交響曲第4番 (シューマン)
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ロベルト・シューマンの交響曲第4番ニ短調作品120は、1841年に作曲され、1851年に改訂された。作曲年次としては、第1番「春」に次ぐ2番目の交響曲であるが、改訂後の出版年次(1854年)により、第4番とされた。シューマン初期の幻想的で覇気に富んだ曲想と、後期の落ち着いたスタイルが融合した傑作として知られる。演奏時間約30分。緊迫感のある曲想からかつてニュース映画のBGMによく使われた。
目次 |
[編集] 作曲の経緯
[編集] 初稿
1841年1月から2月にかけて第1交響曲を完成したシューマンは、3月に『序曲、スケルツォとフィナーレ 作品52』、4月から5月にかけて『ピアノと管弦楽のための幻想曲』(後にピアノ協奏曲の第1楽章となる)を立て続けに作曲する。さらに6月からニ短調交響曲の作曲に取りかかった。9月9日に完成、9月13日の妻クララの誕生祝いにプレゼントされた。初演は同年12月6日、『序曲、スケルツォとフィナーレ』とともにフェルディナンド・ダーヴィド指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団により行われたが、成功しなかった。シューマンは「この曲は1番より決して劣るものではない。」と自信を持っていたものの、出版は見送った。この初稿が出版されたのは、シューマン死後の1896年である。
[編集] 改訂稿
初稿の10年後、1851年に第3交響曲「ライン」を完成したシューマンは、ニ短調交響曲の改訂に取りかかる。もとの構成はほぼそのまま活かされ、主としてオーケストレーションが書き換えられた。また、改訂によって楽章毎の区分がなくなり、全曲休みなく続けて演奏されるようになった。シューマンは「交響的幻想曲」と呼んだこともある。改訂版は1853年12月30日にデュッセルドルフにおいてシューマン自身の指揮によって初演され、翌1854年に出版された。シューマンは初演について、「以前の作品より充実していて、効果十分だった。」と書いている。この曲の楽譜には正式な献辞はないが、シューマンは自筆譜をヨーゼフ・ヨアヒムに贈っている。
現在では改訂稿が一般的に演奏されるが、初稿による演奏や録音もある。シューマンの死後、その楽譜の編集にあたったヨハネス・ブラームスは初稿の優位性を主張して、クララと意見が対立したといわれる。
[編集] 楽器編成
フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦五部。
[編集] 楽曲構成
前述したように、改訂後の楽章区分はなく、全曲は休みなく続けて演奏されるが、ここでは便宜上4つの楽章に分けて述べる。各楽章で共通する主題が使用され、全曲の有機的な統一性を高めていることが特筆される。
[編集] 第1楽章 かなり緩やかに-生き生きと
速度・表情の指示はドイツ語による。ニ短調。序奏付きのソナタ形式ともいえるが、かなり自由であり、ほぼ提示部-展開部-コーダという構成になっている。3/4拍子で始まり、緩やかな序奏の動機が示される。第1主題を予告する動機が繰り返されて速度を速め、主部に入る。主部は2/4拍子。第1主題は半音階的に上下し幻想的な響きを持つ。第2主題に相当するものは認められず、主部は第1主題の変形や展開によって形成されている。展開部では第1主題を扱うが、やがて新たな主題が現れ、確保される。さらに流麗な旋律が続く。これが繰り返され、高まるとコーダとなり、流麗な旋律が勝ち誇ったように奏され、第1主題と新たな主題で締めくくられる。
[編集] 第2楽章 ロマンツェ かなり緩やかに
イ短調。3/4拍子。三部形式。オーボエとチェロ・ソロが中世ロマンス風な旋律を奏し、弦が第1楽章序奏の主題を示す。中間部はヴァイオリン独奏が3連符で流れるような旋律を奏でる。
[編集] 第3楽章 スケルツォ 生き生きと
ニ短調。3/4拍子。ABABの形式。スケルツォ主題は第1楽章序奏の主題に基づく。中間部は変ロ長調。第2楽章の中間部と同一の素材である。第3楽章と第4楽章が休みなくつづく構想は、初稿でも同様である。
[編集] 第4楽章 フィナーレ 緩やかに-生き生きと
序奏付きのソナタ形式。序奏は4/4拍子。第1楽章第1主題を扱いながら金管の響きで壮大に盛り上がる。主部はニ長調、4/4拍子。第1主題が決然と示されるが、これは第1楽章展開部で新たに示された主題である。第2主題は穏やかな旋律。金管の警告的な響きで展開部となり、第1主題をフガート的に展開する。再現部は第2主題のみが再現する。コーダでは速度を速めた歓呼となる。
[編集] オーケストレーションの変更・改訂
他のシューマンの交響曲と同様に、かつては様々な指揮者が様々なオーケストレーションの変更を行っていた。マーラーによるものがよく知られ、チェッカートとシャイー(ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団との新盤)の録音が存在する。またセル、クレンペラー、クーベリックはマーラー版にも匹敵するかなり過激な変更を行っており、第1楽章展開部のクライマックスやコーダでは金管による派手な補強が施されている。