思考実験
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思考実験 (しこうじっけん、英 thought experiment、独 Gedankenexperiment)とは、実際に実験器具を用いて測定を行うことなく、ある状況で理論から導かれるはずの現象を思考のみによって演繹すること。とりわけ科学史上、特殊な状況に理論を当てはめることによる帰結と、実験を必要としない日常的経験とを比較することによって、理論のより深い洞察に達してきた考察や、元の理論を端的に反駁し、新たな理論の必要性を示すとともに、それを発展させるのに利用されてきた考察を指すことが多い。 この言葉自体は、エルンスト・マッハによって初めて用いられた。 有名な例としては、アインシュタインが光の速度と慣性系の関係についての洞察から特殊相対性理論に達した考察が挙げられる。
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[編集] 実例
[編集] アイザック・ニュートンの重力(万有引力)の発見につながる思考実験
あまりに有名な為後世の創作ではないかと疑われるが史実。ただし「りんごが頭に当たって」というのは創作。
- りんごが木から落ちるのに遭遇したニュートン。
- りんごの木を見上げるとその向こうには月が光っている。
- りんごが落ちたのはりんごを木につなぎ止めていた力がなくなったからである。
- では、なぜ月は落ちて来ないのか? どんな力が月を空につなぎ止めているのか?
- 糸をりんごに結びつけて振り回している図を想像するニュートン。
- 振り回すと速度によって離れて行こうとする。(遠心力)。
- 月は地球を回っていることを思い浮かべる。
- 遠心力で月が飛び去って行かないのは、糸のかわりをしている力があるはずである。
- 月が地球の回りを回りながら同じ距離を保っているのは、遠心力とこのつなぎ止める力がつりあってからであるに違いない。
- このつなぎ止める力を重力と呼ぼう。
- しかし、重力は地球だけが持ち月をつなぎ止めているのか? それとも月も地球も重力を持ちお互いに引っ張りあっているのか?
- これは、計算式を立てて様子を見てみないと分からない。
この結果、ニュートンは引力を形式化する微分積分を作ることになる。
[編集] ガリレオ・ガリレイによる「重いものほど速く落下する」という考えを否定する思考実験
- 重いものほど速く落下するとしよう。
- 大小二つの鉄球を用意する。
- 小さいものは遅く、大きいものは速く落下するだろう。
- 二つの鉄球を軽いひもでつないで一つの物体とする。
- これを落下させると、小さい鉄球は速く落下する大きい鉄球に引かれるため元より速く落下する。一方、大きい鉄球は遅く落下する小さい鉄球に引かれ元より遅く落下する。従って二つの鉄球の中間の速度で落下するはずである。
- しかし、全体としては大小の鉄球を合計した重量になり、より重くなるのだから元の鉄球それぞれより速く落ちるはずである。
- 同じ前提から相反する結果が導かれるのはおかしいのではないだろうか。
この後ガリレオは実際に物体を落下させて「重いものほど速く落下する」というのが嘘であることを実験により示したとされる。ピサの斜塔で実験をしたという逸話が事実かどうかは、科学史家の間で意見が分かれている。
[編集] 思考実験一覧
[編集] 数学
- ピンポン球問題 (無限)(Ping-pong ball conundrum)
- モンティ・ヘル問題 (無限)(Monty Hell problem)
- モンティ・ホール問題 (確率論、情報)
- 猿とシェイクスピアとタイプライター (無限、確率論)(Infinite monkey theorem)
- ゼノンのパラドックス (無限小、極限)
- ガブリエルの笛 (Gabriel's Horn)
[編集] 物理学
物理学の分野で使われる思考実験には、以下のようなものがある。
- ガリレオの船 (力学、1632年)(Galileo's ship)
- ニュートンのバケツ (力学)(Bucket argument)
- ラプラスの悪魔 (古典力学、決定論)
- カルノーサイクル (熱力学)
- マクスウェルの悪魔 (熱力学、1871年)
- ブラウン・ラチェット (熱力学)
- GHZ実験 (量子力学)(GHZ experiment)
- EPRパラドックス (量子力学)
- シュレディンガーの猫 (量子力学)
- 量子自殺 (量子力学)(Quantum suicide)
- ウィグナーの友達 (量子力学、心の哲学)(Wigner's friend)
- 双子のパラドックス (特殊相対性理論)
- ウィトゲンシュタインの杖 (Wittgenstein's rod)
[編集] 哲学
哲学の分野では頻繁に思考実験が使われる。以下のようなものがある。
- シミュレートされた現実 (計算機科学, 認知科学)(Simulated reality)
- タンクの中の脳 (認識論, 心の哲学)(Brain-in-a-vat)
- 中国人脳 (物理主義, 心の哲学)(China brain)
- チューリング・テスト (心の哲学, 人工知能, 計算機科学)
- 中国語の部屋 (心の哲学, 人工知能, 認知科学)
- 哲学的ゾンビ (心の哲学, 人工知能, 認知科学)
- マリーの部屋 (心の哲学)(Mary's room)
- スワンプマン (アイデンティティー、心の哲学)
- テセウスの船 (同一性)(Ship of Theseus)
- 神の残骸 (宗教)(God's Debris)
- 原初状態 (政治学)(Original position)
- 社会契約説
- トロッコ問題 (倫理)
- 臓器くじ (倫理)
- ザ・バイオリニスト (倫理)(The Violinist)
[編集] 計算機科学
[編集] その他
- ブライテンベルグ・ビークル (ロボティクス、センシング)
- 人類滅亡の日 (人間原理)(Doomsday argument)
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 「Thought Experiments」 - スタンフォード哲学百科事典にある思考実験についての項目
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