デビットカード
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
デビットカード(英:Debit Card)は、店頭での支払い決済において、日本では銀行などの民間金融機関と郵便貯金の預貯金口座から引き落として支払う事が出来るカードのこと。debitとは簿記用語で「借方」の意。
日本では、通常、キャッシュカードをそのままデビットカードとして使用し、決済時には口座の暗証番号を使うため、端末には暗証番号が他人に見えないよう、一般に被いや偏光板が付けられている。
クレジットカードと異なり即時決済となるため、デビットカードの発行にあたって一般に年齢制限や審査は無いが、預金口座残高が無ければ支払をすることはできない。但し、総合口座での担保定期預金(貸越)やキャッシングサービス契約を準備するなどして与信枠を用意することで、決済口座に対する自動借入れをした上での決済することは可能である(もちろんこの場合は現金引出しと同様に当該口座はマイナス残高となる)。
目次 |
[編集] ジェイデビット
日本ではジェイデビット(J-Debit)というサービス名で、2000年3月6日にデビットカードサービスが本格的に開始された。対応金融機関は2006年6月現在で1708機関(郵便貯金を含む)、店頭端末数は同25万台を数え、2005年度の取引実績は約1176万件、8014億円に至っている。
ジェイデビット機能は加盟金融機関のキャッシュカードに自動的に付帯され、利用に際する利用料(手数料)なども一切発生しないが、金融機関によっては利用上限額を設定したり、デビット機能のみを止めることも可能である。
[編集] ジェイデビットの利用可能時間
加盟店設置端末と対応金融機関との口座照会の通信を即時に行うことで支払が完了するが、利用金融機関ごとに夜間や正月三が日などの銀行休業日に通信不能な時間帯が定められており、ジェイデビットサービスの利用可能時間帯は口座のある金融機関ごとに異なる。このため、協議会では「コア時間帯」として正月三が日と大型連休を除く平日8:00~21:00、土日祝9:00~19:00は必ず利用できるよう整備することを加盟金融機関に求めており、利用者の便宜を図っている。
[編集] ジェイデビットの欠点
しかしながら、ジェイデビットの殆どの加盟店は、設置している信用照会端末(CAT)またはPOSレジのクレジットカード取扱に加えてジェイデビット取扱も出来るようになっているだけであり、物販店や宿泊施設などのサービス業でジェイデビットの取扱店では逆にクレジットカードも使えるところから、
- 利用者側から見た場合
- クレジットカードと違ってポイントサービスなどの還元がないか、あっても還元率が低い。
- ただし、量販店のポイント還元率では、クレジットカード払いよりも還元率が高い(現金払いと同じ)社が多い。
- クレジットカードと違って24時間利用できない場合がある。例えば、ジェイデビットを取り扱っているタクシーでも、深夜は取り扱いできない金融機関が多い。
- 磁気クレジットカードは取引時の暗証番号入力は不要(署名が必要)だが、ジェイデビットではそのキャッシュカードの預貯金口座の暗証番号を入力する必要があり、ATM取引同様に番号の盗み見やスキミング(すくい取り。カードや端末に入力される情報の不正取得)の危険性がある。
- 現状、クレジットカード会社・ジェイデビット対応金融機関全てがICクレジットカード・キャッシュカード(デビットカード)の暗証番号を使った取引で、第三者が一致する暗証番号を使用して不正な取引が成立した場合の補償規定がない(各金融機関が独自に保険を掛けているものを除く)。
- クレジットカードと違ってポイントサービスなどの還元がないか、あっても還元率が低い。
- 加盟店者側から見た場合
- 近年、電子マネーが普及し始めており、1000円前後の少額取引では利用手順がスピーディーな電子マネーに既存の現金やデビットカードの利用者が流れる可能性がある。(既にマツモトキヨシ・ビックカメラ・ヨドバシカメラの主要店舗ではクレジットカード・デビットカード・電子マネー(数社)と、プリペイドカード或いは商品券の取扱と現金の5種類の決済手段が利用可能である。)
- 加盟店側が金融機関と直接契約せず、クレジットカード会社や情報処理センターと契約する「間接加盟店」の場合、加盟店への実際の入金がクレジットカード利用の場合と同じく月1~5回程度となることから、手数料面を除くとクレジットカードと扱いは同等であるため、早期入金などのメリットがあまり無い。
など、ジェイデビットはクレジットカードに比べ多くの対象者が簡便に利用できる裾野の広いサービスである反面、クレジットカードに比して不便な場合や特有の危険性も指摘されている。
このほか加盟店には一部の証券会社も含まれており、窓口での現金の収受の代わりに、顧客のキャッシュカードの預貯金口座から、証券会社内の顧客の証券総合サービスの預かり金もしくはMRF購入金として、顧客側は無手数料で入金が出来るようになっている。
[編集] ジェイデビット用暗証入力器の視覚障害者対応
現在、銀行のATMなどでは、数字キーがタッチパネルになっていたり、配列が電話番号配列であったり、電卓・テンキー配列であったり、あるいは左から順番に並ぶものになっていたりとさまざまで統一されておらず、視覚障害者にとって使いやすいとは言いがたい状態になっている。 ジェイデビットサービス開始前の1998年から約1年間行われていた郵便貯金大宮ICカード実証実験では、実験に参加した視覚障害者から、ボタンの配列について一貫性がないことの指摘を受けた。同ICカード実証実験の実験端末機はすべてボタン式電話式配列のものに配列を変え実験は終了したが、このことはジェイデビットにも生かされ、郵便貯金の提案で全ての端末機のPINパッドがボタン・電話配列式に統一されている。
しかし、配列の固定は手指の動きから入力数字を悪意に推測される可能性から、周囲への露見を防ぐ必要があり、近年のキャッシュカードの盗難・偽造の犯罪の増加から、キャッシュカードをそのまま利用することの多い日本のデビットカードサービスでは、操作性と安全性とを両立した構造が求められている。
[編集] 旧東京三菱銀行が参加しなかった理由
都市銀行で参加していないのは旧東京三菱銀行のみであるが、旧UFJ銀行との合併に伴い誕生した三菱東京UFJ銀行では、両行のシステムが並存する現在、旧UFJ店の口座で発行されたキャッシュカードのみデビットカードとして利用可能である。両行のシステム完全統合による今後の動向が注目される。なお、同じく三菱UFJフィナンシャル・グループに属する三菱UFJ信託銀行はジェイデビットに参加している。また、旧東京三菱銀行も京都市及び滋賀県の一部で導入されている独自のデビットカードシステム「きょうと情報カードシステム(KICS)」(1998年9月にジェイデビットに先駆けて導入された)には1998年11月から参加しているので、三菱東京UFJ銀行の旧東京三菱店発行のカードでもこちらは利用可能である。
旧東京三菱銀行がジェイデビットに参加しなかった理由として、そもそもジェイデビットは旧郵政省が主導で作られたサービスでもあり、大蔵省寄りであり民間銀行主導のシステム構築を企図していた旧東京三菱銀行が強く反発した経緯がある。
[編集] 海外のデビットカード
デビットカードは、その本場であるアメリカでは、当座預金(checking account)口座を開設した顧客に対して与えられるATMカードとなっている(例外もあり)。日本のものと同様、デビットカードを使用した店頭での支払いについては、数日以内に当座預金口座から支払い金額が引き落とされる。ちなみに、デビットカードはもともと小切手(check)の代用として登場したためチェックカードと呼ばれることもある(日本国内では、ユニオン・バンク・オブ・カリフォルニアのchecking accountを三菱東京UFJ銀行のメールオーダー取り次ぎによって作成することで海外利用は可能)。
しかし、アメリカのデビットカードはJ-Debitサービスを利用した日本のデビットカードとは大幅に異なる特徴を備えている。それは、クレジットカードの国際ブランド(VISAインターナショナルやマスターカード)と提携することで、決済時における機能としてはクレジットカードとほぼ同様(サービス供給側への信用力の提示機能はない)の機能を有していることである。このためVISAやマスターカードが使える店ならどこでも使用可能となっており、その範囲は極めて広いものとなっている。ただし、クレジットカードではないので、信用情報には影響を与えないが、一部のカード(Bank of America Platinum Check Cardなど)は通常のクレジットカードとほぼ同等の盗難・紛失時やスキミングによる不正使用に対する保証が付随している。
[編集] アメリカのデビットカード
- VISA Electron
- Maestro
- NYCE - ATMネットワークであるがデビット機能も保有
- pulse EFT - 電子為替(EFT)規格・運営団体 銀行やクレジットカード会社が加盟
[編集] ヨーロッパのデビットカード
- VISA DELTA(イギリス)
- SWITCH(イギリス) - マエストロと提携
-
- SOLO(イギリス) - 18歳未満の者を対象とするSWITCHの姉妹カード
- LASER(アイルランド)
[編集] その他各国のデビットカード
[編集] 日本の海外デビットカード
なお、アメリカのデビットカードと同じような機能を持つデビットカードは、数は少ないものの日本でも発行されている。クレディセゾンと郵便貯金の共用クレジットカードである『郵貯チェックカード《セゾン》』はVISA Internationalによるデビットカード機能「VISA Electron」(w:en:Visa Electron)が搭載されており、ソニー銀行の『MONEYKitグローバル』は、MasterCard Internationalによる国際キャッシュカード機能Cirrusと、デビットカード機能Maestro(en:Maestro)が、東京スター銀行の『TOKYO STAR DEBIT』は、CirrusとMaestroと、全世界のMasterCard加盟店で預金口座の範囲内で利用が出来、利用代金が随時引き落とされるチェックカード「MasterDebit」機能が搭載されている(ただし、2006年12月1日以降にTOKYO STAR CARDを申し込んだ人には、当面『TOKYO STAR DEBIT』の発行を見合わせることになっているため、現状では申込不可である)。
旧さくら銀行では、「キャッシュパスポート」という国際キャッシュカードに日本で初めてMaestro機能が搭載され、海外で利用ができた。このサービスは、口座が必要でローン機能が付いているもの(キャッシュパスポートfor EXECTIVE)と、口座が不要なタイプ(キャッシュパスポート for TRAVEL)を発行することができた。
三井住友銀行になってからはシステム統合などによって旧住友銀行の商品といくつか統廃合する事となったため、キャッシュパスポートは廃止となり、現在はこのサービスは都市銀行発行の国際キャッシュカードではできなくなっている。
2006年5月に、スルガ銀行が「SURUGA VISAデビットカード」をサービス開始。このカードはVISAカード扱いのため、原則としてVISAクレジットカードが使用出来る店舗ならどこでも使用できる。2007年2月15日以降に発行・切替手続きしたものはICチップ付きとなり、ICでのデビット取引も可能になる。加えて2007年3月には、エイチ・アイ・エスとの提携カードである「ワールド・キャビット」を共同発行する予定。いずれも、デビットカードの為信用取引が不要であり、15歳以上(但し中学生は除く)であれば未成年者でも取得できる。
また、イーバンク銀行が同種のカード発行を2007年度に実施すると発表した。
2006年10月に日興コーディアル証券が「日興プラチナデビットカード」をサービス開始。年会費21,000円でVISA Platinumのサービスを付帯、円・米ドルの2通貨決済が出来る世界初のデビットカードである。
[編集] ローソンデビット
コンビニエンスストアのローソンでは、もともとJ-Debit加盟店として、日本デビットカード推進協議会加盟の全金融機関発行のキャッシュカードを取扱うつもりだったが、加盟金融機関へ支払う手数料率などの諸問題で実現せず、その手数料率などの問題をクリアした以下の金融機関と個別に提携して、独自にデビットカードサービスを行っている。