地球外知的生命体探査
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地球外知的生命体探査(ちきゅうがいちてきせいめいたいたんさ、Search for Extra-Terrestrial Intelligence)とは、地球外生命による宇宙文明の存在を検知しようというプロジェクトの総称。 SETI (セティ) と略称される。世界では多くのSETIプロジェクトが進行している。
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[編集] 概要
宇宙人の文明を地球上から探そうというプロジェクトであり、「SF」と「現実を対象にする自然科学」との接点でもある。
SETIの中で現在最も大規模に行われている方法では、電波望遠鏡で受信した電波を解析し、異星人から発せられたものがないか探すというもので、この方式のプロジェクトの幾つかでは惑星協会が重要な役割を果たしている。最近では電波のほかに、光学望遠鏡を使って地球の人類と同等以上のテクノロジーを持つ知的生命体ならば発する可能性のある大輝度レーザー光を検出する試みもなされており、専用望遠鏡も存在する。この他にも、太陽系内外探査計画の一環として、探査機にメッセージ入りのレコードやデータ入りの光ディスクを搭載する試みが成されていたり、ダイソン球発見を目指し、光学的な観測結果と赤外線望遠鏡による観測結果の比較を行う分野もある。
[編集] 動機
様々な観測や研究が続けられているが、2006年12月現在において明確な地球外文明等の発見には至っていないのが現状である。しかし「地球人類の文明は、宇宙の中でも非常に例外的な存在なのか、それとも必然的に発生した物なのか?」とする有史以前より議論されてきた哲学的命題への回答を求める欲求もあるため、今日に於いても多くの人が関心を持つ分野でもあり、その欲求の強さは、下記のSETI@home参加者の多さにも窺い知る事ができよう[1]。
現在人類は、宇宙へと進出しかけている段階だが、その進出を後押ししている動機に関しては、大航海時代における探求欲、更には他地域に住む人々との交流(または交易)への欲求と、同列の物が存在するという説もある。
今の所は全く確証が得られていない同分野ではあるが、仮に地球外の知的生命が存在する証拠を発見できたならば、それはかつて大航海時代に他民族の存在を知る事で、民族イデオロギーが集落規模から国家規模へと拡大し、国家という概念が末端にまで浸透した事を踏まえ、地球国家成立の後押し(民族紛争問題の解消を含む)に繋がると見るSF作家もいる程である。
[編集] SETIの語源
元々は「CETI」と言い、「地球外知性との交信」(communication with extra-terrestrial intelligence) とオズマ計画で対象となったくじら座タウ星のラテン語名 (τ Ceti) をかけたものであったが、後にアメリカ航空宇宙局(NASA)の学者が「SETI」とスペルを変えて使い始め、意味も「地球外生命の探査」(search for extra-terrestrial intelligence)となった。これは当面行う事は向こうからの電波を受けるだけで、交信では無いという理由によるもの。
[編集] 歴史・主な計画
1959年、科学雑誌『Nature』上にフィリップ・モリソンとジュセッペ・コッコーニが初めて地球外生命体に言及する論文を発表。その論文で「地球外に文明社会が存在すれば、我々は既にその文明と通信するだけの技術的能力を持っている」と指摘した。またその通信は電波を通して行われるだろうと推論し、当時の学界に衝撃を与え、これを契機として地球外文明の探査が始まった。
1960年、世界初の電波による地球外知的生命体探査である「オズマ計画」が行われた。この計画はアメリカの天文学者フランク・ドレイクによって提案されたもので、ウェストバージニア州のグリーンバンク国立電波天文台にて実施された。オズマ計画では生命を宿すような惑星を持つのに相応しい大きさの恒星のうち、地球から近いものとして2つの恒星を選びこれを対象とした。選ばれたのはくじら座タウ星およびエリダヌス座エプシロン星で、ともに約10.5光年離れている。ドレイクらはこれらの星に電波望遠鏡を向け、1420MHzの電波(宇宙でもっとも多く存在する水素の出す電波)で地球に向けて呼びかけの信号が送られていないかどうかを調べた。電波は30日間(実際に受信を試みたのは150時間)にわたり観測されたが、文明の痕跡とみなされる信号は得られなかった。フランク・ドレイクは銀河系内にどれだけの知的文明が存在するか見積もるドレイクの方程式を提唱したことでも知られている。なお、「オズマ」の名はライマン・フランク・ボームの『オズの魔法使い』シリーズの主要登場人物で、オズ国内で起こる全ての出来事が書き込まれるという魔法の本を所有しているオズマ姫に由来している。
1971年には1000基の電波望遠鏡を連携させることで、地球外からの電波信号探査を行うという「サイクロプス計画」(サイクロプスとはギリシャ神話に登場する一つ目の巨人である)がNASAによって計画されたが、資金の目処が立たず頓挫している。
[編集] SETI@home
プロジェクトのうち一つは、SETI@home(セティ・アットホーム)と呼ばれる。これは、プエルトリコのアレシボ天文台によって収集された宇宙から届く電波を解析し、人為的に発信されたと思われる信号を検出することによって行われる。
この情報処理は非常に膨大な計算量を必要とするため、プロジェクトと同名のSETI@homeと呼ばれる無償の解析クライアントソフトウェアを配布することで分散コンピューティングによって計算能力を確保した[1]。この試みは予想をはるかに上回る支持を得て、2006年10月末現在で約260TFLOPSという途方もない計算能力を誇っている。ちなみに、BOINC移行前の2004年1月の時点では約63TFLOPSであった。これは、ボランティアによる分散コンピューティングへの参加という試みにおいて先駆的な事例となった[2]。
SETI@homeの上げた主な成果としては、2003年2月までにうお座とおうし座の間の方角より周波数1420MHzの信号が3回受信され、現在は消えている、という観測結果を確認したことなどが挙げられる[3]。
2004年6月に分散コンピューティングのためのソフトウェアであるBOINCをプラットフォームとし、新たなプロジェクトとして開始した。これにより、初代SETI@home(SETI@home クラシック)からの移行が進められ2005年12月15日にSETI@home クラシックの運用は停止された。
[編集] 参考資料
- ^ a b "SETI@homeとは" IT用語辞典バイナリ. WEBLIO. 2006年10月10日閲覧.
- ^ "地球外生命体を探索するSETI@homeが正式に終了" ITmediaニュース: 2005-12-19. 2006年10月10日閲覧.
- ^ Eugenie Samuel Reich (2004-09-01). "Mysterious signals from light years away". New Scientist (2004-09-01). Retrieved on 2006-10-10.
[編集] 外部リンク
- Search for Extraterrestrial Intelligence Institute の略語としてSETIが使われる場合もある
- SETI@home公式サイト
- SETI@home日本語版公式サイト
- [www-grid.popcorn.sytes.net/index.php?SETI%40Home SETI@Home情報(グリッドコンピューティング情報箱)]
- 日本一大きな望遠鏡で宇宙人を探しています