フョードル・シャリアピン
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フョードル・イワノヴィッチ・シャリアピン（Фёдор Ива́нович Шаля́пин, Fyodor Ivanovich Chaliapin, 1873年2月13日(露暦2月1日) - 1938年4月12日） は、ロシア出身の20世紀前半における最も有名なオペラ歌手（バス）のひとり。力に満ち溢れ、柔らかな美声とともに、舞台人としての精神、心理的描写に卓越した表現法は観客を魅了し「歌う俳優」とも呼ばれた。シャリアピンは、オペラの歴史において偉大な名手のひとりと目され、オペラにおける自然な演技の伝統的様式を洗練させたと見做される。
1873年2月13日（露暦2月1日）ロシア帝国のカザンに生まれる。当初、独学で声楽を開始。17歳で地方の小歌劇団の合唱員として歌い始め、徐々に役を獲得していった。1982年から1893年にかけて、トビリシで初めて専門的な声楽を学ぶ。以後、オペラ歌手として本格的に活動を開始し、1894年からサンクトペテルブルクのマリインスキー帝室歌劇場に所属した。さらにモスクワに移り、マールモントフ私立歌劇場、次いで1899年ボリショイ劇場に招かれる。ボリショイでは、1914年まで定期的に出演し、代表的なロシア・オペラの主役を次々に演じ、時代を代表するバス歌手としての地位を不動のものとした。
1901年から外国公演を開始し、1901年と1904年にミラノ・スカラ座に出演した。1901年公演では、トスカニーニ指揮の下、ボイトの「メフィストフェーレ」に出演。1907年から1908年ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場に出演する。このときのメトロポリタンでの評判は今一つであったが、後に1921年に公演した際は、大成功を収めた。1908年（1913年か？）ディアギレフによってロンドン、パリに招かれ、リサイタルを行って人気を博した。そこではロシア民謡も多く歌った。また、この間、「ボリス・ゴドゥノフ」の主役を演じ、その名声を不動のものとした。
1917年ロシア革命が勃発すると、当初、シャリアピンは、その世界的名声からソビエト政権によって偉大な芸術家として処遇された。しかし、シャリアピン自身は反ソ的ではないと言明していたにもかかわらず、ソビエト政権への不同意を理由に不遇をかこつようになり、1921年祖国から亡命することを余儀なくされた。以後、世界各地で公演を行う。
シャリアピンの最も有名な役柄は、「ボリス・ゴドゥノフ」の主役（1929年から1931年レコーディング）であるが、 リムスキー＝コルサコフの「イワン雷帝」、グノーの「ファウスト」のメフィストフェレス役、マスネの「ドン・キショット（ドン・キホーテ）」なども有名である。また、ムソルグスキーの「ボリス・ゴドゥノフ」、グリンカの「イワン・スサーニン」、ボロディンの「イーゴリ公」、リムスキー・コルサコフの「皇帝の結婚」などのロシア・オペラの各作品は、シャリアピンの公演により諸外国に知名度を拡大することとなった。シャリアピンは、作品のレコーディングにも取り組み、現在200以上の作品が残存している。1934年シャリアピンは回想録「人と仮面、歌手生活40年 Man and Mask: Forty Years in the Life of a Singer」をマクシム・ゴーリキーの協力で刊行した。
日本には、昭和11年（1936年）に訪れ、東京、名古屋、大阪で公演した。日本公演は、死の2年前であったが、公演を重ねるにつれ次第に調子を上げ、クラシックファンは勿論、多くの大衆を巻き込んだ一大センセーションを巻き起こした。なお、このときシャリアピンは入れ歯の不具合に悩んでおり、宿泊先の帝国ホテルはステーキ肉をたたいて薄く延ばし、それを玉ねぎに漬け込んで柔らかくして焼き上げ、更にみじん切りの炒め玉ねぎをかけて供した。これは日本でシャリアピン・ステーキとして知られている。もちろん、シャリアピン自身、このステーキをおいしそうに食したことは言うまでもない。
1938年4月12日パリで死去。63歳。1984年遺体はモスクワに移され、市内のノヴォデビチエНоводевичье墓地に埋葬された。
