ゼリー
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ゼリー(英:jelly、仏:gelee ジュレ、独:GeleeあるいはGallert)とは、冷えて固まった肉汁や魚汁の煮こごり、または、果汁やワインなどに砂糖などで甘味を加え、ゼラチンなどを添加して固めたものを言う。
ゼリーは一般に弾性のある半固体の状態のものであり、触れた際の抵抗を持つが強い圧力などによってはつぶれるという特徴がある。同様の特徴をもつ物質・物体についてもゼリー状と称することがある。化学的にはコロイド溶液のゲルである。
この項目では料理や菓子を中心とした食品としてのゼリーとそのゲル化剤を主に記述し、その他のゼリー形状を取るものについても触れる。
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[編集] 語源
現代の英語ではjellyと表記されているが、1381年の英語における初文献には"gele" という記述が見られる。ゼラチン、ジェラータ、ジェルの語源でもある、ラテン語のgelare(ゲラーレ、「凍る、固まる」の意)が由来ではないかと考えられている。フランス語のジュレも同じ語源から来ている。
[編集] 歴史
食品としては古くから知られており、ローマ時代には煮こごり料理も存在していたようで、現代の肉や魚のゼラチン質を含んだブイヨンから作られる「ゼリー寄せ」(アスピック、aspic)の原型とも考えられている。
菓子において「ジュレ」として広く用いられはじめたのは、18世紀末から19世紀初頭、王政華やかだったフランスが革命を経て変遷していく時代、著名な料理人であり製菓職人でもあったアントン・カレームによると考えられている。当時の製菓用ゼリーには専らゼラチンが用いられていた。冷蔵技術の発達した現代のゼリーが水分に対し約3%のゼラチンで作られているのに比べ、当時は1.5〜2倍の量が用いられており、しっかりした食感であったと考えられる。
[編集] 食品の種類
ゼリーは、果汁、ゼラチン、砂糖の組み合わせで作るシンプルな生菓子を基本とする。 これに、香料、果肉、乳製品、鶏卵、酸味料などを加えることで、多くのバリエーションが生まれる。
ペクチンによりゲル化させたジャムをはじめ、果汁などに砂糖を多量に加えたゼリーなどの加工品は、糖菓(コンフィズリー)としても認知されており、 ゼリービーンズ、ジェリーベイビー(赤ん坊の形に作ったゼリー)、グミなど一口大のゼリー菓子が存在する。また、ジャムを用いている事からアメリカでは、ドーナッツにジャムの入ったものをジェリードーナット、スポンジケーキにジャムを塗って焼いたものをジェリーロール(jelly roll)とも称されている。
その他、日本ではコンニャクに果汁等を混ぜて固めたコンニャクゼリーが販売されている。食物繊維が多いコンニャクの特徴に着目したものであり、ゼラチンを原料としたゼリーに比べて健康、ダイエットによいとされる。ゼラチンのものに比べて弾力性が高く、幼児などが噛みつぶせないおそれも指摘され、一口づつ噛み切って食べるように形状等の工夫がはかられた。
菓子の分野だけでなく、高齢や障害により嚥下障害を持つ者に対し、液体によって咽ることなく水分を補給する為に、また、食事を食べやすくするために、ゼラチンやペクチンなどを混合してゼリー状するといった工夫にも用いられている。こうした高機能食品は、高齢化社会を迎える日本では需要が高まると予想されており、官民一体となった研究開発が進められている。
[編集] ゲル化剤の種類と歴史
動物系のゼラチン以外にも、植物系のペクチン・寒天・カラギーナンなどのゲル化剤で凝固させたものも、広くゼリーとして称されている。
- ゼラチン
- ゼリーの元でもあるゼラチンは、動物や魚の骨や皮革や腱などの結合組織の主成分コラーゲンが熱により軟化してできるもので、アスピックだけでなく日本料理に煮凝りといった同種の料理もあるように、動物の肉や魚を骨ごと煮るといった初歩的な料理がはじまった時から、食品として知られていたとも考えられる。精製技術が確立する以前には、製菓用のゼラチンは鹿の角を煮出して作られていた。現在、製菓用には、豚皮由来のものが多く使われている。
- ペクチン
- 果物を糖分とともに煮詰めると、一般的にジャムとして知られている状態になる場合がある事も古くから知られていた。これは、すべての果物や植物に含まれている天然の多糖類の作用によるもので、1825年にその成分はペクチンと名付けられた。材料に対し1%以上のペクチンと約65%の糖分、さらに酸味がなければ固まらず、砂糖の量産化が進んで以降、ジャムなどとして広く料理や製菓に用いられ始めたと考えられている。ペクチンが工業生産されはじめたのは20世紀後半で、ゲル化剤・増粘剤・安定剤などの名称で現代の菓子や食品に広く用いられている。
- 寒天
- テングサ(天草)やオゴノリなどの紅藻類海藻の粘液質を凍結・乾燥させたもので、17世紀後半に日本で作られた。羊羹やういろうなどの和菓子などに広く用いられている。1881年には細菌の培地としての有用性が認識され、寒天培地として世界に広まった後、欧米でも食品として認知された。
- カラギーナン
- アイリッシュ・モス、通称トカチャとも言われる、紅藻類海藻から抽出されるゲル化剤。アイルランド大飢饉の際、アイルランド・カラギーナン地方でこの海藻を食べて飢えをしのいだと言われている事からこの名で呼ばれている。カラギーナンは熱によって煮とかす他のゲル化剤とは異なる特性を持つ。κ(カッパ)型・ι(イオタ)型・λ(ラムダ)型の3種類のタイプがあり、なかでもκ型は牛乳に含まれるタンパク質カゼインと混ざる事でゲル化するため、牛乳に混ぜるだけでできるインスタントデザートなどに広く用いられている。
動物由来のゼラチンを避け、植物由来のゲル化剤を用いたゼリーを求めるヴェジタリアンもいる。また、狂牛病の影響で、牛由来のゼラチンは敬遠されている。
[編集] 食用以外のゼリー
化学などでジェル(ゲル、膠化体)という場合、液体を媒体とする分散系が、ゼリー状に固化した物を言う。食品以外にゼリー状と形容されるものとして以下のものがある。
- 粘着性を発揮しやすくする為に物体間の隙間に入り込めるゼリーの特質を生かしている。
- 粘膜への刺激を抑える、水分の蒸発を抑える、容易に広げられる利点を生かしたゼリー状の製品が塗り薬を中心に多く見られる。
- 発火剤
[編集] 参考書籍
- W・J・ファンス編 辻静雄訳『現代洋菓子全書』三洋出版貿易
- 吉田菊次郎著『洋菓子事典』主婦の友社 ISBN 4-07-933424-9
- 吉田菊次郎著『洋菓子の世界史』製菓実験社
- 小林彰夫編集『菓子の事典』朝倉書店 ISBN 4-254-43063-9
- ジャン・ボテロ著 松島英子訳『最古の料理』法政大学出版局 ISBN 4-588-02218-0