国鉄DE10形ディーゼル機関車
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DE10形ディーゼル機関車(でぃーいー10がたでぃーぜるきかんしゃ)は、1966年に登場した旧・日本国有鉄道(国鉄)の中型ディーゼル機関車。 ローカル線の貨客列車牽引や、入換作業を目的に開発された。適度な大きさと汎用性から1960年代から1970年代に大量に製作され、日本各地のローカル線で蒸気機関車の置き換えを促進した。
国鉄の形式単独としては唯一、JR7社全てに継承された。2006年現在でも、若干が貨物列車牽引や入換作業、臨時列車用などに、JR各社に残存している。
なお、現在日本貨物鉄道(JR貨物)において本形式に替わる入換用新型機関車の開発が進められている。
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[編集] 概要
国鉄の支線用貨客列車牽引及び入換用機関車としては、1957年以来DD13形が製造されていた。しかし、エンジンを2基搭載する故の整備効率の悪さやコスト高、さらには軸重過大(14t。乙線と呼ばれる亜幹線クラスの軌道でなければ耐えられない)、SG(暖房用蒸気発生装置)非搭載などの問題があり、ローカル線の列車牽引に適した機関車ではなかった。
DE10形はこれに代わる機関車として、13t級の軽軸重実現を主眼に開発された1エンジン機である。このためディーゼル機関車としては世界的にもほとんど例のない、5動軸の特異なレイアウトを採った。
機関車をあまり大型化せず(丙線と呼ばれるほとんどのローカル線を走行可能な)、13tの軸重を実現しながら、重量のある列車の入換作業をもこなせる粘着力を得るには、4軸形ではなく5軸形とし、しかも全てを動軸とする必要があった。このため片側の台車は3軸式となり、しかも横圧を発生させないよう3軸それぞれが独立して左右動することによりスムーズに曲線通過できる特殊な連接構造となっている。この台車の記号表記が「C」ではなく「AAA」となる由縁はここにある。
重量はDD13形(4軸56.0t)より重い65.0tになったが、5軸であるため軸重は14tから13tに減少し、一部の簡易線規格の路線を除いたほとんどのローカル線へ入線することが可能となった。
エンジンは大型機関車DD51形用1100ps級DML61Zの機関冷却能力やピストンを強化した1250ps/1500rpmのDML61ZAとした。液体変速機はフォイト式で高低2段速度切り替えが可能な新開発のDW6形となり、本線での列車牽引(高速段:最高85km/h)と、低速での入換作業(低速段:最高45km/h)の双方で最適な性能を狙っている。
外観はDD51形をほぼ踏襲した瓜二つの凸型の車体であるが、エンジンを搭載する側が長く、運転室は中心からずれた「セミ・センターキャブ」である。長い側(1エンド)のボンネット内にはエンジン、液体変速機、消音機、ラジエーター、補機等が収められ、短い方(2エンド)のボンネット内にはSG(客車暖房用蒸気発生装置)が収められており、運転室のボンネット上面側に取り付けられた煙突も、エンジン側はエンジンの排気煙突、SG側はSGボイラの排気煙突となっている。
元々入換作業をメインとすることを前提として製作された機関車だけに、室内の運転台は枕木に平行ではなくレールに平行に(出入口の反対側に、出入口に向けて)2箇所配置されている。そのため運転士は、座ったまま首を動かすだけで、簡単に前後に運転できるようになっている。運転室外部、車体側面には入換の誘導者から運転士がどちらの運転台で運転しているか判断できるよう、運転している側のランプが光る表示灯が装備されている。
運転席は人間工学を取り入れた視認性、操作性に配慮されたものとなり、主操作系も従来の機関車とは異なり左手側にマスコンハンドル、右手側にブレーキ弁という配置(電車と同じ配置)となっている。
JR貨物には構内の入換専用にされた車両があり、当該車両は「入換動車」として各種検査時期の延伸、釣合管・ジャンパ栓の作用停止などの処置が加えられている。
[編集] 0番台
軽油燃焼のSG(客車暖房用蒸気発生装置)付で、支線での旅客列車牽引目的で158両が製造された。うち1~4号機は試作車である。12~19号機はSGを搭載していなかったが、搭載準備工事のみは施されていた。現在このグループはJRには残っていないが、国鉄清算事業団からの購入車などが一部の私鉄で残存している。トップナンバーのDE10 1は四国旅客鉄道(JR四国)多度津工場に静態保存されている。
[編集] 500番台
1968年から合計74両が製造された。貨物列車牽引目的で製造されたグループで、SGを搭載せず、その分の重量はコンクリートの死重を積んで補っている。このグループはJRには残っていないが、0番台と同様に国鉄清算事業団からの購入車が一部私鉄で残存している。
[編集] 900番台
試作形(1~4号機)に次いで1967年に1両だけ製造された。入れ替え専用として設計され、SGは非搭載、死重を積み重量を70tに増やしている。この運用結果を基にDE11形が製造され、いわばDE11形のプロトタイプ的存在である。DE10形は、SG非搭載の車両であっても運転室のSG側ボンネット上には煙突と同じ外形のカバーが付いているが、900番台に限ってはこの煙突カバー自体が無く、従来煙突脇にあった窓が拡張されている。SG側ボンネット自体の幅も一般車より狭い。一時的に無線操縦装置を取り付けて無線操縦の試験を行い、武蔵野操車場用無線操縦機関車の基礎となった。長らく吹田操車場で入れ替え作業に従事していたが廃車となり、現存しない。
[編集] 1000番台
1969年から合計210両が製造された。機関としてDML61ZAにクランク軸受け強化等の改良を施したDML61ZBを採用して、出力を1350PSに向上したSG付きグループである。1153号機以降は、3軸台車をDE50形用に開発された簡易化構造の新型台車DT140に変更している。
[編集] 1500番台
1969年から合計265両が製造された、貨物列車牽引目的で製造されたグループである。1000番台と共通仕様だが、SGを搭載せずコンクリートの死重を積んでいる。1550号機以降は、DE50形用に開発された新型の3軸台車に変更している。
[編集] DE10形の兄弟形式
DE10形から派生した機関車として、以下の形式がある。
[編集] 塗装
朱色をベースに白とグレーを組み合わせた国鉄ディーゼル機関車の標準的な塗装で運用されていたが、JR化後にはバリエーションが出現している。
九州旅客鉄道(JR九州)には、特急「有明」の豊肥本線水前寺駅乗り入れ用に、国鉄特急色(485系と同じ色)に塗り替えられたものと、783系(ハイパーサルーン)の新製時の帯色に塗り替えられたものがあり、後者については先頭部(1エンド側のみ)に「ハイパーサルーン」と記されていた。
なおJR貨物の入替動車扱いの一部の車両はえんじ色に黄色の警戒色が入った入換専用の色に塗り替えられたものもあり、札幌貨物ターミナル駅などで使用されている。
[編集] 保存車両
- DE10 1:四国旅客鉄道多度津工場
- DE10 11:埼玉県鴻巣市立吹上小学校
- DE10 30:フローティングパビリオン羊蹄丸船内(船の科学館)
- DE10 88:宮城県角田市中央公園
- DE10 95:真岡鐵道真岡駅構内
- DE10 503:小樽交通記念館
- DE10 1677:佐呂間町交通公園
- DE10 1702:三笠鉄道記念館
[編集] 主要諸元
- 全長:14150mm
- 全幅:2950mm
- 全高:3965mm
- 重量:65.0t
- 軸配置:AAA-B
- 1時間定格出力:1250PS/1500rpm(0,500番台)
- 1時間定格出力:1350PS/1550rpm(1000番台以降)
[編集] DE10形ギャラリー
DE10形1047号機 水島臨海鉄道倉敷市駅~球場前駅間にて |
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嵯峨野観光鉄道嵯峨野観光線カラーのDE10形1104号機 トロッコ嵯峨付近にて |
真岡鉄道DE10 1535号機 下館駅にて |
日本国有鉄道のディーゼル機関車 |
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