交代勤務
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交代勤務(こうたいきんむ)とは、所定労働時間(通常8時間/日)以上に及ぶ業務体系が必要な時に、労働者を交代で勤務させる勤務形態のことである。「交替勤務」と言う場合もある。
従来は、病院やホテルなど一部の業種・職種を除き、労働基準法で女性を深夜や早朝などの交代勤務に従事させることができなかったが、男女雇用機会均等法の改正施行を受けた1999年の改正で女性の深夜・早朝勤務が可能となり、多くの職種に女性の進出が進んでいる。
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[編集] 交代勤務が必要な業務・業種
[編集] 24時間切れ目無く業務が続く業種
製鉄所の高炉、石油化学コンビナートや製紙メーカーの大型梳紙機など、停止や再稼動に非常に手間と時間がかかる大型機械を使う業種では、盆・正月の区別無く24時間の連続運転を行っている。これらの業種では一般に1日を8時間ごとに分けた『三交代勤務』を採用している。また、自動制御の信頼性の向上やフェイルセーフ対策により労働密度を下げて『二交代勤務』や『宿直勤務』に変更し省人化を行う動きもある。
24時間営業を行う外食産業やコンビニエンスストアなどでは、勤務時間は個人の状況に応じて細かく設定している。また、コンビニで販売する弁当や惣菜を製造する食品工場でも、連動して24時間操業が行われるため、交代勤務を行っている。
ホテルでは、宿泊者に対するサービスや安全の確保を行うため、深夜でも多くの職種で切れ目なく勤務が必要である。(ビジネスホテルでは深夜時間帯は玄関を施錠するところもある)
救急指定病院や入院患者のいる病院では、看護部門は日勤・準夜勤・深夜勤の3交代制、医師・薬剤部・検査部門は宿直勤務が多い。
一般には知られていないが、航空管制(空港ではない)も、24時間切れ目無く業務が行われている。(日本に発着する飛行機以外にも、日本の上空を飛ぶ日本国外相互発着の飛行機に対する管制業務があるため。)
24時間連続業務には、遠洋航海する商船・軍艦なども含まれる。軍艦では乗員を半分に分けて担当を決めた「半舷」という交代勤務を取り、寄港地での休暇も「半舷上陸」が主体である。商船では、出入港時は総員配置、その他の場合は大型商船の場合は、0~4時・4~8時・8~12時・12~16時・16時~20時・20時~0時の4時間勤務2回当直を行う(例0~4時直の後は、12~16時直)。
[編集] 早朝から深夜まで業務が継続する業種
鉄道・バスなどの交通機関のように、早朝から深夜まで継続して動きつづけている業種では、早出・遅出など勤務時間を細かく設定して切れ目の無いサービスを提供している。 また、郵便局や運送業などの通信・物流機関も同様である。郵便収集は早朝に始まり、配達は夜間にまで及ぶ。とくに中継機関は深夜も絶え間なく、郵便物あるいは小荷物が区分けされて、それぞれ配送されている。
[編集] 待機を伴う業務
消防署や警察署、警備会社の施設警備部門では、いつ発生するかもしれない火事・事故・事件に備えて、当番者が深夜も含めた24時間待機の体制をとっている。
自動制御やフェイルセーフ対策が充実した無人運転が可能な工場でも、深夜稼動時間帯に、万一の事故があった時の連絡要員の確保的な意味合いで、宿直者を待機させる場合が多い。
[編集] 業務時間が断続的な場合
たとえば、毎日読む新聞には朝刊と夕刊があるが、これは12時間ごとに執筆・編集され、印刷・配送される。一例として印刷業務では、朝刊は21時から3時、夕刊では10時から15時の間に仕事が集中している。これは一人の人間が毎日できる仕事ではないため種々の交代勤務体勢が取られている。
[編集] その他交代勤務が必要な業種
[編集] 水道・ガス・電力会社
- 指令部門 : 4直2交代制、5直3交代制などが行われている。
- 補修部門 : 宿直体制が多い。
[編集] コンピュータの運用業務
コンピュータの運用業務では、業務時間外のバッチ業務処理やシステムの監視・保守・トラブル対応などで、交代勤務を行うことがある。
[編集] 放送局
NHK東京では、毎日6人の放送局アナウンサー(局アナ)が、民放では、毎日1人の局アナが男女関係なくそれぞれ交替で局に泊まり込み、夜間における緊急事態発生(特に地震など)にいち早く対応できるようにしている。
また放送局は、ほとんどが24時間放送を実施しているため、宿直はアナウンサーのみならず制作や技術、さらに報道部門のスタッフも深夜の番組送出や放送機器の保守点検、さらには緊急事態発生に備えるため、毎日数人が交替で局に泊まり込んでいる。さらに万一停電に陥っても放送が出し続けられるよう、ほとんどの局が自家発電装置や非常用バッテリー・送信機(送信所と本社演奏所との回線断絶対策)を備えている。とりわけ、ラジオは地震など災害の発生時における情報源として、最も重要な役割を果たすので、万一停電に陥っても確実に放送ができるようにしなければならない。
なお、ローカル局の場合は、人数が少ないことから宿直勤務制度を実施せず、代わりに早番・遅番交替制で対応している局が多い。
局アナが行う宿直の仕事は通常「夜間から翌朝にかけて放送されるラジオやテレビの定時ニュースを伝えること」である。宿直制度を実施している局にはたいてい仮眠室があり、局アナの場合は「夜間の最終定時ニュース終了から翌朝一番の定時ニュース開始まで」の数時間、仮眠をとることができる(実際はこの時間を利用して雑用を片づける人も多い)。
ただし、この間に大きな事件・事故、さらに地震などの災害がひとたび発生すれば、宿直のスタッフは徹夜で慌ただしく対応することになる。さらに、それらの規模によっては日勤のスタッフにも非常召集がかかる場合が多い。
[編集] 操業の中断が不可能な工場
操業の中断が不可能な工場では、深夜勤務手当ての節約のため、深夜時間を除いた連続2交代制を行うことも多い。ただし、需要期には24時間3交代制勤務となる場合もある。
[編集] 労働者の健康への配慮
勤務形態は労働条件の最も基本的なものである。それゆえ、会社(使用者)側と労働者側(会社と組合)の相互理解と組合による承認が求められる。労使間で合意された交代勤務を含む勤務形態は、所轄の役所(労働基準監督署)に届けて、その内容を遵守するよう求められる。特に深夜にかかる交代制勤務の場合、労働者の健康のため次のような配慮が必要である。
- 深夜勤務の回数をなるべく減らす。
- 勤務と勤務の間の自宅での休養時間を十分取れるように勤務割を工夫し、深夜・早朝の帰宅の便を確保する。
- 待機時間には充分な休養が取れるような設備を準備する。
- 万一の場合にも十分な対処ができるような管理・設備の応急処置体制を確立する。
- 健康診断を行い、心身の病気の早期発見に努める。
- 健康を害した者には勤務上の配慮を行う。
- 24時間勤務の後には最低でも24時間の休暇をおく。(労働基準法でも33時間以上の連続勤務は禁止されている)
また、交代勤務で働く男性の前立腺がんになる危険性が、日勤のみ働く男性に比べて3.5倍あると言われている。同様に交代勤務で働く男性の心筋梗塞になる危険性が日勤のみ働く男性に比べて2.8倍あると言われている。
[編集] 勤務の呼び名
勤務のことを「直」と呼ぶ場合が多く、勤務体制により次のように呼ばれる。
- 日勤 : 昼間の一般的な始業・就業時間の勤務(8時~17時、8時半~17時半、9時~18時など)
- 早番(早出) : 通常の日勤より早く出勤する勤務(6時~15時、6時半~15時半、7時~16時など)
- 遅番(遅出) : 通常の日勤より遅く終業となる勤務(12時~21時、12時半~21時半、13時~22時、13時半~22時半など)
- 通し勤務 : 早番・日勤・遅番などを連続して勤務するもの(7時~21時、7時半~21時半、8時~22時、8時半~22時半など)この場合の休憩時間は最大の2時間となる。
- 16勤 : 深夜を含む16時間拘束の勤務(仮眠有りの8時間以下の労働時間の勤務を夜勤として区別する場合がある)
- 24勤 : 24時間拘束の勤務
- 準夜勤 : (16時半~24時半など)
- 深夜勤 : (0時~8時半など)
- 非番 : 勤務には就かないが待機態勢。実際には強制的な残業となる事が多い。または休日の場合に使われることも
- 宿直(しゅくちょく) : 狭くは日勤と日勤との間に事業所に宿泊し緊急事態発生に備えること。広くは24時間勤務なども含む。
- 当直(とうちょく) : 狭くは監視業務に従事する時間のこと。広くは鉄道駅や警察・消防などの官公署の24時間勤務なども含む。
- 当務(とうむ) : 当番勤務の事。24時間勤務の意味も持つ。
勤務と勤務との間に空白時間を設けられない事業所では、日勤に一番近い時間の勤務から、二交代制の場合1直・2直(勤)、三交代制の場合1直・2直・3直と呼ぶことも多い。