多胎児
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多胎児(たたいじ)とは、同じ母親の胎内で同時期に発育して生まれた2人以上の子供を指す。いわゆる双子(ふたご、英:Twin)や三つ子(みつご、英:Triplet)などを総称した呼び方であり、特に三つ子以上を意識した呼び方となる(多胎児と表現する時は、双子を除いている場合もある)。なお、多胎は多くの哺乳類(犬や猫など)で一般的に観察される出生形態の一つである。
出産の時には数分から一時間程度の時間差で産まれる事が多いが、記録では数十時間から数十日の間隔が開いて生まれる場合もあるので 誕生日・誕生年が異なる兄弟姉妹もいる。また、日本では後から生まれた方を兄または姉、先に生まれた方を弟または妹として扱う慣習があったが、1874年(明治7年)12月13日、「三つ子以上の多胎児は先に産まれた方を兄・姉、後に産まれた方を弟・妹とする」という太政官布告が出され、以後の戸籍法上は生まれた順に記載する事となっている。
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[編集] 胎児数と表現
多胎児は胎児の数により以下のような呼び方をされる。
- 胎児二人・・・双胎(そうたい、英:Twins)
- 胎児三人・・・品胎(ひんたい、英:Triplet)
- 胎児四人・・・要胎(ようたい、英:Quadruplet)
- 胎児五人・・・周胎または格胎(しゅうたい、かくたい英:Quintuplet)
- 胎児六人・・・六胎(英:Sextuplet)
- 胎児七人・・・七胎(英:Septuplet)
- 胎児八人・・・八胎(英:Octuplet)
- 胎児九人・・・九胎(英:Nonuplet)
- 胎児十人・・・十胎(英:Decuplet)
- 胎児十一人・・・十一胎(英:Undecuplet)
- 胎児十二人・・・十二胎(英:Dodecuplet)
- 胎児十三人・・・十三胎(英:Tridecuplet)
- 胎児十四人・・・十四胎(英:Tetradecuplet)
- 胎児十五人・・・十五胎(英:Pentadecuplet)
[編集] 多胎と卵性
多胎の種別は、一卵性と多排卵性の組合せで決まる。極めて稀にではあるが、受精卵の分裂が複数回繰り返される場合があり、一卵性多胎児が誕生する場合がある。なお、一つの受精卵が一度に分裂する個数は二個でしかなく、三つ子以上の一卵性は複数回の分裂が発生していると考えられる。したがって、一卵性周胎(五つ子)の場合、受精卵のうち一つは最低でも三回、最高で四回の分裂をしていることになる。
[編集] 品胎(三つ子)の事例
一卵性三つ子、二卵性三つ子、三卵性三つ子が考えられる。二卵性三つ子は、二卵のうち一方が一卵性双生児の組合せのケースである。
- 一卵性三つ子
- 元は同じ一つの受精卵から誕生した三つ子。二度の分裂過程を経て、受精卵が三つになる。一つの受精卵がまず二卵に分裂し、さらに二卵のうちの一方が分裂することで一卵性品胎となる。
- 二卵性三つ子
- 三つ子のうち、二人は同じ受精卵が分裂した一卵性双生児だが、残る一人は別の受精卵から誕生した三つ子。この場合、まず二つの卵子が排卵され、それぞれが受精し二つの受精卵が誕生する。その後、一方の受精卵が分裂して一卵性双胎が生まれ、結果として二卵性品胎となる。
- 三卵性三つ子
- 多排卵による三つの卵子それぞれが受精し、三つの受精卵が生じたことから誕生した三つ子。
[編集] 一卵性要胎(四つ子)の事例
- 一つの受精卵が分裂(双胎の状態)
- 二つの受精卵のうち、一方が二度目の分裂(品胎の状態)
- 三つの受精卵のうち、一つが三度目の分裂・・・一卵性要胎の誕生
- 二つの受精卵がそれぞれ二度目の分裂・・・一卵性要胎の誕生
- 二つの受精卵のうち、一方が二度目の分裂(品胎の状態)
[編集] 多胎妊娠の問題
多胎妊娠の場合、母体への負担が非常に大きい。妊娠高血圧症候群をはじめとした妊娠リスクも単胎妊娠と比較して大きく、場合によっては母体に生命の危険が生ずる場合もある。特に品帯以上の多胎妊娠の場合は早産になったり帝王切開を選択することが多く、NICUを備えた病院で診察を受ける事が強く推奨されている。
また、多胎妊娠の場合、胎児の生育環境が母体子宮の物理的大きさに制約され、胎児の栄養状態・発育遅延の問題が生じる可能性が高い。母体と複数の胎児の生存可能性の問題により、一部の胎児を人工的に堕胎させる選択をせざるを得ない場合もある。これに伴う倫理上の問題やその他の詳細については減数手術を参照のこと。
ただし、多胎児の出生にリスクを伴う蓋然性は高いものの、無論のことながら順調に全員が生育する例も多い。
[編集] 多胎妊娠の記録と実例
以下、外部サイト[1]の記録に基づく。
- 最大多胎数の記録:十五胎
- 排卵誘発剤により誘発されたと考えられている。出産に至らず。
- 自然妊娠の最大多胎数の記録:十二胎
- 24歳の母親による記録。妊娠治療によらない最大多胎。出産に至らず。
- 出産に至った最大多胎数の記録:十胎
- 死産を含むか否かの記録はないが、記録に残る最大出産人数である。
- 一人以上の生存が確認されている最大多胎数の記録:八胎
- うち、一人が早逝。詳細は下記のチュークー家の八つ子を参照のこと。
- 全員がそろって誕生し生存している最大多胎の記録:七胎
- 記録史上初めて七つ子全員が生きて誕生。(参照[2])以後、七つ子の全員生存例が数例ある。詳細は下記のマッコイ家の七つ子を参照のこと。
- 一卵性の最大多胎妊娠の記録:周胎(五胎)
- 数例の一卵性五つ子が確認されている。(参照[3])
- 多胎児の最大組数
- 18世紀のロシアにおいて16組(四つ子4組、三つ子7組、双子5組)の記録がある(うち二人が早逝)。
[編集] 著名な多胎家族
- Keys quadruplets(1915年生まれ、アメリカ合衆国オクラホマ州):四つ子。初めて全員が成人した同じ性別を持った四つ子。
- チュークー家の八つ子(Chukwu octuplets,1998年12月,アメリカ合衆国テキサス州):八つ子全員が生きて誕生し、そのうち7人が順調に成長中。
- ・・・12月8日に八つ子のうち最初の子供(女)が生まれる。12月20日に残り7人(女5人男2人)が生まれる。12月20日に生まれた女の子のうち、一人が12月27日に早逝[4]。両親の母国はナイジェリア[5]。母親は排卵誘発剤を利用した医療処置(Fertility medication)を受けていた。
- ・・・4男3女の七つ子。この七つ子には1996年生まれの姉がおり、母親はいわゆる不妊状態ではなかったが、排卵誘発剤を利用した医療処置(Fertility medication)を受けていた。7胎の妊娠が確認された際、両親は減数手術を拒否。可能な限りの自然な形での出産を望み、結果として在胎31週の早産となった。早産による未熟性により、7人のうち2人に脳性麻痺が生じている。七つ子の誕生は全米で話題になり、当時のクリントン大統領も電話で祝辞を贈っている。マッコイ家は様々な公的機関や民間企業から継続的な育児支援を約束され、511 m²に及ぶ家の他、資金的・物的援助を受けている。
[編集] その他
[編集] 多胎児サークル
三つ子以上の親が情報交換する場として各地に「多胎児サークル」が存在する。地方公共団体が子育て支援事業の一環として主催、あるいは補助している公的・準公的な性格のものが多いが、NPO・NGOによるもの、完全に私的なサークルとして活動しているものなど、多様な形態がある。
[編集] トリビア
- 2007年4月7日、岩手県宮古市の岩手県立宮古商業高等学校に四つ子が入学した。
[編集] 多胎児の登場する作品
双子の登場する作品は双子の登場する作品の一覧を参照のこと。
[編集] 文学
- 桐原家の人々:三つ子
- 春・夏・秋・冬:三つ子
- 名探偵夢水清志郎事件ノートシリーズ:三つ子
[編集] キャラクター
[編集] 漫画・アニメ
- おそ松くん:六つ子
- キョロちゃん:三つ子
- クワック・パック、ダックテイルズほか(ディズニーキャラクター):三つ子
- 甲子園の空に笑え!:四つ子
- ゴーゴー五つ子ら・ん・ど:五つ子
- コヨーテ ラグタイムショー:三つ子
- 曲芸家族:三つ子
- しまじろう:三つ子
- とっとこハム太郎:十つ子
- はじめちゃんが一番!:五つ子
- 魔法使いサリー:三つ子
- 名探偵コナン:三つ子
- メイプル戦記:四つ子
- 浪漫倶楽部:三つ子
- ドラゴンボール:五つ子
- MAJOR:三つ子
- 4年1組起立!:三つ子
[編集] ゲーム
- こもれびに揺れる魂のこえ、ななついろ★ドロップス:三つ子
- ラムネ:三つ子
[編集] ドラマ
- 5つ子はティーンエイジャー:五つ子
- 獄門島
- 大好き!五つ子:五つ子
- フレンズ - 登場人物の一人、フィービーが三つ子を産む。
- 三つ子:三つ子
- ミラクル・ベイビーズ 6つ子ちゃん誕生日記:六つ子
[編集] 映画
- 赤ちゃん泥棒(1987年、アメリカ) - 子供に恵まれず、養子を取ることも出来なかった夫婦が、思いつめて五つ子のうちの一人を誘拐してしまう。
[編集] コマーシャル
[編集] 多胎児の有名人
- TRIX:3つ子
[編集] 関連項目
- 双生児(いわゆる双子)
- 単生児(一人で生まれてくる子供)