子
- ヨシリン:阪口大助
- ミッチー:大本眞基子
- 園児:友永朱音、足立友
[編集] スタッフ
- 監督:ムトウユージ
- 脚本:もとひら了
- キャラクターデザイン:原勝徳
- 作画監督:原勝徳、大森孝敏、針金屋英郎、間々田益男
- 絵コンテ:ムトウユージ、きむらひでふみ、増井壮一、平井峰太郎
- 演出助手:平井峰太郎
- 美術監督:川口正明、古賀徹
- 色彩設計:野中幸子
- 撮影監督:梅田俊之
- 特殊効果:干場豊(アニメフィルム)
- 編集:岡安肇
- ねんどアニメ:石田卓也
- CGI:つつみのりゆき・柏原健二(シンエイ動画)、福田寛(旭プロダクション)
- 音響監督:大熊昭
- 音楽:若草恵、荒川敏行、丸尾稔
- チーフプロデューサー:茂木仁史、太田賢司、生田英隆
- プロデューサー:和田泰(シンエイ動画)、西口なおみ(テレビ朝日)、すぎやまあつお(ADK)
- アシスタントプロデューサー:大澤正享(シンエイ動画)
- 制作デスク:吉田有希、馬渕吉喜
- 制作委員会:テレビ朝日/濱田千佳・杉山登、ADK/小川邦恵・萬代知
- 制作:シンエイ動画、テレビ朝日、ADK
- 原画:高倉佳彦、林静香、和泉絹子、牧原亮太郎、末吉裕一郎、大塚正実、増田敏彦、松山正彦、茂木琢次、山口保則、長谷川哲也、赤田信人、植村淳、大城勝、山口明子、加来哲郎、大杉宣弘、松下浩美、石井智美、平川哲生、吉田正幸、高橋晶、奥野浩行、橋本英樹、原田節子、松本昌子、吉田徹、亜加木博秋、霜山朋久、小島彰、重本雅博、西澤千恵、辻理恵子、松田博美、角張仁美、樋口善法、鈴木勤、谷口淳一郎、中原清隆、金子志津枝、原勝徳、大森孝敏、針金屋英郎、間々田益男
[編集] 主題歌
- オープニングテーマ:「ユルユルで DE-O!」
- エンディングテーマ:「GO WAY!!」
- 作詞、歌:倖田來未/作曲、編曲:小松寛史