リニアモーターカー
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リニアモーターカー(Linear Motor Car)は、リニアモーターを用いて走行する鉄道車両。
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鉄輪式リニアのリアクションプレート(レール間に敷設されている) - 馬込車両検修場
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磁気浮上式リニア(JRマグレブ) - JR東海の実験車両MLX01-1(愛・地球博JR東海 超電導リニア館にて)
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鉄輪式と磁気浮上式とがある。
(磁気浮上式鉄道も参照)
目次 |
[編集] リニアモーターカーの語義
リニアモーターカーは和製英語である。リニアモーターは、部品として見た場合は、連続的に誘導体が配置された(電磁誘導式)モーターのことで単に動力の種類を指しており、鉄道や浮上式かどうかに限定した用語ではない。 リニアとは線状という意味であり、リニアモーターとは、古典的な回転モーターに対して、「平面上に線状に誘導体を並べた構造の」モーターのことである。
例えば、普通の自動車・バスなどで、リニアモーターの誘導体を車体とホイールハブに円弧状に内蔵して、タイヤの回転力を生み出し、それにより駆動するシステムを採用すれば、これもリニアモーターカーである。
磁気により浮上するリニアモーターカー(磁気浮上式鉄道)に関しては、日本のJR東海や欧米諸国では「マグレブ」と呼ぶことが多い。
[編集] 鉄輪式リニアモーターカー
1990年、日本初の鉄輪式リニアとして開業した、大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線など、通常のレールと車輪によって走行する列車で、動力としてリニアモーターが採用されているものをいう。「接地式」ともいう。目的は、次のようなものである。
- 車両断面を小型化できる。このためトンネル断面を小さくでき、建設費を削減可能。(ミニ地下鉄)
- 駆動力を車輪とレールの摩擦に頼らないため、急勾配での走行性能が高い。大都市では地下鉄路線の過密化により直線的路線空間の確保が困難になっており、急勾配・急カーブを多く持つ線形にせざるを得ないが、そのような場合に有効である。
鉄輪式リニアは、鶴見緑地線(現:長堀鶴見緑地線)に登場した70系(この年のローレル賞受賞)の他には、1991年開業の都営地下鉄大江戸線、2001年開業の神戸市営地下鉄海岸線、2005年開業の福岡市地下鉄七隈線、2006年開業の大阪市営地下鉄今里筋線があり、現在建設中の横浜市営地下鉄グリーンライン、仙台市営地下鉄東西線にも採用されている。2006年には中国でも鉄輪式リニアの地下鉄建設が決定した。
[編集] 日本の磁気浮上式リニアモーターカー
日本には、JR東海が実験中のジェイアール式マグレブ(最高速度581km/h)、日航が旧西ドイツ企業から基本技術を導入し、独自に開発を進めたHSST、運輸省が70年代に独自に研究・開発に取り組んだイーエムエルプロジェクト(EMLプロジェクト)の3種類がある。EMLプロジェクトは要素技術の研究だけで中止された。日航はHSSTの事業から撤退し名古屋鉄道の資本傘下となる中部HSST開発に技術陣を引き継いだ。
(詳しくは磁気浮上式鉄道を参照)
[編集] 世界の磁気浮上式リニアモーターカー
日本を除けば、ドイツが開発したトランスラピッド、HSST、EET、M-Bahn、COMET(後にドイツではトランスラピッドに研究を集約)、英国が開発したバーミンガムピープルムーバ、米国のインダクトラックなどがある。上海では、英国、ドイツに次ぐ世界3番目の営業用(博覧会などでの営業用は除く)磁気浮上式リニアモーターカー上海トランスラピッド(最高速度430km/h)が、上海龍陽路駅-浦東国際空港駅間で2002年12月に開業した(2002年はまだ、敷設工事が完成した段階で試行運転のみ。一般の乗客を乗せたのが2004年で、本格的商用運転は2006年から)。現在営業している路線は、日本のHSSTとこの上海トランスラピッドだけである。また、中国ではトランスラピッドとは別に2005年5月、大連で「中華06号」という400km/hで走行可能な車両を開発した。更に同年9月には、成都飛機公司がCM1型車両・愛称「ドルフィン(海豚)」(設計最高速度500km/h)の開発を開始。2006年7月に上海での試運転を目指していた。ドイツではトランスラピッドの技術が盗まれたと問題になっている。
(詳しくは磁気浮上式鉄道を参照)