ノーマン・フォスター
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


ノーマン・フォスター、フォスター卿(Norman Robert Foster, Baron Foster of Thames Bank)はイギリスの建築家。メリット勲章(Order of Merit)を受章している。1935年6月1日マンチェスター生まれ。
フォスターはマンチェスター大学とイェール大学で学んだ。彼は建築家・思想家であったバックミンスター・フラーのもとで働いた後、建築家リチャード・ロジャースと会い「チーム4」を結成。1967年自分の事務所フォスター・アソシエーツを設立した。彼は建築作品だけではなく経済的にも最も大きな成功をおさめた建築家としても有名。
彼の名声を高めたのは1985年に完成した香港の『香港上海銀行・香港本店ビル』であった。建物を支えるために通常の柱や壁を使わず、建物の外側に鋼鉄フレームによる太い構造をむき出しにさせ、このフレームで超高層ビルを支えることに成功した。この記念碑的なハイテク建築の後、1991年のドイツ・フランクフルトのコメルツ銀行本店ビルではエコロジカルな超高層ビルを実現させた。300mの超高層ビルを貫く吹き抜けのアトリウムを中央に作って周りに柱のないオフィス空間を配し、さらにビルのフロアは四つから五つに分節され、その間に日光と緑のある「スカイ・ガーデン」が挟み込まれた。スカイガーデンの窓を開閉することにより、新鮮な外気が各ガーデンからアトリウムを通ってオフィスの隅々にまで行き渡る自然換気が実現された。超高層を支える構造体、換気や冷暖房などのエネルギーを無駄遣いしないエコロジカルで快適なオフィス空間という手法は、マレーシア・ペナンのMBFタワーやロンドンのロンドン市庁舎ビル、セント・メリー・アクス30番地(スイス・リ本社ビル)など、後のビルでも使われている。
彼の建築デザインは最初スタイリッシュで、機械のような形状のハイテク志向のものであったが、次第にそこから離れ、より崇高でより受け入れられやすい鋭いモダニズム建築へと移っていった。
ノーマン・フォスターは王立英国建築家協会が贈るスターリング賞を2度にわたって受賞している。一回目は1998年、ダックスフォード帝国戦争博物館に対して、二回目は2004年にセント・メリー・アクス30番地に対してである。また、これまでの業績に対し、1999年にはプリツカー賞を受賞している。
彼は1990年にナイトに叙勲され、また1997年にはメリット勲章を受賞、1999年には一代貴族に叙せられている。
しかし、本国イギリスでは軽蔑的に「スーパースター建築家」とも呼ばれ、その名声からほかの建築家より優先した扱いを受けていると非難されてもいる。イギリスのタブロイド紙には「Lord Wobbly(不安定卿)」とあだ名されているが、これはテムズ川に2000年に架けたミレニアム・ブリッジが構造の不具合で開通まもなく補修のために閉鎖された事件による。またロンドン事務所兼自宅のすぐ横にある「クーパー・コレクション」(Couper Collection、芸術家マックス・クーパーがテムズ川に浮かぶはしけの上に作った慈善団体、「浮かぶ美術館」)に対し、撤去を申し立てたことで論争になっている。
ロンドン市庁舎(GLA)やスイス・リ本社などのプロジェクトで、フォスターのもとで責任者になってきたケン・シャトルワースが事務所を離れ独立した。シャトルワースはフォスターの事務所の功労者であったといわれている。
[編集] 作品
- イギリス・イプスウィッチ、ウィリス・ファーバー・アンド・デュマ本社(Willis Faber and Dumas Headquarters)1975年
- イギリス・ノーウィッチ、センズベリー視覚芸術センター、1978年
- イギリス・スウィンドン、英国ルノー社部品配送センター、1982年
- ロンドン、リバーサイド・オフィスとアパートメント、1989年
- フランクフルト、コメルツ銀行本社タワー
- 香港、香港上海銀行・香港本店ビル
- 香港、香港国際空港ターミナルビル
- 香港、九廣鐵路(KCR)・紅磡(ホンハム)駅舎
- ロンドン、ITN本社、1990年
- ロンドン、スタンステッド空港ターミナルビル、1991年
- ロンドン、サックラー・ギャラリー、1991年
- スペイン・ビルバオ、ビルバオ地下鉄
- スペイン・バルセロナ、テレコミュニケーションタワー(Telecommunications Tower, Torre de Collserola)
- イギリス・ケンブリッジ、ケンブリッジ大学法学部校舎、1995年
- イギリス・ダックスフォード、アメリカ航空博物館、1996年
- グラスゴー、スコットランド展示・会議センター、1997年
- ロンドン、大英博物館グレート・コート、2000年
- ロンドン、ミレニアム・ブリッジ
- ベルリン、国会議事堂
- グレート・ロンドン・オーソリティー・ビル(ロンドン市庁舎)
- スイス・リ本社ビル(30セント・メリー・アクス)
- キャナリー・ワーフ駅
- センチュリータワー(御茶ノ水)
- ミヨー橋(フランス)
- タワー2
- ベルリン、フィオロジカル図書館 ベルリン自由大学(Philological Library, free university of berlin)