トランスパーソナル心理学
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トランスパーソナル心理学とは、1960年代に展開しはじめた心理学の新しい潮流で、行動主義心理学、精神分析、人間性心理学に続く第四の心理学。人間性心理学における自己超越の概念をさらに発展させたとされる。人間の究極的な目的とは、自己を越えた何ものかに統合されると考え、そのための精神統合の手法を開発した。臨床では一定の効果が認められるが、もともとニューエイジ思想の影響が色濃く、「自己を超えたなにものか」という時点で既に他者には確認不能であり、再現性に乏しい上にスピリチュアリティーも扱うため宗教に近い部分もあり、そのため宗教や神秘学そのものであるとの批判がある。晩年のユングのようにオカルトあるいは疑似科学であるとの批判に対し、十分な説明がなされていない。
再現可能性、実験再現性、再観測可能性や、臨床試験を中心に据えた研究発表が現時点では非常に少く、反駁不可能な領域に関しても言及しようとする傾向が強いことが、批判される一因であり、現状では科学として取り扱える分野とは言い難い。 なお、日本国内でも、大学等で研究する研究者は存在する。
大学院レベルでトランスパーソナル心理学を専攻できる大学としては The Institute of Transpersonal Psychology (US), John F. Kennedy University (US), California Institute of Integral Studies (US), Saybrook Institute (US), Naropa University (US) and Liverpool John Moores University (UK) 等がある。
代表的な心理学者としては、イタリア人でフロイトの弟子の一人サイコシンセシス(精神統合)のロベルト・アサジオリ、人間性心理学でも知られ、至高体験にも焦点をあてたアブラハム・マズロー、ホロトロピック・ブレスワークを開発した精神科医のスタニスラフ・グロフなどが上げられる。 ニューエイジ系の思想家ケン・ウィルバーも論客の一翼を担う。
[編集] 関連項目
- 人間性心理学
- 変性意識状態
- シャーマニズム
- ターミナルケア
- ホスピス
- 前世療法
- ヨーガ
- 瞑想
- ワークショップ
- ニューエイジ
- カール・グスタフ・ユング
- 代替医療
- カルロス・カスタネダ
- エコロジー
- 鈴木大拙
- スピリチュアリティ
[編集] 参考文献
- 『テキスト/トランスパーソナル精神医学・心理学』ジョン・R. バティスタ ISBN 4535561451
- 『トランスパーソナル心理学』 岡野守也 ISBN 4791758269
- 『サイコシンセシス―統合的な人間観と実践のマニュアル』ロベルト アサジョーリ ISBN 4414325048
- 『完全なる人間―魂のめざすもの』アブラハム・H. マスロー ISBN 4414304105
- 『脳を超えて』スタニスラフ グロフ ISBN 4393360087
- 『無境界―自己成長のセラピー論』ケン・ウィルバー ISBN 4892031143