伊東乾
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伊東 乾(いとう けん、1965年1月27日 - )は日本の作曲家、指揮者、作家。
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[編集] 略歴
東京生まれ。早世した父・正男の青山学院時代の同級生に團伊玖磨、母方の祖父・藤田香苗の関西学院時代の後輩に山田耕筰がある。藤田は川崎重工の初期エンジンの設計者だが、山田とともに関西学院でグリークラブを創始したのを始め、日本の洋楽草創期に貢献し、その息子たち(伊東の伯父に当たる)は三井グループから桐朋学園の創設に関わった。外山雄三は双従兄弟。
伊東は武蔵中学校・高等学校から東京大学に進み物理学を専攻。その後同大学院理学系研究科物理学専攻修士課程に進み、博士課程で中退する。その一方、作曲を松平頼則、松村禎三、高橋悠治(アトランティック・センター・オヴ・アーツ)、近藤譲(東京大学教養学部自主ゼミナール)、指揮をレナード・バーンスタイン(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)、ピエール・ブーレーズ(ルツェルン・フェスティバル・アカデミー)に指導をうけた。また初期には武満徹のもとで音楽雑誌「ミュージック・トゥデイ・クオータリー」の創刊・編集にも携わった。
ジェルジ・リゲティ、ルチアーノ・ベリオらヨーロッパの前衛作曲家から高い評価を受けるが、アメリカではジョン・ケージの遺作初演でマース・カニングハム舞踊団とも共演、クセナキスとテレビ番組を制作するなど、ジャンルを超えた幅広い活動を特徴とする。松平頼則のオペラ「源氏物語」(1995)では、作曲中のアシスタントから世界初演の指揮・芸術監督、出版校閲補佐まで責任を負った。黛敏郎没後の一時期、テレビ朝日系列「題名のない音楽会」の音楽アドバイザーも務めた。これらと並行して音楽の脳科学研究で東京大学から博士号を取り、慶應義塾大学講師をへて東京大学の情報学環・学際情報学府助教授に就任し、後進の指導などにも当たる。
読売日本交響楽団などと特徴的なプロジェクトを進め、また、ナチス以後の戦後ヨーロッパの音楽、フランスやドイツの哲学やポストモダン思想の延長で、ネットワーク環境やオーディヴィジュアルメディアの情報倫理などにも積極的な発言が多い。
大学時代の同級生である地下鉄サリン事件実行犯の豊田亨被告人周辺を取材した「さよなら、サイレント・ネイビー」で2006年の開高健賞受賞。
2007年4月より東京大学准教授、東京藝術大学非常勤講師。
[編集] 主要作品
- ピアノと管弦楽のためのコスモストロフ Cosmostrophe (1993)
- ダイナモルフィア Dynamorpher(1998)
- マルセル・デュシャンとジョン・ケージによる能オペラ 邯鄲Quand/Temps(1999)
- 朝 声のめざめ(混声合唱)(2001)
- 説教あぽとおしす縁起 (雅楽と声明)(2002)
- Choreia Pteroessa („Fliegender Chor“)(2003) ギリシャ・オリンピック国際作曲コンクール第二位 〔未初演〕
- Positions木管と打楽器(2005)
- 百折不撓(弦楽合奏とハープ、チェレスタ)Hyakusetsu Futo(2005)
[編集] 主要演奏
- 松平頼則 Yoritsune MATSUDAIRA 源氏物語 初演(1995)
- ジョン・ケージ John CAGE “OCEAN”(1998)(with Merce Cunningham Dance Company)
[編集] 著書
- 表象のディスクール(ISBN 4-13-014115-5)
- 東大式絶対情報学(ISBN 4062133717)
- 「さよなら、サイレント・ネイビー」(ISBN 4-08-781368-1)
- 超「東大脳」を育てる(ISBN 978-4-569-65989-3)