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サイリックス - Wikipedia

サイリックス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

サイリックス (Cyrix) は1988年に創設された、8028680386系の高性能の数値演算プロセッサの供給元でもあるCPU製造・販売会社である。会社はテキサス・インスツルメンツ (TI) 出身の人員より構成され、長い期間、TIとのトラブルが生じていた。

サイリックスの創設者ジェリー・ロジャーは、技術者を積極的に集め支援し、30人の少数であるが、有能なまでのデザインチームを構成した。

サイリックスは、1997年11月11日に、ナショナル セミコンダクターと合併した。

目次

[編集] 製品

PC市場への最初のサイリックスの製品は、X87に互換性のあるFPUコプロセッサである。サイリックスのFasMath、83D87、83S87は1989年に発表された。これは、80387互換の高速なコプロセッサインテルの387DXと比較し50%以上の高性能であった。

1992年に発表された、486SLCや486DLCを含む早期のCPU製品は、その名前にもかかわらず、386SX及びDXそれぞれに対して、ピン互換性が存在していた。それらは、チップ上にL1キャッシュと、486の命令セットが追加されていたにもかかわらず、性能的には386と486の間のチップであった。チップは、エンドユーザーが古くなった386の性能を向上させるためにアップグレードで使用されたり、業者が売れ残った386のボードを低予算の486のボードにするために使用された。チップは、その名前に相当する性能が無いという点で、製品の批評で非難されていた。また、サイリックスのSLCに関連しない、インテルのSLラインとCPUのIBMSLCラインに同様の名前があり混乱を引き起こしていた。CPUは非常に低コストのクローンPCやラップトップPCで使用されていた。

サイリックスは後に サイリックス486SRX2と486DRX2を発表した。これは、SLC、DLCのクロックを2倍にしたもので、386から486へのアップグレードを行う消費者に販売された。

その時、サイリックスは、インテルの競合品とピン互換性のある486を発表することは可能であった。しかし、そのチップはアドバンスト・マイクロ・デバイセズ (AMD) の486より市場への投入が遅く、ベンチマークではAMDやインテルの競合品より若干遅かった。そのため、それらの製品は、低予算でアップグレードをするための市場へ投入された。AMDが486の一部をOEMで、特にエイサーコンパックに供給することができていたが、サイリックスはできなかった。サイリックスのチップは、アップグレードを行う人に使用された。その理由として、サイリックスのCPUは5Vで、50-、66-、80MHzで動作する486CPUである点、これは、サイリックスのチップが初期の486のマザーボードでのアップグレードに利用できたため、AMDのチップが使用していた3.3Vより好まれた。

1995年Pentiumのクローンがまだ出荷準備ができていない時に、サイリックスは前回と同じことを繰り返し、Cx5x86を発表した。これは、486ソケットにさすことができ、100、120、133MHzで動作し、75MHzのPentiumに相当する性能を示した。AMDのAm5x86が新しい名前で、4倍より少し速い486であるのに対し、サイリックスの5x86はPentiumの様な特徴を持っていた。

1995年の終わり、サイリックスは良く知られているチップ、6x86を発表した。これは、競争していたインテルのチップの性能を超えた初めてのサイリックスのCPUであった。最初、サイリックスは追加の性能に対して、価格の上乗せを試みたが、6x86の数値演算コプロセッサは、インテルのPentiumほど速くなかった。自分中心に画面が動く3次元ゲームの人気により、サイリックスはその価格を下げざるを得なかった。AMDのチップが主要なOEM顧客により使用されるのとは異なり、6x86はコンピュータファンや個々のコンピュータショップで人気を得た。

後の6x86Lは、6x86の低パワー版で、6x86MXは、MMX命令セットを加え、L1キャッシュを大きくした。6x86MXのデザインを元にしたMIIは、Pentium IIIと比較してよい性能を示すチップであることを示そうと、少々の名前の変更が行われた。

1996年サイリックスは、MediaGXのCPUを発表した。これは、音声やビデオの様なPCで必要な主な別々の構成要素の全てを1つのチップに集積化したものであった。これは、120、133MHzで動作し、旧5x86の技術に基づいていたため、性能は酷評されていたが、その低価格は大成功であった。MediaGXは、コンパックが低価格のプレサリオ (Presario) 2100や2200のコンピュータで使用され、サイリックスの最初の大成功となった。これは、MediaGXをパッカードベルに販売することにつながり、6x86がパッカードベルやeMachinesに採用されることにより、サイリックスの行ってることの正しさを示した。

MediaGXの後のバージョンでは、MMX技術を加え、333MHzのスピードでの動作が可能となった。2番目のバージョンでは、ビデオの処理能力が拡張された。

[編集] PRレーティング

6x86はインテルのPentiumより命令対命令間の基本部分に効率的な処理を行っていた点と、インテルやAMDよりバスのクロックが速いものを使用している点から、サイリックスとその競合のAMDはお互いに、インテルより製品を比較した場合、議論の的になるが、より有利なPRレーティングの評価方法を発達させてきた。6x86は133MHzで動作するため、一般的なベンチマークでは166MHzのPentiumより僅かに早く、133MHzの6x86は6x86-P166+と記されていた。Pentium以外の製品に"P166"や"P200"の文字を使用することに対して、インテルは法律的な行動を起こし、サイリックスはその名前の後ろに"R"の文字をつけることで対処した。

PRレーティングは、業務アプリケーションの様な浮動小数点演算を使用しない場合の値であり、サイリックスのチップはインテルのものより一般的に良い評価となるが、クロック対クロックの基準で比較すると、チップは浮動小数点演算において遅く、最新のゲームを動作させると浮動小数点演算を利用するため、PRレーティングは破綻すると議論の的になっていた。加えて、6x86の価格は低価格のシステムに利用可能であることを示したので、高速のハードディスクビデオカードサウンドボードモデムを装備したPentiumのマシンと比較した際に、性能をさらに落とすことができることを示した。

AMDは初期のK5チップにはPR評価に使用していたが、AMDはすぐPRレーティングを使用することを放棄した。しかし、後のCPUの宣伝で、同様のコンセプトを使用する際には再度使用した。

[編集] 製造パートナー

サイリックスはファブレスの会社であった。サイリックスはチップをデザインし、それを販売していたが、外部の半導体製造ファウンダリーと契約を行っていた。初期の時代には、サイリックスは、テキサス・インスツルメンツ (TI) やSGSトムソン(現在のSTマイクロエレクトロニクス)を使用していた。1994年には、TIとはいくつかの見解の違いで、SGSトムソン社とは、製造を続けることが困難であることから、インテルのライバルであるIBMマイクロエレクトロニクスに製造を変更した。

IBMマイクロエレクトロニクスとサイリックス間の製造に関する同意の一部として、サイリックスが設計したCPUをIBMの名前で製造、販売する権利を許可した。推測では、IBMが6x86のCPUをIBMの製品に広く使用しようとしていたのだろう、これによりサイリックスの評判は上昇した、IBMはインテルのCPUを大量に使用していたものの、その量を減らしつつあり、AMDのCPUを主要製品に採用し、一部の廉価版モデルにサイリックスのデザインのものを使用しつつあった。そのほとんどが、アメリカ合衆国の外で売られるものであった。IBMは6x86のチップを外部市場で販売するより、サイリックスと対抗して、しばしば、サイリックスの価格を引き下げた。

[編集] 法律上のトラブル

AMDと異なり、サイリックスはライセンス交渉の元、インテルのデザインを製造販売することは無かった。サイリックスの設計は、社内のリバースエンジニアリングの詳細な解析結果であった。そのため、AMD386と486はインテルの作成した、機械語のソフトが動作したが、サイリックスの設計したものでは完全に動作しない場合もあった。潜在的な競争相手を取り除いたため、インテルはサイリックスに対して何年も法的な争いを行ってきた。その内容はサイリックスの486がインテルの特許を侵害しているというものである(インテルは他のx86系のCPUの製造の権利を1998年までにした)。

全般的にインテルはサイリックスのケースにおいては敗訴した。しかし、最終的な決着は法廷の外で行われた。インテルは、サイリックスが彼らがx86の設計をインテルのライセンスを既に所有しているどのファウンダリーでも製造することができる権利に同意した。両者ともこれにより以下のものを得た。サイリックスは、自分たちのCPUをテキサス・インスルメンツや、SGSトムソン、IBM(この時、この3社ともインテルとのクロスライセンスを所有していた)で製造を続けることができたし、インテルは潜在的な金銭的損失を避けた。

続く1997年、サイリックス・インテルの訴訟は逆方向に行われた。サイリックスの486チップがインテルの特許を侵害していると訴える代わりに、サイリックスがPentium ProPentium IIがサイリックスの特許―特に、パワー・マネージメントとレジスタ・リネーミング技術―を侵害していると訴えた。この状況は何年も引っ張ると予想されていたが、結局法廷外で決着した。実際、相互クロスライセンスによって、非常に簡単に決着した。これにより、インテルとサイリックスはお互いの特許を自由に使用することができた。この決着は、Pentium Proがサイリックスの特許を侵害しているかどうかについては言及しなかった。単に、インテルにそれらのCPUを続けて使用できる様に許可しただけだった。―正確には、その前の決着のように、サイリックスの486がインテルの特許を侵しているというインテルのクレームを避けただけだった。

[編集] ナショナル セミコンダクターとの合併

1997年8月、訴訟が進んでいる間に、サイリックスはナショナル セミコンダクターと合併した(ナショナル セミコンダクターは既に、インテルとのクロスライセンスを持っていた)。これは、サイリックスに更なる市場を供給し、ナショナル セミコンダクターの製造工場を使用できる様になった。その工場は元々RAMや高速通信のアナログ回路を作っていたものであった。RAMとCPUの製造は類似しているため、その時のアナリストは、この統合が納得できるものだと信じていた。IBMの製造同意はしばらくの間続いていたが、サイリックスは最終的に全ての製造をナショナル セミコンダクターの工場で行うことにした。合併はサイリックスの財務状態を向上させ、サイリックスが先端の設備を使用することが可能な状態にした。

合併は同時に、リソースの集中先を変更させた。ナショナル セミコンダクターの優先度はMediaGXの様にシングルチップの安価なデバイスであり、MIIや6x86の様な高性能のチップでなかった。修正版の6x86はインテルのPentium IIと直接競合しようとしたものであった。ナショナル セミコンダクターはサイリックスが高性能のチップを作る能力を疑っているか、インテルと市場で高性能なもので性能を公開して争うことを恐れていた。MediaGXは市場では直接の競争相手は存在せず、低コストのPCの生産のためOEM継続の要望があり、これが安全策に見えた。

ナショナル セミコンダクターはサイリックスが合併した後、財務的な問題に直面し、この問題はサイリックスを同様に痛めつけた。サイリックスがMIIにPR-300からPR-333の間を進めている一方で、1999年まで、AMDとインテルはクロックスピードを450MHz以上に大きく向上させた。どちらのチップも実際には300MHzでは動作していなかった。MIIモデルの多さが引き起こす問題は、83MHzの標準バスで使用されていた点であった。Socket 7のマザーボードの大多数は、通常の30MHzか33MHzをPCIバスの固定された1/2分周器でクロック供給して使用していた。MITの83MHzバスでは、これはPCIバスが41.5MHzの性能外で動作させる結果となった。このスピードで、PCIのデバイスは安定せず、動作しないことが多かった。一部のマザーボードは1/3分周器をサポートしていた。そのボードの場合、PCIバスは27.7MHzで動作する結果となった。これはより安定的であるが、逆にシステムの性能に影響を与えた。この問題は、最終的に、100MHzバスで動作するいくつかのモデルにおいて修正された。そうしているうちに、MediaGXはインテルとAMDの低価格のチップの圧力に直面した。それは、より高性能な特性を得るために、それ程金額を払わずに手に入れることができた。サイリックスの製品は1996年では性能の良い製品であると考えられていたが、それが、真ん中くらいの価格に落ち、リストにあると言うレベルに、そして、リストの端に載っているというレベルになり、市場を完全に失う危険な状態となった。

サイリックスの最後の低価格のマイクロプロセッサは300MHz(100x3)で動作するサイリックスMII-433であり、AMD K6.2-300と比較してFPU計算で速かった(Dr. Hardwareのベンチマーク)。しかし、このチップは他の製造元の本当に433MHzで動くプロセッサに対しての競合品であった。たとえそれがサイリックス自身の宣伝により直接行われたものであったとしても、この比較は公正なものではなかった。

ナショナル セミコンダクターはCPU市場から距離を置いており、サイリックスのエンジニアはそれぞれバラバラになってしまった。その時まで、ナショナル セミコンダクターはサイリックスをVIAテクノロジーに売り渡し、設計チームは存在せず、MIIの市場は消滅していた。VIAはセントール社やVIAより、サイリックスの名前のほうが市場での認識が良いと信じて、サイリックスの名前をセントール・テクノロジー (Centaur Technology) により設計されたチップに使用した。

ナショナル セミコンダクターはMediaGXの設計をもう数年続けたが、それをGeodeの名前で残し、それを集積プロセッサとして売ろうと考えていた。2003年AMDにこのGeodeの権利が売り渡された。

2006年6月AMDは0.9Wの消費電力の低パワープロセッサを公開した。このプロセッサはGeodeのコアに基づいており、サイリックスの技術的工夫がまだ生き残っており、これからも生き残ることを示している。

[編集] 遺産

会社は短期間のみ存在し、そのブランド名は現在の所有者によってもはや使用されていないが、AMDとの競争は、低価格のCPU市場を作り出した。これは、PCの平均価格を引き下げ、インテルが低価格のプロセッサとしてそのCeleronの生産ラインを作らせ、より速いプロセッサをよりすばやく競合できるように価格を下げるに至った。

加えて、VIAによるサイリックスの知的資産と契約の獲得は、VIAサイリックスの名前の使用をやめた後も、インテルとの法廷闘争から自分を守ることなった。

これは、http://www.redhill.net.auにあるドキュメントの編集バージョン(訳注:この翻訳は翻訳版となります)であり、使用許可をとってある。適切でない部分は省略されている。

[編集] 外部リンク

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