ルーズソックス
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ルーズソックス(和製英語 loose socks)とは、本来はアメリカで製造され、輸出されていた登山用の靴下、ブート・ソックスのことである。
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[編集] 概要
日本においては、女学生、主に女子高校生の間で、制服の逸脱したファッションとして採用され、長期にわたる流行の後に定着した。ルーズソックスという呼び名は、履いている靴下の状態が「ルーズ」(loose)であるからといわれている。
履いているのは専ら女性、それも女子中高生くらいであり、それ以外の世代には全くといっていいほど受け入れられていない。 始めに履きだしたのは女子高生で、その後女子中学生にも伝播したようだが、基本的に学校の制服と併せて着るので、多くの場合制服を着用しない小学生には全く流行しなかった。
「ルーズソックス=女子高生が履く物」といわれるくらい他の世代の女性には全く受け入れられておらず、高校卒業後や成人してもルーズソックスを履き続けるような女性はまずいない。いたとしてもかなり奇異なる目で見られる傾向がある。
さらにいえばルーズソックスは若い女性だから多く履いているというものでもない。女子中高生以降の年齢に受け入れられていないのは勿論だが、だからといって中学生よりも年少の女子には受け入れられているというわけでもない。年齢的には12歳未満の女子にも全く受け入れられていない。
この為、被服業界ではルーズソックスはどんなに売れたとしても、所詮女子中高生の購買しか望めず、他の衣料品に比べて大した収益が望めない衣料とされている為、積極的な販売展開は行われない。
実際、購買層はほぼ100%女子中高生に限定されている。
[編集] 仕様
当初の輸入靴下は全くルーズでない、頑強な木綿製の厚みとボリュームのある長さのある靴下である。ルーズに履こうとする目的の為にルーズに出来上がった靴下が量産され、普及するまでは緩みを仕立てる作業を各人が行っていた。
靴下の色は、白色が主である。この靴下を履いた足の格好は、レッグウォーマー(ルーズソックスと違うのは足首の先がない衣類)を身に着けた弛んだ足元に似ている。ただし、現在は、黒色や紺色などもある。
一般的にこの靴下は、通常より大きな寸法の靴下である。着用に際しては、靴下を緩めて履き、さらに靴下がずり下がらぬようにソックタッチ※と呼ばれる靴下固定用の糊(のり)を用いて膝下部に接着する。
※ソックタッチは白元の登録商標。
[編集] 発祥と定着
1990年代初頭、日本の女子高校生の間では制服のスカートを短くするファッション(ミニスカ)が流行していた。1990年代半ばには、そのファッションも定着したが、その過程で露出された脚にアクセントを加えるために(あるいは寒さ対策として)履かれるようになったのが、アメリカのE.G.スミス社などの靴下メーカーによって製造、輸入されていた登山用の靴下、ブート・ソックス(Boot Socks)である。ルーズ・ソックスが本来のブート・ソックスと呼ばれていた時期があったのかは定かではないが、かなり早い段階でルーズ・ソックスと呼ばれるようになり、ミニスカの流行とともに急速に広がって定着を見せた。
ルーズソックスの発祥地域については、さまざまな説があるものの断定されていない。有名な説としては、宮城県仙台市を発祥とする説と茨城県水戸市を発祥とする説の2つがある。それらの説の内容は、当地で寸法の大きい靴下を防寒目的で買ってゆるめて履いたところ、太い脚が靴下のボリュームで細く見えたことで流行し始めたというものである。
その後、ゆるめて履くことを目的とする靴下が商品として定着し、それが東京や大阪などの大都市圏に波及し全国で広まったとされる。主に女子高校生の間で急速に人気を得た。
ルーズソックスが最も流行した時期は、1996年~1998年(平成8年~平成10年)であり、この時期には、さらに緩い形状をした「スーパールーズ」(スーパールーズソックス)や、ルーズソックスのゴムを抜いた「ゴム抜きルーズ」(ゴム抜きルーズソックス)などの変種も生まれ、なかには200cmという長さのルーズソックスもあった。それらは主に当時のヤマンバギャル達に広く愛用された。高校生においては、校則に学校指定の規定靴下のある学校を除いた多くの生徒が履くようになり、また、学校内で履くことが許されない生徒らは学校外でルーズソックスに履き替えることもあった。このような状況は、さまざまなマスメディアでも取り上げられ、ルーズソックスは、女子高校生の文化を象徴する品物として注目を浴びた。
1998年(平成10年)を過ぎると流行は終わった。流行が終わったがルーズソックスを履く人がいなくなったわけでもなくファッションの一部として定着していった。流行が終わったのは、誰もがルーズソックスを履いている状況から人と変わったファッションを求める状況、ルーズソックスの大流行への反発があったのではないかと推測される。 一部の学校でハイソックスを指定し、また校則でルーズソックス禁止を明言化するなど、学校教育サイドの対応の影響もあると考えられている。その後、2000年(平成12年)頃からは、普通の紺色のハイソックスが比較的普及している。
なお、2006年になって、一部の人だけが履き、誰もが履くことのない状況のなか、派手なメイクやファッションが特徴のギャルの間で再びルーズソックスの人気が再燃して、履く者が増えている。 また、世界的にはまだ流行過程にあり、当初登山用としてルーズ・ソックスを売っていたE.G.スミス社も、近年は女性向けソックスとして販売を続けている。しかしこの頃には、女子高生が制服とあわせる場合は、白または紺のハイソックスに戻っており、学校ではルーズソックスは殆ど見かけることはなくなった。