再現性
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再現性(さいげんせい)とは、科学的方法の根幹をなす主要な原則であり、なおかつ近代科学を支えてきた重要な概念の一つである。対立概念としては一回性、再現不可能性など、比較概念としては偶発性、反復性などがある。
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[編集] 定義
ある事象を、それを成り立たせていると考えられる要素や要因に還元したときに、同じ要素や要因を条件として整えれば、再びまったく同じ事象が起こるという性質をいう。
これにより、再現可能な実験内容と手順に従って、異なった実験から同じ結果が得られるのなら、実験結果は妥当なものとされ、その事象は科学的再現性があるとされる。
[編集] 解説
わかりやすい例としては、我々が学校で習う理科の実験などは、この科学的再現性の確認作業と考えてよい。
たとえば昨日、水を電気分解して水素と酸素になったとしたら、同じ条件を整えてやれば、今日に水を電気分解しても、やはり水素と酸素になる。「昨日は水素と酸素になったが、今日は窒素と炭素になった」などということはない。これが「再現性」である。
反対に、「どうしてだかわからないが、偶然できあがってしまったもの」や「もう一度同じものを作れと言われても、どうしてよいかわからない場合」などは「再現性がない」と表現される。
思考実験、すなわちある研究者や研究者グループによって作成された実験内容は、一般に他の独立した研究者たちによって評価されるものである。つまり、オリジナルの研究を行なったグループと同じように実験を繰り返して、同じ結果を生まれるかどうかが、他の研究者たちによって確認されなくては、その実験内容の正当性が認められない。
実験的観念として再現性をとらえるならば、それはじゅうぶんに多くの回数おこなわれた試行をもとに、対応する結果値の等価性と反復性に関して、「実験的に間違っているかもしれない」という仮説があらわれる余地を残すものである。さらに、これらの異なった試行が一要素として集合をなす領域を特徴づけるものでもある。そのときに、再現性の高い手順は再現性の高いまま残る。
反対に、ある特定の試行で得た、非常に反復性の高いことがわかった結果値は、その次の試行で単に反復性が高いと予想されていただけであって、何も再現性があったわけではない、と結論づけられることもある。
[編集] 再現性と科学文書のスタイル
科学の方法の再現性への依存は、科学論文など科学に関わる文書の書き方にも強い影響をおよぼしている。
つまり、一般読者を想定して「読んだ人がわからなければしょうがないでしょう」という尺度がもたれる一般的文書とは異なり、科学的文書では研究者の実験で得られた結果を伝えやすくするために、余すところなく引用されることを選択して冗長さや過度の詳細を取り除く傾向にある。
たとえば身近な例として、料理のレシピというものは、科学的文書という見方からすれば一種のアルゴリズムであるが、そこに書かれる「塩 少々」といった表現には、いちいち「塩とは固体の塩化ナトリウムの粉末である」とか「少々とは5g程度の分量である」とか書かれない。「それがわからないなら、それを詳しく述べているものに立ち返ってくれ」という筆者の暗黙の要請がなりたっている。
同じように、科学に関わる文書では、すでに他で証明や説明がなされている物事に関してはできるだけ引用に頼り、その文書そのものが長くならないようにしているのである。
しかし、このような傾向が、科学をますます専門化・細分化し、畑のちがう人々の手の届かないところへ追いやっている、という批判も聞かれるようになってきている。
[編集] 今後の行方
再現性は、事象(できごと)を要素に分解して考えることから、要素還元主義という概念とも密接につながる。
近年は、複雑系を初めとして、これまでの近代科学の根底でもあった要素還元主義を否定・修正すると結論づけるような研究も多数発表され、また近代科学の分野とみなされなかった漢方医学などによる実績は、再現性、反復性、疑似科学などいずれで評価するべきかといった問題も広く提唱されてきている。
また他方では、近代科学の一端から派生した精神分析や臨床心理学が再現性と相容れないところで発達を遂げてきた側面もあり、科学の在り方自体が根本から問い直されている。
そのため、科学的再現性という概念も、かつて「非科学的だ」「オカルト的だ」などと批判されてきたものの再評価とともに、今後どのように扱われていくかは多分に未知数であると言わなくてはならない。
[編集] 関連項目
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