コンパクトシティ
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コンパクトシティ(Compact City)とは、主にヨーロッパで発生した都市設計の動き、またその背景にある思想・コンセプト。アメリカではニューアーバニズム、イギリスではアーバンビレッジが同様の概念を打ち立てている。
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[編集] 背景
[編集] 進む中心市街地の空洞化
中心市街地の空洞化現象が1990年代より日本各地で顕著に見られるようになった。特に鉄道網の不十分な地方都市においては自動車中心社会(車社会)になり、郊外に住宅地開発が進み、また巨大ショッピングセンターが造られ、幹線道路沿線には全国チェーンを中心としてロードサイド型店舗やファミリーレストラン、ファーストフード店などの飲食店が張り付いて、競争を繰り広げている。また商業施設のみならず公共施設や大病院も広い敷地を求めて郊外に移転する傾向が見られる。一方、旧来からの市街地は車社会にしては街路の整備が不十分である上、権利関係が錯綜しており、市街地開発が進まなかった。特に、昔から続く自然発生型の商店街は、道路が狭く渋滞している、駐車場が不足している、活気がなく魅力ある店舗がないなどの理由で敬遠されて衰退し、いわゆるシャッター通りが生れている。
[編集] 郊外化の問題点
しかし、こうした郊外化は多くの問題点を抱えている。
- 自動車中心の社会は移動手段のない高齢者など「交通弱者」にとって不便である。
- 無秩序な郊外開発は持続可能性、自然保護、環境保護の点からも問題である。
- 際限のない郊外化、市街の希薄化は、道路、上下水道などの公共投資の効率を悪化させ、膨大な維持コストが発生するなど財政負担が大きい。
[編集] コンパクトシティの発想
こうした課題に対して、都市郊外化・スプロール化を抑制し、市街地のスケールを小さく保ち、歩いてゆける範囲を生活圏と捉え、コミュニティの再生や住みやすいまちづくりを目指そうとするのがコンパクトシティの発想である。1970年代にも同様の提案があり、都市への人口集中を招くとして批判されていたが、近年になって再び脚光を浴びるようになった。再開発や再生などの事業を通し、ヒューマンスケールな職住近接型まちづくりを目指している。
交通体系では自動車より公共交通のほか、従来都市交通政策において無視に近い状態であった自転車にスポットを当てているのが特徴である。
[編集] 推進例
札幌市、仙台市、青森市、稚内市をはじめとした東北・北海道の都市と神戸市などがコンパクトシティを政策に取り入れている。青森市では郊外の発展により除雪費用が膨大になり市の財政を圧迫していることなどから、郊外の開発を抑制し、中心市街地の再開発に重点を置く施策を取り、成果を上げているという。
比較的コンパクトシティ化しやすい都市の要素として、
などが考えられる。
近年、地方都市において地価が下落したことや、工場跡地等の格好の更地が出現したこともあって、一定規模以上の都市(例:福井市、大阪府枚方市、鹿児島市)では中心市街地にマンション開発が進むなど、コンパクトシティの方向への動きも見られる。結果、首都圏や京阪神などといった大都市圏の中心部に顕著な都心回帰が、一部の地方都市においても見られるようになった。
[編集] コンパクトシティ誘導政策
国土交通省も、コンパクトシティを目指すべく政策転換を進めている。1998年制定のまちづくり3法(改正都市計画法、大規模小売店舗立地法、中心市街地活性化法)が十分に機能しておらず、中心市街地の衰退に歯止めがかかっていないとの問題認識から、見直しが行われ、そのうち都市計画法、中心市街地活性化法が改正された(2006年6月、2006年8月施行)。この改正については、福島県等で問題になった、郊外への大型量販店やショッピングセンターの立地抑制に狙いがあるのではないかとの批判がある。
[編集] 課題
一方、以下のように、課題は多い。
- 既に拡大した郊外をどう捉えるのか
- 都市計画をツールとして有効に活用できるか
- 従来も、都市計画が真に有効に機能しておれば防げたことは多いのではないか。現状追認に終始してきたのではないか。
- 自動車への依存を克服できるのか
- 通勤や買い物に事実上使えないほど公共交通が衰退している地方都市は多い。
- 郊外の発展を抑えれば中心市街地が再生するのか
- 市街地拡大の抑制そのものが目的と誤解され、街のにぎわいを取り戻し再生させるという本来の目的が忘れ去られる恐れがある。例えば、郊外化を抑制する目的で郊外へのショッピングセンター立地を抑制するという名目での、活性化策を自ら企画実施しようとしない既存商店街保護へのすり替えの恐れがある。
[編集] 参考文献
- 山本恭逸(編著)『コンパクトシティ 青森市の挑戦』(ぎょうせい、2006年)